甘い束縛、溺れる二人｜リアクション

甘い束縛、溺れる二人

　共に時を過ごした。悲しみの涙は一切なく、恋人と一緒にいる時のような仲睦まじい時間を共有した。
　そして春休みは明日が最終日。その前日の夜を迎えた。
　二人は暗い中、背中を向けた状態でベッドに横になっていた。
　花風冴来は閉じていた瞼を開ける。懺悔室にいるように厳かな顔付きとなった。
「私は幸せになってはいけない」
　強い口調で言ったあと、耳を澄ますような間を空ける。何かを期待した自身を嘲笑うように唇を歪めた。
「……生きているだけで、近くにいる人を不幸に巻き込んでしまう。そんな呪縛に心をがんじがらめにされて、とても恐ろしくて。
　そのくせ、自分から幸せを求めて近づいて、また怖くなって身勝手に突き放す。こんなのって、おかしいよね。自分のことなのに笑っちゃうよ」
　物悲しい告白が止まった。酒浸朱蘭が冴来の背中に寄り添う。
「笑わないぜ」
　声が震えていた。
「私なんかの為に、泣いてくれるの？」
「……あたしだけは、絶対に笑わないぜ」
　冴来は寝返りを打った。朱蘭は目に涙を溜めていた。強く結んだ唇が微かに震えている。
「暗くても見えるわ。朱蘭の涙が私の汚れた心を綺麗にしてくれる。そんな気がする」
「あたしは……冴来が大好きで、どこにも行って欲しくないし……離れたくないんだ……」
　堪えきれない涙が頬を濡らす。冴来は朱蘭の腰に手を回した。
「もう二度と自分から離れたりしないわ。約束する」
「絶対なんだぜ」
　永遠を誓うように二人は唇を合わせた。

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