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頂いたハーブティーは丁寧にポケットに仕舞い、焼き鳥を口に運ぶ。
「お兄さん、本当に急だったわね」
お客あしらいが一息ついたところを見計らって、女将が前に立った。カウンター越しに芋焼酎のお代わりをくれる。
「もう五年さね」
小さく応えて、思う。
(……あの騒動からはまる三年)
カウンターの向こうで、女将が自分の湯飲みに満月と同じ芋焼酎のお湯割りを注いで口に含んだ。
「あの人達はまだ来るの? 何なら見た目だけは押し出しが効くうちの息子を使ってやってね」
界隈では知られている『あの騒動』に言及され、満月は小さく笑った。
「ああ、アイツらにはもう親権をどうこう言われる筋合いはないさね」
あの子は、と瞳に強い光を滲ませる。
「『うちの子』さ、それは紛れもなく」
それだけは間違いない。
「……でもさ、あたしゃ考える事があるんさ」
『あの騒動』がなかったら。
両親がいなくならなかったら。
今頃は自分は何をしていただろう。
「今日ぐらい吐き出しちゃいなさいな」
背中を優しく撫でるような女将の言葉に、満月は唇を噛んだ。ぽつり、零す。
「有名な賞を貰った知らせと、かぁちゃんが心臓いわしたのが一緒だったし、」
高校では書道を専攻していた。卒業してからも筆を握るのが好きだった。墨で、文字で世界を表現するのが好きだった。書くことが楽しくて仕方がなかった。一生を捧げるに値する仕事だと思っていた。
「若手書家の合同展開催ととぉちゃんが脳卒中でぶっ倒れたのも一緒だった……」
けれど、『あの騒動』があった。兄に続き、父母さえも相次いで倒れた。
「あん時付いてくれた弁護士先生にはお世話になったけど、」
酒を煽る。肚の内に溜め込み続けた毒を酒気交じりの息にして吐き出す。
「あん時吐くほど書を憎んだけど、あん時書から離れるために手芸を始めたけど……」
けど、ばかりが口をつく。それが嫌でたまらなくなって満月は卓に突っ伏した。
「気が付くと、筆を握っちまうんさ」
冷たい木の卓に額を押し付ければ、溜め込んだ毒で蓋をしていた涙がぼたぼたと溢れて落ちた。
「どうしても、書いちまうんさ……」
酒の力を借りなくては泣くことも出来なかった満月の酒器に、女将が何も言わず酒を足す。ただひたすらに耳を傾け相槌を打つ。
不意に顔を上げた満月は、湯飲みに満たされた温いお湯割りを一息に飲み干した。嘘のようにカラカラと声を上げて笑う。
「いや、あたしとしたことがちっと呑まれちまったさね! たいっつぁん、あたしが七輪見ててやっから、ちゃんとお客さんの相手するさね!」
「ッス、満月姐さん!」
満月と入れ替わりに外の店員が戻って来たかと思えば、
「こんばんはぁ」
のんびりした声と共、金髪の青年が顔を覗かせた。
「あら先生、いらっしゃい」
「瓶ビールと焼き鳥──あれぇ、稲積?」
人込みについ探してしまうひとに声を掛けられ、柚春は藍の瞳を瞬かせる。まさかこんなところで出会えるなんて。
(嬉しいけど)
咄嗟にコンバンハと口にはしたけれど、ぎこちなく聞こえてしまったりはしていないだろうか。
「晩御飯?」
海色の瞳を猫のように細め、
ウォルター・B
は隣の席についた。女将が持ってきたお通しと瓶ビールにおっとりと頬を緩める。
(こういう店に来るときって、どんな気分の時なんだろう)
一人で呑みたい気分だろうか。それとも賑やかな雰囲気に混ざりたい気分だろうか。酒を知らない柚春にはよく分からない。
両親が呑むときはひたすらに明るいお酒だったように思う。
アロマに詳しい娘の特技を面白がって、日本酒の色や香りで利き酒をさせてはすごいすごいと拍手をしたり楽し気に笑ったりしていたことを思い出しだした。さっぱり系の部位の塩焼き鳥にフルーティな香の吟醸酒が合うんじゃないかなと言ったら、先生はびっくりするだろうか。
(塩レモンって相性いいし……)
手酌しようとしている先生に声を掛ける。
「お邪魔じゃなければお酌させてください」
「お邪魔じゃないけど、お酌はだめだよ」
軽やかに笑って、先生は柚春が瓶へ伸ばした手を掌で止めた。端正な西洋顔が微笑むさまにこっそりと見惚れながら、柚春は首を傾げる。
ドキドキと胸が鳴っている。このドキドキがどういう種類のものなのか、柚春にはまだよく分かっていない。
(先生に対して緊張しているとか)
顔を合わせればドキドキするのは、夢の中で会う黒髪の少年と同じで、でもやっぱりこれは、別の種類のドキドキだ。
夢に会う少年にもドキドキしたけれど、熱い思いがあると信じていたけれど、今隣に居る青年に感じるものとは違う。
少年には手が届かなくても構わなかった。あの格好いいひとが動いて喋っているのを見つめているだけで、嬉しかった。それは例えば、アイドルを応援するような感覚に近いのかもしれない。
(けれど、──)
お酒を一滴も口にしていないのに、頭も心もふわふわする。
「どうしてですか」
「そんな顔してもだめなものはだめだよ」
「理由を教えてください」
場酔いしてしまったからだろうか、のらりくらりとかわそうとする先生を少し頑固なくらいに問い詰めてしまうのは。
先生は困ったような笑顔で瓶ビールについた水滴を指につけた。卓の上、柚春と自分との間に一線を引く。
「稲積が未成年の生徒で、僕が先生だから、かなぁ」
水で描かれた黒い溝を柚春は見つめる。
胸がぎゅっとする。その不思議な感情の名前が分からないまま、それはきっと特別で失いがたいものなのだろうと柚春は信じた。
「じゃあ、卒業して、生徒じゃなくなったら?」
「そうだねぇ、稲積が大人になったら一緒に呑むのもいいねぇ」
「そのときはお酌させてくださいね」
「はぁい」
くすくすと笑いながらビールを飲む先生の横顔を、上下する喉仏を見つめ、柚春はふわふわしたままの胸を抑える。
──なんだか、少しだけ大人になった気がした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年03月23日
参加申し込みの期限
2021年03月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年03月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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