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春の行き先
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朝焼けの空を桜が渡って行く。
乗っていた風から転がり落ちて来たひとひらをてのひらに受け止め、
宇佐見 満月
は瞳を和らげた。
「……そんじゃ、今晩にでも」
「はい、いつでもお待ちしています」
新聞を抱えておどけて見せる、鬼籍の母より年上の婦人に深く一礼し、満月はほんの少し元気を得た足取りで再び帰路に着く。
てのひらに包んだときは風と同じにひんやりとしていた桜の花びらは、気づけば体温と同じ温もりを帯びていた。
てのひらを開く。ただひとひらであっても美しい色を湛える花の欠片に息を吹きかけ、空へと放つ。ふわりと舞い上がり、風を纏って青空高く飛んで行く花びらを眩しく見送るそのまなざしに、ふと悲しい色が揺らいだ。
(……おっと)
花の軌跡を辿るように空へ伸ばしかけた指先を拳に握りこむ。ついでにその拳で自分の頬を軽く殴る。
胸に湧きだしかけた己の望みを己の拳ひとつで吹き飛ばし、いつも通りの強い瞳に見据えるのは、亡き両親から受け継いだ自宅兼店舗。
「ぃよし!」
今度は両手で両頬をはたいて気合を入れ直す。うっかり力が籠って引き攣ってしまっているかもしれない頬をぎゅっと引っ張り、無理矢理にでも笑ってみせる。
(うさぎ屋の満月ちゃんは笑顔が身上さね!)
煙草も携帯灰皿も一緒くたに突っ込んだジーンズのポケットから鍵を取り出し、戸を開ける。
「おっはよー、朝さね! 休みだからっていつまでも寝てんじゃないよ!」
自室で寝こけているだろう弟と姪に玄関口から元気いっぱいの声を浴びせ、台所に向かう。いつも通りに手早くご飯と味噌汁にハムエッグの朝食を作って居間の卓袱台に茶碗と箸を並べたところで、
「おはようございます」
寝ぼけ眼を擦りながら
大田原 いいな
が顔を覗かせた。
「おはよ! 顔洗って来な」
「んむ」
便宜上『姪』と呼んではいるが、書類上の関係で言えば、満月にとっていいなは『養子』にあたる。
(花枝さんもきっと知ってるだろうねぇ)
満月の兄──いいなの実父が急逝して後、いいなが母と継父から虐待を受けていたこと。それから逃れるためにいいなが島に来たこと。いいなの身を護るため、満月の両親がいいなの実母から親権をもぎ取ろうと奔走した挙句に無理が祟って倒れ、相次いでこの世を去ってしまったこと。そうして満月が急遽店を継いだこと。
(大騒動だったからねぇ……)
実母と継父が島に押しかけて来て店の前で大騒ぎしたこともあった。警察にも弁護士にも世話になった。もちろん、商店街のみんなにも。
(……あたしも若かったさぁね)
いいなの耳を塞いでいいなの実母と継父に切った啖呵とおまけの罵声を思い出し、満月は頬を引っ掻いた。
「伯母上」
「ん」
炊飯器から三人分のごはんをよそっている間に、洗面所からいいなが戻り、椀に味噌汁を注ぐのを手伝ってくれる。
「今日は店閉めたら花枝さんのところへ飲みに行ってくるさね」
「うん」
「ふたりで留守番出来るかい?」
小さな子どもに言うようについ口にしてから、思わずちらりと笑う。十七の子に対する言葉ではなかったかもしれない。
「もちろんじゃ、今日は叔父貴の受験勉強道具の片付けの見張りをするのじゃ。叔父貴ひとりではいつまでも終わらぬでな」
「そりゃ大変さね」
任せられよ、と軽口まじりで胸を張ってみせるいいなと笑いあい、食卓に着く頃には廊下から弟の賑やかな足音が聞こえてくる。
家の掃除と洗濯を済ませれば、次は『うさぎ屋』の厨房に立つ。掃除や仕込みをしているうちに開店時間、暖簾を掛ければやってくるお客の相手に出前にと大忙し。
いつも通りに大わらわで仕事に追われ、一息吐く頃には日が暮れている。今日もよく働いたと暖簾を降ろし、一日かけてもまだ掃除を終わらせていない姪と弟に発破を掛けつつ晩御飯の準備をして、そうしてようやく、満月は『ハナ』へと向かった。
どこからか春の花の香が漂う宵の路地を歩く。
人気のない街燈の下で足を止めて煙草に火を点ける。春霞の空に浮かぶ月をしばらく紫煙で彩って後、また歩を進めれば、路地の奥にぼんやりと光を浮かばせる電光看板が見えた。
「こんばんはぁ」
店先の換気扇から吐き出される炭と焼き鳥の匂いに頬を緩めながら縄暖簾をくぐる。
「はい、いらっしゃい!」
「待ってましたよ」
焼き台の前に立っていた熊じみた雰囲気の大柄な店員と、カウンター席の用意をしていた割烹着姿の女将に笑いかけられ、満月は笑みを返した。
「一番乗りさね」
「今日は気が済むまで飲んでいってね」
カウンターのいちばん奥の席に通され、まず供されたのは突き出しの浅利と分葱の辛子味噌合え。
「芋焼酎と胸の塩もらえないかねぇ?」
「焼酎はどうしましょ?」
「温いお湯割りで」
「はーい、花蜜の香のするいいのがありますよ」
楽し気に焼酎の準備をする花枝の背を眺め、カウンター前の冷蔵ケースから串に刺した鳥ムネを出す店員、花枝の息子の太一に目をやる。
「一本サービスしときます」
「いいのかい?」
「一番乗りですから」
ちらりと笑うごつい髭面に、ヒョロヒョロだった学生時分の面影はあんまり残っていない。
(でかくなって、まぁ)
三つ年上の太一とは、商店街の幼馴染だ。姿かたちは随分変わったものの、無口で大人しいのは幼い頃と同じ。
「弟さんたちは賢くお留守番かしら」
甘い湯気の立つ茶碗をコトリと置き、女将が笑う。
「あの子達? なんだか愚弟が受験勉強の参考書片っ端から捨てる……から始まっての姪っ子巻き込んで大掃除大会さぁ」
全く、と満月は茶碗を満たす焼酎を手に取る。確かに、甘い花の香がした。
「加減ってモノを知らないもんだよ、姪御も愚弟も」
「賑やかなのね」
「賑やかって言うか大騒ぎって言うか」
舌に触れれば口いっぱいに蜜と酒精の香を広げる芋焼酎に思わず目元が緩む。
「うさぎ屋さんはどう?」
息子が焼き上げた串を差し出す花枝に穏やかに問われ、満月はもう一口焼酎を口に含んだ。
「ウチは花枝さん所と違って呑みが主役じゃないから、学生さん相手に細々やらせて貰ってるさぁね」
「お昼に配達も始めたって」
「お得意さんで足だの腰だの悪くしたって話が相次いだからねぇ……」
古い商店街には年寄りも多い。あちこち痛めて外に出るのも大変だという話を聞いてしまえば、せめてあったかい食べ物を届けてやりたくなるというもの。
「ご近所のお爺ちゃん方がね、ほんと助かってるって」
「満月さんの顔見ると元気が出るそうです」
花枝と太一の言葉に、満月の目元が薄紅に染まる。くすぐったくむずむずしてしまう口元を誤魔化し、満月は焼き立ての胸塩串にガブリと食らいついた。
「まぁ、そこで稼がせてもらってるのもあるけどさぁ」
満月を昔から知るふたりは、満月らしい照れ隠しに顔を見合わせて笑う。
「そうだ、弟さんの大学合格おめでとうございます」
「あんなに小さかった男の子がもう大学生なのねぇ」
太一と花枝の言葉に、満月の顔が今度こそ満面綻んだ。
「あぁ、ありがとうねぇ!」
焼酎をぐいと呑めば、商店街のご近所さんたちをまとめて元気にする満月の笑顔が弾ける。
「……いやぁ、やっとこすっとこ入ったよ、マタ大二次で」
「何学部ですか」
「介護士になる学部なんだってさ」
「立派ねぇ」
「よく入れたもんだよ全く」
太一と花枝に交互に応え、満月は腕を組んで考える。
「姪っ子のサポートが無けりゃ無理だったと思うね」
あの愚弟、と満月は眉をしかめる。
「詰め込んだ端から忘れていくし、大変だったらしいさね」
弟との勉強会が終わる度、疲労困憊の態で居間でひっくり返っていたいいなの顔を思い出せば、思わずため息と苦笑いが零れた。
「死んだ兄貴にぜーんぶ取られちまったんじゃぁないかねぇ、頭の中身」
茶碗を煽ろうとして、いつの間にか空っぽになっていることに気が付いた。最後の滴まで喉に流し込み、満月はカラリと笑う。
「花枝さん、お代わり!」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年03月23日
参加申し込みの期限
2021年03月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年03月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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