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ビニール紐でまとめた参考書やノートに混ざって、汗と泥の染みついた練習着が丸まっている。
「ああもうくそ五月蠅い!」
畳に地団駄を踏んでも、
「片付けの手順も考えず全部ブチ撒けおって!」
大声で喚いても、
「なんで今頃発酵した練習着が出てくるのじゃ間抜けめ!」
罵声に罵倒を重ねても、
「一から十まで儂が片付けた様なモンじゃぞ! バカ叔父貴」
畳の上で大の字になって眠こける叔父は目を覚ます気配も見せない。
大田原 いいな
は足音も高く叔父の部屋を熊のようにうろうろと歩き回る。室内であってもいつも羽織っている男性用のコートの裾がふわりひらりと翻った。
そのままであれば指先まで隠してしまう袖を腕までまくり上げる。
まとめたままに散乱する参考書を部屋の隅に寄せ、練習着をつまみあげて洗濯籠に放り込む。ちょっと思案して台所からビニール袋を持ってきて、どうしようもない臭いを放つ汚れに汚れた練習着を袋に詰める。固く縛って廃棄する予定の参考書の山の上に放る。
鼻息荒く部屋中を見回して、次に目を付けたのは机の下のスペースに詰め込まれたニャンプラの空箱。
「そもそも!」
小柄な身体で机の下に潜り込み、ぎゅうぎゅうに詰まった空箱をぐいと引っ張り出す。
「ニャンプラの箱は!」
雪崩を起こして畳に転がり出てきたプラモデルの箱にチョップを食らわせ真っ平にする。
「要るものではないたわけ!」
目につくすべての空箱にチョップをかまし踵落としを食らわせ潰し、ぎゅぎゅっと紐で縛ってこれも廃棄物の山に投げつける。いいなが大車輪で働くその間にも、部屋に響くは叔父の太平楽な大いびき。
「……」
ぐおー、と気持ちよさそうにイビキを上げて眠る叔父をいいなはキッと睨みつける。どすどすと足音高く歩み寄り、ニャンプラの空箱にしたのと同じ勢いで脇腹を蹴りつける。
「高いびきかいてのうのうと寝とるんじゃないわー!!」
足蹴にされて、ぐお、と一瞬止まるも、すぐに相変わらずな高いびき。
「ああもうくそ五月蠅い!」
ひとり真面目に大掃除をしているのが馬鹿らしく思えてきて、いいなは畳の上にドッカと尻を置く勢いで座り込んだ。埃まみれの手で叔父の額にチョップをくれてやる。
叔父の大学受験において、
(叔父貴がやった事で褒められるのは飯を作った事ぐらいじゃ)
勉強を教えてくれるからと作ってくれた夜食は悪くなかった。
店で使うお好み焼きの天かすを拝借して作った天かすうどんにはワカメに甘辛いお揚げに卵の乗った豪華版、お好み焼き用の豚肉を流用した豚丼も甘辛い絶妙な味付けだったし、海老に烏賊にありったけの具材を突っ込んだ焼きそばも美味しかった。ただし材料使いすぎだと叔母に叱られた。
(本当に興味のある事しかしない、覚えない、わからない)
ビシビシと叔父の額を打つ。正に三重苦な試験勉強は、
(儂の腹が捩じ切れそうじゃったわ)
何が悲しくて儂までニャンダムを履修せにゃならんかったのじゃ、といいなは潰してまとめたプラモデルの空箱を睨む。空箱に書かれている戦乱も戦争も機体も、どれもこれも完全に覚えてしまった。
ところてんな叔父の頭に詰め込むにはニャンダムに絡めてしまえば良いと気付いたのが勉強を教え始めてしばらくのこと。微塵も興味がなかったために構わず進めたもののあまりの覚えの悪さに仕方なくニャンダムを履修した結果、今ではニャンダムオタクな叔父よりも物語の流れや機体に詳しくなってしまったかもしれない。
それがなんとなく悔しくて、いいなはもう一度叔父の額をはたいた。
んが、と呻いて大人しくなったことにほんの少しだけ溜飲を下げ、叔父の傍を離れて窓辺に寄る。大掃除をしている間に、明るかった空はいつの間にか藍の色となっていた。
窓辺の壁に背を預け、足を投げ出して座り込む。太平楽な叔父の寝姿を見遣り、片付けたお陰で随分すっきりとした叔父の部屋を眺める。
ふと、吐息が零れて落ちた。
(……わたしも三年生か)
身体を包むカーキ色のコートを抱き寄せるように膝を曲げる。借りて二年になろうとしているコートに鼻を寄せても、コートを貸してくれたひとの匂いはもうしない。
(アイツ、別の学校でちゃんと三年生になれてるのかな?)
ふと心配になった。先生や同級生に喧嘩を売ってなければ良いのだけれど。
(メールしても三か月に一回まとめて返信来るくらいだからなぁ……)
コートのポケットに収めた携帯電話に触れる。
(……アイツが居たから)
短く断っているしかなかった髪を伸ばすことも怖くなくなった。
(わたしは、……)
背後から伸びてきて頬に触れていた花影がさらりと揺れた。窓の外を振り返って仰げば、眩しいほどに輝く月。
(寝子島に来て助かった)
この島に──父の故郷に、祖父母や叔母や叔父がいるこの島に来たのは、一番傷や痣がひどいときだった。
父が死んで、母のもとに別の『父』が来た。
その二人に見つからないように記録した虐待の証拠を持って、着の身着のまま寝子島へと逃げてきた。そうして、自分は助かった。
(……でも)
祖父母が死んだのはきっと、自分のせいだ。
(じぃちゃん、ばぁちゃん)
あの二人から自分の親権を取り上げるために、散々に奔走させてしまった。あの二人との矢面に立たせてしまった。
──この子はあたしが育てるさね! 弱いもの虐めするボンクラはすっ込んでやがれ!
あの二人が寝子島にまで追いかけてきて、店の前で大騒ぎしたことを覚えている。
怯えて身を固めるばかりだった自分を抱きしめて守ってくれた叔母の胸の温かさを、罵声を聞かせるまいと耳を塞いでくれた両手の温かさをよく覚えている。
(伯母上……)
みんなに、迷惑をかけてしまった。
祖父母が相次いで倒れたあと、祖父母が護って来た店を継ぐために叔母はずっと続けていた書道の道を断った。
(満月ちゃんは、きっと、書道、やりたいよね?)
店を続けるため、高校に通う弟と自分を支えるため、満月はたったひとりで働き続けている。たったひとりで立ち続けている。
あの二人の前に立ち塞がったときのように、満月の凛とした背が揺らぐことはないけれど、いいなは思ってしまう。
(支えてくれる人、欲しいよね?)
だって自分がそうだった。
(わたしが、このこおとで支えられているように)
護られていると信じられることで得る力もきっとある。
膝をきつく抱き寄せる。彼から借りたコートの袖に顎を埋め、自分のために進みたい道を投げうってしまった叔母のために祈る。
(満月ちゃんも、そういう人に会えると良いのにな……)
ぐおお、と叔父が再びいびきをかき始めた。あまつさえ寝返りをうち、爪先に掌をぺしんとぶつけてくる。
(でも叔母上面食いなんじゃよなー)
叔父の手を蹴っ飛ばし、そこが一番の問題だと頭を抱えたとき、窓の外で物音がした。覗いてみれば、店の前に熊が──もとい、満月が呑みに行った『ハナ』の太一と女将が立っている。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年03月23日
参加申し込みの期限
2021年03月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年03月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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