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四歳になる娘の手は、十八歳の
梓 智依子
のてのひらに収まってしまうくらいに小さい。
強く握れば潰してしまいそうな細い指を大事にそっと包み込み、幼い娘と足取りを合わせて宵の路地を歩く。
「ママ」
「なあに、楓?」
「おなかすいたの」
「そうね」
見上げてくる娘の瞳の愛らしさに思わず微笑み、腰を曲げて抱き上げる。生まれたばかりの頃のどうしようもなく脆くて頼りない赤子は、高校に行かず三年間を懸命に育てるうちに幼子のふわりとした柔らかさと確かさを持つようになった。
それでもまだまだ小さくて、目を離したくない気持ちは重々ある。
(傍にいたい)
出来ることなら、こうしてずっと抱きしめていたい。
子どもらしい細い髪の頭を撫でる。容易くてのひらに納まる丸く柔らかで滑らかな頬に触れる。くすぐったそうに笑っててのひらに頬を押し付けてくる無邪気さに心の真ん中がふわりと暖かくなる。
お腹の中に宿ったと知ったときからずっと、逢いたかった。
十四歳での妊娠による先々の大変さよりも恐怖よりも、愛する人の子を宿した喜びの方が大きかった。この恋のためなら死んでもいいとさえ焦がれた、一回り以上年上の男性との愛の結晶なのだと信じた。
共に喜び共に生きてくれると信じた男性は、けれど妊娠を知った途端に逃げ出してしまった。
愛した男に裏切られ、周囲から手酷く非難され、挙句に両親からも罵倒された。無理矢理にでもお腹の子の命を断とうとしてきた。結局はそれがあなたのためになるからと。これからが青春の本番であるのに、それを打ち捨ててまでも大変な苦労を負う必要はないと。
両親の思いを理解できなかったわけではない。なにもかも自分を想って、自分だけを想っての言葉であるのはわかっている。
それでも、産みたかった。だから誰のどんな言葉も跳ねのけた。ただひとりで子どもを産んで、子どもとふたりきりで生きていくことを決めた。
誰を憎むつもりもなかった。
逃げた男も、受け入れてくれなかった両親も、馬鹿な女の子だと罵倒してきた周囲の人間も。
ただただ、お腹の子どもだけが愛おしかった。
(……でも、)
この春から、智依子は寝子島高校に入学する。
それは、十四歳で母になろうとして両親からも恋人からも拒絶された智依子を──智依子と智依子の子どもを救ってくれた寝子島の祖父母のたっての願い。
最初は、学校に行かず子どもを育てる決意をしていた。自分と子どもを温かく受け入れ身を寄せさせてくれた祖父母にそれ以上の負担を掛けたくなかった。子どもの傍を、離れたくなかった。
(でも、……)
人生を楽しみなさいと祖父は言ってくれた。
青春は青春でいいものよと祖母は笑ってくれた。
それを楽しむ権利はきちんとあるのだからと。もちろん他にも場所はあるけれど、『高校』という場所がひとまず分かりやすい場所ではあるのだからと。
合わなかったら辞めちゃえばいいのよと気楽に笑う祖母に背を押され、智依子は寝子島高校の門を潜った。それと同時、アルバイトの面接も受けた。生活費を入れることで、少しでも祖父母に恩を返したかった。
智依子と楓が元気でいればそれだけでいいのに、とふたりは拗ねた顔をしたけれど、それでも。
「ママ」
「ん?」
小さなてのひらが頬に触れる。
「ハナたん」
小さな指が指し示すのは、路地の奥にある古い居酒屋。
深まる春の宵を照らす赤提灯と白く光る『やきとり ハナ』と記した電光看板を薄墨の瞳に映し、智依子は微笑んだ。
今日は学校もお休み、バイトもお休み。久しぶりに母子水入らずで遊んだあとは、家からそれほど離れておらず、祖父母と何度か訪れたこともあるこの店でご飯にしようと決めていた。
「今日はハナさんで晩御飯にしようね」
こくりと大きく頷く娘を抱いたまま、縄暖簾を潜ろうとして、
「ぴょんぴょんー」
縄を掴んで引っ張ろうとする娘の動きにちょっとびっくりする。だめよと優しくたしなめていると、引き戸がカラリと開いた。
ふわりと流れだす焼き鳥の匂いと灯りを背に立っていたのは、割烹着姿の女将。
「いらっしゃい、智依子ちゃん、楓ちゃん」
穏やかに招かれ、智依子は娘と一緒に頭を下げる。
「今晩は」
「こばんわ」
奥の小上がりに案内され、靴を脱いであがる。
「はい、今晩は」
カウンターの最奥で焼き鳥をつまみにひとり酒を飲んでいた女性がほろ酔いの顔で笑ってくれた。ひとりで靴を脱ぐのだと頑張る楓を見てどこか懐かしそうに眼を細める。
「ごめんなさい、うるさくして」
「こどもはうるさいくらいがいいさね」
気を遣う智依子を豪快に笑い飛ばし、ごつい店員にお酒のお代わりを注文する。
「ちょっとペースが早くないですか」
「だーいじょーぶさね! そもそも今日は飲み倒すって決めてるんさ」
周りを明るくする雰囲気の女性に頭を下げ、やっと靴が脱げて得意顔をする楓の頭を撫でて並んで席につく。座敷席の端に置かれていた子ども用の小さな椅子にちょこんと座る楓の様子に、
「かわいいわねえ」
智依子には熱いお茶、楓には氷を入れてぬるくしたお茶を運んできてくれた女将が目を細めた。
「今日はふたり?」
いつも一緒に食事に来る祖父母の姿が今日はないことを問われ、智依子は頷く。
「今日は鎌倉に出かけていて」
「あら、デートかしら」
ほくほくと笑う女将の様子につられて智依子もなんだか嬉しくなる。
「そうかも」
「いつも仲良しよね」
「なかよし!」
「仲良し!」
ご機嫌に笑う楓とも笑いあってから、女将は突き出しの小鉢を智依子の前に置いた。浅利と分葱の辛子味噌合え。春めいた一品ではあるけれど、四歳児にはあんまり美味しいものでないかもしれない。
「楓ちゃんはこっちね」
だからと楓の前にはポテトサラダの小鉢を置く。胡瓜とハムにコーン、彩りにプチトマトをひとつ。
「食べられる?」
「たべれれる!」
いただきますと舌足らずに言って手を合わせる楓の前に子ども用のスプーンとフォークを置き、女将は智依子の横で膝を揃えた。何にしましょうと問われ、智依子はちょっと迷った末に焼き鳥の盛り合わせと季節のおすすめ小鉢をひとつ、それから味噌汁とごはんを注文する。
「楓には、……女将さん、何か見繕ってもらえますか」
「はい、お任せくださいな」
春風に乾いた喉をあったかいお茶で潤し、突き出しに箸をつけたりポテトサラダの胡瓜に難しい顔をする楓を励ましたりしているうちに、卓の上には注文した品が並んだ。
季節の小鉢は菜の花と帆立のバター醤油焼き。楓には一皿の上にポテトとウィンナー、スナップエンドウと出汁巻き卵におかか入りのおにぎりが乗せられた、
「なんちゃってお子様ランチ、ですって」
くすくす笑う女将の目線の先ではごつくて無口で熊のような風体の店員が小さく頭を下げている。
「ありがとう」
智依子が声を掛けると、店員はひどく照れた顔でまた頭を下げた。
ふたりでもう一度いただきますと両手を合わせ、ごはんを食べる。おにぎりを両手で持ってかぶりつく楓の様子に目を細めつつ、智依子は焼き鳥の一本を手に取った。自分はこのまま食べられるけれど、四歳児に串を持たせるのはまだ怖い。
串から抜いた焼き鳥を出汁巻き卵の横に並べて置いてやる。張り切ってフォークを突き立てようとしては何度も失敗し、なかなかうまく食べられずに困った顔をする楓を見かね、智依子は娘の手からフォークをそっと取った。
(甘いよね)
そう思いながらもつい手出しをしてしまう。
あーん、と大きく口を開ける楓の顔が鳥の雛じみて可愛らしくて、なかなかやめられない。
供されたものをあらかた食べ終えたあたりで、カウンターの中に居たはずの店員の姿が消えていることに気が付いた。不思議に思っているうち、二階の住居へと続くらしい階段のあたりから、ぬう、と正に熊じみた動きで店員が出てくる。片手に七輪、片手に食材が入っているらしい袋。
ひとり酒の女性に問われた店員は、昨日仕込んだ魚の一夜干しですと応じた。
「外で炙って来ます」
「お、いいねぇ」
「試作品なので後で良かったらどうですか」
そちらも、と声を掛けられ、智依子が礼を口にしようとしたとき、楓が元気いっぱいに立ち上がった。
「ママ、ママ」
店員の持つ七輪に目を釘付けにして、智依子の袖を引く。
「あれ見たい」
舌足らずな口調で懇願され、智依子は頷く。ちょっとだけ待ってね、と皿の上のものを平らげ、先に会計を済ませてしまう。
自分で靴を履いた足を小上がりの端でぶらぶらさせて待っていた楓と手を繋ぎ、外に出る。
「けむりもくもく」
「そうね」
月と街燈と、それから電光看板の光の下、七輪の中の炭が赤い光を放っている。網の上には小ぶりな魚の開きが数尾乗せられ、じゅわじゅわと脂を吹いていた。
好奇心のままに近づこうとする娘の手を取る。
「あんまり火の傍に近づいちゃだめよ」
少し離れた場所で見学させてもらうことにして、娘と一緒に七輪の温もりが僅かに届くほどのところに立っていると、楓ちゃんのおかあさん、と呼ばれた。
「作り過ぎたので」
店員の差し出す小さな袋の中には、まだ焼かれていないアジの干物が数尾入っている。
「ご家族のみなさんでどうぞ」
「ありがとうございます」
袋を手に、楓の隣に戻る。娘は飽きずに魚の焼ける様子を面白そうに見つめ続けていた。
まあるい頬が火の色に縁取られている。
火の色を映す瞳がきらきらと輝いている。
一心にものを見つめる小さな子どもの横顔があまりにも美しく思えて、智依子は思わずスマートフォンを取り出した。微笑みとともにカメラのシャッターを切る。電子シャッター音に気づいて振り向いた娘は、
「ママ」
どこまでも優しく穏やかに、鮮やかに笑った。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年03月23日
参加申し込みの期限
2021年03月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年03月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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