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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
ドキドキ！ わくわく？ 悪魔の身体測定☆
ホームルーム前の予鈴が鳴った。
「はい、お疲れさま」
眼鏡越しの黒い瞳を艶やかな笑みに細める保健室の先生、鷲尾 礼美の声に、朝早くから登校して身体測定の準備や指導に勤しんでいた各学年の保健委員たちは各々の作業の手を止めた。
「ホームルームが終わったら測定場所に来てね」
みんなが来る前に各自測定は終わらせておいてね、との言葉に、猫島 寝太郎は早起きしたせいでまだ少し眠たい眼を擦りながら頷く。
「今年は無事に終わるでしょうか？」
御巫 時子が黒い睫毛を伏せる。去年、保健委員として関わった健康診断は大騒動も大騒動だった。
「……きっとね」
不安げな表情を見せる時子の背を、椎井 莉鳥が軽く叩いて励ます。去年も一昨年も、それはそれは大変だった。時子が不安になってしまうのも致し方がない。
測定時の生徒の誘導の導線を頭に描きつつ、莉鳥は小さく息を吐く。
(高校の身体測定もこれが最後？ ……よね)
寝太郎に時子、最終学年の三人はそれぞれにちょっぴり感慨深い思いを抱きつつ、それぞれの教室に戻る。
「椎井さん、お疲れさま」
「……ん」
三年二組の同じ教室に向かう廊下を歩きながら、寝太郎は莉鳥におっとりと話しかける。
「陸上部の練習と並行しての保健委員の仕事は忙しかったよねぇ」
寝太郎に気遣われ、莉鳥は小さく苦笑する。
確かにここ数日、陸上部の練習と並行して保健委員として身体測定実施のためのレクチャーを受けたり測定会場の設営をしたり、書類作成の仕事に追われたりと散々に忙しかった。
「それも今日でおしまいだから」
「そうだねぇ」
開け放った廊下の窓から流れ込んで来る春風に、ふたりは揃って顔を向ける。風に乗って賑やかな声が聞こえてくる。
「なんだか校門の辺りにみんな居るねぇ」
「ホームルームがそろそろ始まるのにね」
不思議に思いながらも、ふたりは教室へと足を急がせた。もうそろそろ本鈴が鳴ってしまう。
「そういえば」
胸囲測定用の巻き尺を幾つか置いた長机にクラスごとの測定用紙を並べつつ、寝太郎は体重計や身長計を設置した窓辺を見遣る。カーテンを引いた窓から外は見えないけれど、朝のホームルーム前にざわついていた校門の辺りでは何が起こっていたのだろう。
「……あれ何だったんだろうな～」
知らず小さく呟いたとき、猫島君、と声が掛かった。
「わ、はいっ」
振り向いた先には、予備の測定用紙を手にした鷲尾先生。
「驚かせちゃったかしら」
「いえ、大丈夫です」
近づいて来る先生からはなんだかいい匂いがする。
小さく微笑んで黒髪を耳に掛ける仕草も、床に転がったペンを腰を屈めて拾い上げる仕草も、なにもかもが色っぽくて大人っぽくて、
(素敵だなぁ……)
心の中で零す男子高校生の視線は、保健室の先生の脚線美を描く黒ストッキングの足元や張りのある胸元に向かってしまっている。
「……猫島君？」
「は、はいっ？」
長机を挟んで立った先生に正面から見つめられ、思わずどぎまぎする。
「見るのはこっちね」
つい胸や足を拝んでいたことを気付かれてしまったらしい。
覗き込むようにして視線を合わせて来る先生に、寝太郎は眠気も忘れて大きく眼を見開き、こくこくと何度も大きく頷いた。
(……これだから男子は)
鷲尾先生の注意を受けたあと、少し赤い顔でクラスからの連絡事項を伝えている同級生を横目に眺め、莉鳥は気難し気に眉を寄せる。そうしながらも、書類を確認する手は止めない。
(──高校三年生、か)
測定用紙の文字を確かめつつ、小さく思う。
高校には、結果的に四年通うことになった。
一年留年した原因は、己の衝動的な行動だった。それに伴い、当時付き合っていた幼馴染とは恋人としての関係を終わらせた。
(……終わらせて、)
腐れ縁の幼馴染としての関係を続けたけれど、
(それも結局は……)
お正月に賑わう神社の雑踏が耳に蘇る。膝をついた砂利の冷たさを思い出す。走り去る彼の、去り際の言葉が胸を刺す。
ふとした瞬間に蘇ってしまう記憶を、頭を振って追い出す。
(『男は別名保存、女は上書き保存』)
いつかなにかで知った格言を胸の浅いところに貼り付けてみる。その格言が正しいなら、──まだ新しい恋は知らぬまでも、あの男のことなんて別の記憶に消されて忘れてもいいはずなのだ。
(それなのに……！)
胸の中にもやもやとした霧がある。ともすればそれは、桜の頃に手を引いてくれた彼の手の力強さになった。抱きしめてくれた腕の強さになった。
歯を食いしばる。
不意に思い出してしまう『元カレ』のことを頭からも胸からも締め出す。とにかく今は、自分の仕事に集中しよう。
「はい、お疲れさま」
眼鏡越しの黒い瞳を艶やかな笑みに細める保健室の先生、鷲尾 礼美の声に、朝早くから登校して身体測定の準備や指導に勤しんでいた各学年の保健委員たちは各々の作業の手を止めた。
「ホームルームが終わったら測定場所に来てね」
みんなが来る前に各自測定は終わらせておいてね、との言葉に、猫島 寝太郎は早起きしたせいでまだ少し眠たい眼を擦りながら頷く。
「今年は無事に終わるでしょうか？」
御巫 時子が黒い睫毛を伏せる。去年、保健委員として関わった健康診断は大騒動も大騒動だった。
「……きっとね」
不安げな表情を見せる時子の背を、椎井 莉鳥が軽く叩いて励ます。去年も一昨年も、それはそれは大変だった。時子が不安になってしまうのも致し方がない。
測定時の生徒の誘導の導線を頭に描きつつ、莉鳥は小さく息を吐く。
(高校の身体測定もこれが最後？ ……よね)
寝太郎に時子、最終学年の三人はそれぞれにちょっぴり感慨深い思いを抱きつつ、それぞれの教室に戻る。
「椎井さん、お疲れさま」
「……ん」
三年二組の同じ教室に向かう廊下を歩きながら、寝太郎は莉鳥におっとりと話しかける。
「陸上部の練習と並行しての保健委員の仕事は忙しかったよねぇ」
寝太郎に気遣われ、莉鳥は小さく苦笑する。
確かにここ数日、陸上部の練習と並行して保健委員として身体測定実施のためのレクチャーを受けたり測定会場の設営をしたり、書類作成の仕事に追われたりと散々に忙しかった。
「それも今日でおしまいだから」
「そうだねぇ」
開け放った廊下の窓から流れ込んで来る春風に、ふたりは揃って顔を向ける。風に乗って賑やかな声が聞こえてくる。
「なんだか校門の辺りにみんな居るねぇ」
「ホームルームがそろそろ始まるのにね」
不思議に思いながらも、ふたりは教室へと足を急がせた。もうそろそろ本鈴が鳴ってしまう。
「そういえば」
胸囲測定用の巻き尺を幾つか置いた長机にクラスごとの測定用紙を並べつつ、寝太郎は体重計や身長計を設置した窓辺を見遣る。カーテンを引いた窓から外は見えないけれど、朝のホームルーム前にざわついていた校門の辺りでは何が起こっていたのだろう。
「……あれ何だったんだろうな～」
知らず小さく呟いたとき、猫島君、と声が掛かった。
「わ、はいっ」
振り向いた先には、予備の測定用紙を手にした鷲尾先生。
「驚かせちゃったかしら」
「いえ、大丈夫です」
近づいて来る先生からはなんだかいい匂いがする。
小さく微笑んで黒髪を耳に掛ける仕草も、床に転がったペンを腰を屈めて拾い上げる仕草も、なにもかもが色っぽくて大人っぽくて、
(素敵だなぁ……)
心の中で零す男子高校生の視線は、保健室の先生の脚線美を描く黒ストッキングの足元や張りのある胸元に向かってしまっている。
「……猫島君？」
「は、はいっ？」
長机を挟んで立った先生に正面から見つめられ、思わずどぎまぎする。
「見るのはこっちね」
つい胸や足を拝んでいたことを気付かれてしまったらしい。
覗き込むようにして視線を合わせて来る先生に、寝太郎は眠気も忘れて大きく眼を見開き、こくこくと何度も大きく頷いた。
(……これだから男子は)
鷲尾先生の注意を受けたあと、少し赤い顔でクラスからの連絡事項を伝えている同級生を横目に眺め、莉鳥は気難し気に眉を寄せる。そうしながらも、書類を確認する手は止めない。
(──高校三年生、か)
測定用紙の文字を確かめつつ、小さく思う。
高校には、結果的に四年通うことになった。
一年留年した原因は、己の衝動的な行動だった。それに伴い、当時付き合っていた幼馴染とは恋人としての関係を終わらせた。
(……終わらせて、)
腐れ縁の幼馴染としての関係を続けたけれど、
(それも結局は……)
お正月に賑わう神社の雑踏が耳に蘇る。膝をついた砂利の冷たさを思い出す。走り去る彼の、去り際の言葉が胸を刺す。
ふとした瞬間に蘇ってしまう記憶を、頭を振って追い出す。
(『男は別名保存、女は上書き保存』)
いつかなにかで知った格言を胸の浅いところに貼り付けてみる。その格言が正しいなら、──まだ新しい恋は知らぬまでも、あの男のことなんて別の記憶に消されて忘れてもいいはずなのだ。
(それなのに……！)
胸の中にもやもやとした霧がある。ともすればそれは、桜の頃に手を引いてくれた彼の手の力強さになった。抱きしめてくれた腕の強さになった。
歯を食いしばる。
不意に思い出してしまう『元カレ』のことを頭からも胸からも締め出す。とにかく今は、自分の仕事に集中しよう。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年04月17日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年04月24日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年04月24日 11時00分
