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医局の自分の机から見える窓の外は、うららかな午後の日差しに溢れている。
眩い春陽の中、中庭の桜の花びらがひらりと舞った。
視界の端を過る春の色に、遅いお昼ごはんのコンビニおにぎりのフィルムを剥がしていた手がふと止まる。優しい翠の色した瞳を巡らせ、
深倉 理紗子
はもうほとんど葉桜と化した樹を眺めやる。
(今年も)
始まったかと思えば、もう四月。
(あっと言う間ね)
年末年始に親友とハワイにバカンスへ出かけたのが夢のよう。
帰国した途端に有無を言わさず多忙な病院勤務医の日常に投げ戻され、ふたりで過ごした楽しい一週間は振り返る間もなく遠くなってしまった。
年末年始に休暇を過ごした親友と次に会ったのは、三か月後の花見。年明けからソリストとして活動している親友も、やはり多忙を極めていた。その多忙の中に桜に賑わう海浜公園の野外ステージも含まれていて、理沙子が招待されたのはその客席だった。
(久しぶりに彼女の演奏を聴いた)
誰もの魂を惹きつけてしまうような演奏に聴衆として耳を傾けて、心を震わせて、それでその日はおしまいのはずだった。
(あの時は驚いたな……)
けれど、遠いステージに立っていた彼女に名指しで呼ばれた。隣に立って、フルートを手渡された。
演奏したのは、ふたりが出会った中学校時代に彼女が創ってくれたオリジナル曲『Je t'adore.』──フランス語で『大好き』を意味する一曲。
舞台に立ったときに浴びた聴衆の視線を思い出せば、今もどきどきと胸が鳴る気がした。慌てふためいて狼狽して、きっと顔も真っ赤になっていただろう自分の姿を思えば今になっても喉がカラカラに乾いてしまう。
机に置いたペットボトルの緑茶を口に含んで、小さく息を吐く。あのときのことを思えばまだうっかり緊張してしまいはするけれど、
──中学校時代からつづく一番の親友
そう言ってくれた彼女の笑顔を、隣で手を引いてくれるように心強く響いた彼女のヴァイオリンを思い出せば、胸の苦しさは嘘のように霧散する。
「深倉先生」
看護師に声を掛けられ、理紗子は夢から覚めるように瞬く。用意したおにぎりふたつのうちのひとつを残し、お茶を一口二口喉に通しただけで席を立つ。
「はい、今行きます」
いつも通りに忙しい外来診療を終え、ミーティングや書類仕事を終える。タイムカードを切ったのは、午後九時過ぎだった。定時でないのはいつも通り、それでも珍しく早めに職場を去ることが叶って、理紗子は春コートの裾を夜風に揺らしながら職場である寝子島総合病院から歩いて帰路に着く。
街燈に照らし出された道を少し歩いて猫又川に架かる橋を渡ってしまえば、起居しているワンルームマンションへはすぐに帰れる。
けれど、
(明日は休みだし……)
まっすぐ帰る気にはなれず、橋の半ばで足を止める。川向こうに見える寝子電スタジアムの灯りを眺めながら、冷たい風になびく黒髪を片手に抑えながら、さてどうしたものかと思案する。
(シーサイドタウンへ出る?)
それとも旧市街に足を向ける?
旧市街の商店街にでも向かえば、まだ空いている居酒屋は簡単に見つけられる。適当にお酒でも飲みながら食事をするのも悪くない。
(そういえば)
考える頭をふと過ったのは、旧市街の路地の奥にひっそりとある古い居酒屋。
(最近、というか今年、顔を出したっけ?)
人懐っこい母子が営む焼き鳥屋を訪れた記憶は、随分と前で途切れている。
(多分、ないよね)
思い出してしまえば、向かう場所は決まったようなもの。
橋の上で止まっていた足を旧市街へと向ける。かなり遅い時間になってしまったけれど、久しぶりに『ハナ』へ行ってみよう。
(一杯飲みながら焼き鳥にしよう)
知らずちょっぴり弾む足取りの理紗子の鼻に、ふわり、ほんの微かにレモンのアロマが届いた。小さく瞬く理紗子の視界に映ったのは、並んで歩く金髪の青年と蒼褐色の髪の女の子。
「送ってもらわなくても大丈夫なのに」
「うっかり話こんじゃったのは僕の責任だからねぇ」
「……先生だからですか?」
「先生だからだよ」
親しいながらも一線を引いた雰囲気のふたりとすれ違う。
春の空気に滲む月を仰ぎ、最後のひとひらを風に放つ桜の下を歩く。冷たい夜風の中に僅かに混ざる生温いような花の香に頬を撫でられたかと思えば、次には焼き鳥の香ばしい匂いがぶわりと覆いかぶさって来た。
春の夜の情緒を吹き飛ばす居酒屋の匂いに思わず笑う。
「今晩は、深倉さん」
夜を煌々と照らす電光看板の傍に置いていた七輪を片付けていた熊じみた店員が髭面で笑った。
「ちょうど最後の一枚が焼けました」
どうですか、と小皿に乗せたアジの干物を差し出され、思わず受け取る。
「さいご?」
「うん、最後です」
七輪の前でずっと魚が焼けるのを観察していたらしい小さな女の子が首を傾げ、店員が大きく頷く。
「だからもうお家に帰って寝なくちゃいけません」
「はーい」
眠たそうに瞼を擦り、女の子は立ち上がった。隣に立って付き合っていたらしい黒髪の女性にぎゅっと抱き着く。
「すみません、ありがとうございました」
「いえ、遅くさせてしまってこちらこそ申し訳ありません」
丁寧に頭を下げる女性に大きな身体を丸めるようにして詫び、店員は店に引っ込んだ。
女の子の手を引いて帰路につく女性の会釈を受け、理紗子も淡く微笑んで返す。
「外はまだ冷えるでしょう、深倉さん。ほら、入って入って」
店員と入れ替わりに戸口に立った女将に招かれ、理紗子は縄暖簾をくぐった。干物の皿を片手にカウンター席に着き、久しぶりに訪れたハナを見回す。
煤けた壁に貼られた手書きの品書き、カウンターの隅に飾られたどこかのお土産らしい木彫りの熊や陶器の人形に三角ペナント。カウンター奥の棚にずらりと並ぶ酒瓶に銚子に猪口。焼き台の前にぬうと立つ大柄な店員も、ちょこんと立つ笑顔の女将も、以前と全く変わりがない。
(いや、まあ、……)
変わり過ぎたらそれはそれで何事って話よね、と頬を緩める。
カウンター席の奥で呑み過ぎたか焼酎の湯呑を前にうつらうつらする女性の他に、今日は客はない。
「お久しぶりです」
お通しの浅利と分葱の辛子味噌の小鉢を置いて笑う女将に、理紗子は笑みを返す。
「多分今年は初めて……かもしれませんね」
「お仕事、忙しい?」
「そうですね、……いつも通り、でしょうか」
注文するのは焼き鳥の盛り合わせと冷奴、それからぬるめの熱燗。
先に供されたぬるめの熱燗を手酌でお猪口に注ぎ、口をつける。
(お酒も久しぶりね)
少なくともひと月ほどは口にした記憶がない。
ふわり、鼻先に触れる酒の香と舌を甘く痺れさせる酒精を楽しみながら、店先で貰った干物をつついてちびちびと啜っている間に、鰹節に葱に茗荷の薬味がこれでもかと盛られた冷奴が出てきた。
「ここ半年ほどで色々あって」
ぽつりと零すと、どこか心得た仕草で女将はカウンターを挟んで前に立った。いくらでも聞きましょうと構える女将に小さく笑みを返し、お猪口の酒で唇を湿らせる。
「主に中学校時代からの親友のことなんですが──」
店員が供する焼き鳥を受け取り、小さく齧る。口にした途端に広がる炭火の香ばしさと歯ごたえ、追って来るのは肉汁の甘味と甘辛いタレの味。
変わらぬ美味しさを、これも変わらぬ熱燗の旨さで流して、理紗子は話す。
親友のひととなりに始まり、中学校時代の出会い、そこから飛んでここ半年間の寝子島での親友とのあれこれ。
「ちょっと関係がぎくしゃくしたりしたことも、あって……」
あの頃のことを思えば、今でも胸が締め付けられる。そんなに呑んでいないはずの酒に後押しされてか滲んでしまいもする涙を瞬きで追い出し、理紗子は明るく笑う。
「でも今はもう、大丈夫です」
年末年始にふたりでハワイに行ったことも、お花見に賑わう海浜公園で聞いた親友の素晴らしい演奏のことも、そのあとのサプライズな出来事も話す。
理紗子の話すそのすべてに、女将は驚いたり笑ったり、心配したり。
気づけば二合徳利が三本空いていた。
もう一本頼もうか迷う。焼き鳥もお酒も美味しいし、気分はふわりと悪くない。明日は休みともなれば、多少は羽目を外して多めに飲んだっていい気もするけれど、
(急患)
その文字が頭を掠める。続いて『受け持ち患者の容体急変』という文字も。
空っぽになった焼き鳥の皿を眺め、冷奴の皿の端っこに残っていた薬味をつまみに猪口の底に残っていた最後の一口を口に含む。
お腹は程よく満たされた。本当はもう少し呑みたい気持ちをぐっと堪え、ごちそうさまと手を合わせる。
「はい、ありがとうございます」
朗らかに笑う女将が空になった皿を下げ、代わりに熱いほうじ茶の湯呑を置いてくれた。それにしても、と少し悪戯っぽく口にする。
「深倉さんはその親友さんが大好きなのね」
「……そう、ですね」
お酒とご飯で指先まであったかくなった両手で湯呑を包み込み、理紗子は瞳を伏せる。自分の気持ちを確かめるように深く頷く。
「ええ、大好きです」
素直に口にしてみれば、それが大正解に思えた。
静かに笑んでほうじ茶を啜る理紗子の笑顔を見つめてから、女将はそうだわと両手を打つ。
「今度、そのひとを連れて来てくださいな」
言って、女将はそれがいいわとぱちぱちと拍手をした。
「ね。だってどう聞いていても素敵なひとですもの」
女将の言葉に理紗子は照れる。思い返してみれば、そんなに酔わないはずのお酒の勢いも借りて親友についてあれこれと話してしまった。主に彼女がどんなに素敵でどんなに凄いひとなのかを語ってしまった。
酒のせいではなく真っ赤になりながら、肩をすくめながら、理紗子はそれでもこくりと頷く。
「そうします」
それがいい、と思う。
いつかふたりでここに来よう。並んでお酒を呑んで、色んなことをふたりで話そう。それはきっと、とても楽しいに違いない。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年03月23日
参加申し込みの期限
2021年03月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年03月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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