甘い束縛、溺れる二人｜リアクション

甘い束縛、溺れる二人

　二人だけの生活が続く。料理は全て地下室で行われた。
「今日は特別なんだぜ」
　赤いネグリジェを着た酒浸朱蘭が大皿に盛り付けた物をベッドに運ぶ。縁に座っていた花風冴来は受け取ると、じっと見つめる。
　朱蘭は隣で胡坐を掻いた。そわそわした様子で相手の横顔を窺う。
「……普通のカレーライスに見えるんだけど」
「全然、違うって。レトルトや冷食に飽きないように工夫した、あたし史上、最高傑作のカレーピラフなんだぜ。野菜不足になるといけないからマッシュポテトも付けたぜ」
「まあ、組み合わせで料理の種類が増えるのはわかるんだけど。それなら上にあるオープンキッチンで作った方が良いよね」
　顔を隣に向けた。
「な、なんだよ」
　突然の視線を受けて声が上ずる。落ち着きのない目はベッドに転がっていたひょうたんを見つけた。引っ掴んで栓を抜くと口を付けて一気に呷る。
「そんなことして、大丈夫？」
「酔えないと言えないじゃないか！　あたしは、ほんの少しの時間であっても、冴来と離れたくないんだぜ……」
　項垂れて丸く小さくなる朱蘭を見て、冴来は震えた。膝の上の大皿をベッドの端に押しやると丸い背中に覆い被さる。
「え、冴来！？」
「メインディッシュより、先にデザートが食べたくなっちゃった」
　朱蘭の動きに合わせて離れ、二人はほんのりと赤らんだ頬で向かい合う。
「ねえ、朱蘭はどうなの？」
「あたしは」
　青い瞳が僅かに濡れる。見ている瞳も艶やかに光り、吸い寄せられるように顔を近づけていく。
「あたしも、デザートを食べたいし……食べられたいんだぜ……」
　二人の唇が交わり、どちらともなくベッドに倒れ込む。互いの手は温かくて柔らかいところを探した。
　切ない声が漏れる。むせび泣くような声には悦びも含まれていた。