【星幽塔】第一階層　冒険は自給自足で｜リアクション

【星幽塔】第一階層　冒険は自給自足で

　いっぽう、グリフォンに相対するのはルイセ。

「なかなかやりますね･･････」

　ティオレの回復まで、たった一人で、巨大な猛禽を相手にすることになったルイセ。
　華奢な森妖精の少女。誰が見ても荷の勝ちすぎるこの戦いに、むしろ彼女は意気揚々と臨んでいた。
　取り出したのは森人の弓。複雑な意匠が美術品のようなこの武器は、じつは森に棲まいし、狩りを生業としてきた種族の知恵の結晶である。
　一撃で巨大な魔物を屠れるように、よく撓る特殊な祝福を受けた胴に、動物の腱を弦にして張った、それ自体でバリスタにも匹敵するような強力な代物だ。
　最高の破壊力を引き出すために、射手には相応の技倆が必要とされる。
　空中で此方を睨みながら揺揚するグリフォンに向けて、ルイセは祝福された銀の矢をつがえる。
　並の力の持ち主なら、引き絞る事もできない弓を、ルイセは何の苦もなく大きくつがえる。

　――はっ！

　気合いと共に打ち出した銀の矢は、流星のような軌跡を描き、まっすぐにグリフォンの頭部を射止める。
　ギャアアアアア！
　すさまじい絶叫が、あたりを震わせる。
　
　ハーピーや人魚のような、人型の化け物は食べたくないと考えていたルイセ、グリフォンなら及第点だ。
　とっとと倒して、食事にありつきたい。

　とはいえ、やはり直接武器を振るうのには向かないルイセ。
　できれば直接戦力を持つ仲間に、とどめをさしてほしい･･････。

「うおーりゃああああ！」
「おまたせー･･････って重い！」

　その時やってきたのは、スライム狩りに興じていたアシュリーと真白。
　バケツ一杯のスライムを野営地に運んでいたのだが、その途中乱戦の気配を聞きつけ、はせ参じた。
　
　再度右手に戦士の力を宿したアシュリー、クリティカルな銀の矢で地面に落下したグリフォンに殴打を加える。
　鉤爪と翼撃を加えてくるグリフォンだが、戦い慣れしたアシュリー、動体視力と俊敏な動きで躱していく。
　研ぎ澄まされた勘、持って生まれた戦闘本能。
　蹴撃で頭部を跳ね飛ばし、拳をグリフォンの胸部にたたきつける。
　絶叫するモンスター、いきり立って翼を羽ばたかせ、アシュリーに突撃しようとする。
　その瞬間。
　――いざ、尋常に。
　十分な体力の回復を待ったティオレ、跳躍と共に剣を振りかざしグリフォンの頭部を狙う。
　過たず剣はグリフォンを捉えた。
　盛大な血の噴水を上げて、巨大な禽獣は倒れた。
「他のみんなは、キャンプの準備を終えて、下に向かったみたい。･･････ドラゴンが目当てかな」
　だれかが呟いた。思ったより魔物の数が多い。ドラゴンにもひけを取らない面子であるとは思うが、それでも油断はならない。加勢に向かうべきだろう。
「ああ、急ごうか――でも、その前に」
　一同は血まみれになった体を見まわす。
「血ぐらいは、流す時間があるだろう」
　強大なモンスターを撃退した女子グループ、気になるのは汚れなのだ。