【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

　椎井莉鳥は資料を胸に抱え、廊下を速足で歩く。運動に励む声が校舎の中にいても聞こえてくる。
　階段の手前で足を止めた。聞き入る姿勢を数秒で解いて、私も、と口にして階段を駆け上がっていった。

　保健委員会としては最後のミーティングとなった。決定した内容を周知徹底の為に繰り返す。異議が出ることはなく一同は聞き入った。
「以上になります」
　読み上げた男子は一礼した。
　担当教諭の鷲尾礼美が艶然と微笑む。
「ありがとう。あとは明日の球技大会で必要となる救護の話ね。それと体育委員会の方でスポーツドリンクを用意してくれるそうよ」
「それは助かります。明日の気温は相当に高いと予報が出ていました」
　委員長席に座っていた莉鳥が言った。続けて球技大会の話に入る。
「球技大会に怪我は付き物です。軽度の擦り傷などは綺麗な水で洗い流して、できることなら患部を乾かさないようにしましょう」
「湿潤療法ですね」
　挙手した女子が言った。
「そうです。治りが早くて傷跡も残りにくい方法として主流になりつつあります」
「深い傷の場合は感染症のリスクがあるわ。疑わしい時は私に報告してね」
　礼美は眼鏡のブリッジを押し上げて言った。
　保健委員は意見を出し合う。時に礼美が補足して知識を共有した。
　最後は委員長の莉鳥が締める。
「明日の球技大会の準備は全て整いました。当日は保健委員として球技大会が円滑に進むように、各自、行動してください。以上で最後のミーティングを終わります」
　誰ともなく拍手が起こる。莉鳥は目礼で答えた。