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春の行き先
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一人暮らしを始めたのは、超転勤族な両親にこれ以上振り回されまいと決めたからだ。
四月からシーサイドタウンで始めたばかりの一人暮らしは、思っていたよりも順調だった。掃除洗濯に苦手意識はなく、むしろ自分ひとりだけの空間を自分の好きなアロマで満たせることが楽しかった。毎日自分ひとりのために食事を作ることも苦には感じなかった。
冷蔵庫には休日にまとめて作り置きしたおかず、冷凍庫には一食分ずつラップで包んだごはんやまとめ買いして小分けした野菜。ひと手間掛ければ、雑誌やインターネットに載っているようなお洒落なカフェご飯だって難しくない。
だから今日のお昼ご飯も、木製のお皿に盛ったアボカドとプチトマトのサラダにココット入りのアスパラとウィンナーのグラタン、それから苺のスムージーと洒落こんで、
稲積 柚春
はご満悦。ひとりご飯はひとりご飯でとても楽しい。
(夕飯は何にしよう)
菜花のペペロンチーノ、春キャベツのコールスロー、人参のポタージュスープ。作りたいものはまだまだたくさんある。
(……でも)
熱々のグラタンをスプーンにすくい、いい焼き色のついたチーズの伸び具合に思わず頬を緩めながらちょっと思う。
(たまには外ご飯もいいかな)
だって家に居ては何のチャンスもない。けれど外に出れば、
(誰かに、会える気がする)
洗濯物が春風に揺れる窓の外は、ぴかぴかのいい天気。お昼の今は汗ばむくらいの陽気ではあるけれど、洗濯物を入れたり掃除を終えたりする頃にはきっとお散歩にちょうどいいくらいの気温になっている。
自分のためだけの美味しいご飯を綺麗に平らげ、後片付けをしてアールグレイの紅茶でひといき。家事を片付けて、お出かけ用の鞄に入れるのはお財布にスマホに家の鍵に、カプセルギアのвор。
寝子島に来て、色んな場所で色んな時間で幾度となく見かけたカプセルギア。地面に転がっている度に踏まないようにと拾い上げ、木の枝に引っかかっている度にそっと摘まみ上げ、誰かの落とし物かもしれないと思った。落とし主が気づいてくれるようにと目立つ場所に置き直したりもした。けれど幾度目かに巡り合った末に、思った。ここまで出会うなら運命かもしれないと。
持ち主が見つかれば返すつもりで、自分のてのひらに包み込んだ。
持ち主はいないのだろうと思ってからは、どこへ行くにも一緒になった。
「行こう、вор」
小さく話しかける。面白いものがあればворと一緒に写真を撮ろう。
鞄の端から顔を覗かせるворの姿にちょっと笑う。
(ぬい活、だよね)
お気に入りの人形に指先で触れ、玄関のドアを開ける。
外の空気は、春の匂いがした。
あたたかい土の匂い。萌え出る草の匂い。咲き乱れる花の匂い。それから、迫る夕暮れの匂い。
暮れ始める空を仰いで、町に出る。
(居るかな)
シーサイドタウン駅に向かう人の流れの中に知らず視線を投げていることに思い至って、柚春は瞳を伏せた。
(……居ないかな)
気づけば探している人がいる。
それは黒髪の少年。
(夢の中でしか、会えていないけれど)
寝子高校に似ているようで寝子高校ではない高校の制服を纏った黒髪の少年。ふらりと出会うのは、いつだって夢の中。
どこかの高校の校舎内だったり、町の中だったり、人込みの中だったり。
出会う度に軽い口調で話しかけられるのに、柚春は少年の名前も正体も知らない。それでも気になってしまうのは、
(絶対運命の相手!)
夢でしか会えない彼が、そうなのだと信じたからだ。それに、
(見た目も好みでカッコいい!)
時々ひどくからかわれて、その度に怒ってみせたりするけれど、それでも彼の態度は変わらなかった。いつだって疾風のように目の前に現れて、トリックスターのようにこちらをからかって、決まって夢の中に消えてしまう。
見た目が好みであるせいか、凝り性で飽き性な態度のくせに一切の悪気を感じられないせいか、どうしても憎めなかった。夢の中で逢えば逢うほどまた逢いたいと焦がれるようになってしまった。
(そういえば)
ふと鞄の端から顔を覗かせるカプセルギアを見遣る。あの黒髪の少年の夢を見始めたのは、ворを拾ってからだ。
(運命)
てのひらに掴めないほどにふわりとしていながら、胸を熱くしてしまうその言葉。ひとに話してしまえば、大抵は笑い飛ばされてしまうその言葉。
──え、あるんじゃないの?
その言葉を、そんな風に、当然のように受け入れているひとに、この島で出会った。春の陽の色に似た明るい金色の髪をしたそのひとは、柚春が通う高校の先生だった。
鞄のворに指先で触れながら、まなざしをもたげる。街の中に探すのは、今度は黒髪の少年ではなく金髪の青年。
春の日差しに会いたいひとを探してしまうことに、なんだか胸がことことと鳴る。
(ひとくくりで言えば、どちらも気になる異性で会いたい人だけれど)
黒髪の少年を想っても、金髪の青年を想っても、胸は高鳴る。
(……でも)
ふたりに対する想いはどこか違う気がする。どう違うのかと自分に問うてもはっきりとした答えは出せないものの、
(ドキドキの種類が違うような……)
考えて歩きながら、もう随分と葉桜じみてきた桜の下を通る。風が通る度に花吹雪を散らす桜並木を潜り抜け、街路に植えられた雪柳の白い花の傍らを通り過ぎる。
茜に染まり始める海の音を右手に寝子島街道を辿り、気まぐれに旧市街の商店街に迷い込む。のどかでうららかな春の夕暮れを藍色の瞳に映しながらあてもなく歩いていて、
「……?」
どこからか漂ってきた香ばしくも美味しそうな香りにふと足取りが緩んだ。シーサイドタウンとは雰囲気を違える、少し懐かしいような雰囲気の街並みを見回す。夕暮れの町に薄く見える美味しい匂いの煙に誘われて路地に入ってみれば、突き当りに古びた居酒屋があった。
換気扇から吐き出される焼き鳥の煙に加えて、『やきとり ハナ』の電光看板の横では熊じみて大柄な男が七輪の前にしゃがみこんで魚の干物を焼いている。
「今晩は」
「こばわ」
男から少し離れたところに並んで座っていた女性と幼い女の子に挨拶の声を掛けられ、柚春は反射的に笑顔を浮かべて会釈する。
面差しの柔らかな女性と、四歳ほどの女の子はよく似ている。姉妹というには歳が離れているようにも、母子というには歳が近すぎるようにも見えるふたりではあるけれど、纏う空気はとても穏やかで優しかった。
「今晩は」
「あ、いいところに」
人懐っこそうに笑う熊に似た男に手招きされるまま近づいて、良かったらどうですかと新聞紙に包んだアジの干物を示された。
「たくさん作り過ぎてしまって」
「わ、すごい。手作りですか?」
炭の熾る網の上でじゅわじゅわと焼ける干物はいかにも白いごはんの似合う匂いを漂わせている。
「一夜干しです」
「味付けは塩だけ?」
「ええ、開いたアジを塩水に漬けて干すんです。塩が薄めなので日持ちはしないんですが、これくらいが美味しいはずです」
言いながら男は焼き上がったばかりの一夜干しを小皿に取って差し出した。調理方法を興味津々に聞いている間に焼き魚を供されて戸惑う柚春にどうぞと手渡し、傍にいた母子にも同じものを渡す。
「あら、あらあらもう、外から戻って来ないと思ったら」
カラリと開いた引き戸から、割烹着姿の女将が顔を出した。店員らしい男を軽く叱り、そうしてから軽やかな笑顔を柚春に向ける。
「お腹、空いてない?」
店内から流れ出す温かなご飯の匂いにつられ、柚春は思わず頷いた。自分の作るご飯とは系統が違うけれど、これもご縁、今日はここで夕ご飯にしようか。
アジの干物の皿を手に、カウンター席に着く。鞄から出したворを卓の上に座らせると、
「カプセルギアですね」
お通しの浅利と分葱の辛子味噌と熱いほうじ茶を置きつつ店員が髭面で笑った。オススメを問えば、今日は新ジャガと新玉葱の肉じゃがが美味しいですよと言う。
勧められるまま、肉じゃがと春野菜たっぷりの味噌汁にスナップえんどうのおひたし、それからご飯を注文する。
「こげてる!」
「おわ、今行きます!」
店先から聞こえた女の子の声と応じる店員のやりとりに小さく笑いつつ、女将が並べてくれた和食に箸をつけてはご飯を頬張る。自分のつくるご飯はご飯で美味しいけれど、こうして外で食べるご飯だってやっぱり美味しい。
肉じゃがの大振りに切られた新玉葱の甘さに頬を綻ばせていたとき、カウンターの奥の席から押し殺した溜息が聞こえた。
周囲に悲しみをまき散らすまいと我慢して我慢して、それでも結んだ唇から零れてしまったような苦しい溜息を耳にして、思わず心配になる。そっと視線を巡らせ、溜息の主を探す。
(気分転換のハーブティーとか、教えてあげたいな)
そう思うも、溜息の主であるいつもは切符の良さそうなお姉さんの前には焼酎のお湯割りが並々と注がれた湯飲み。
「っと、ごめんよ」
柚春の気遣わしげな視線に気づき、満月はカラリとした笑顔を浮かべてみせる。小さく首を振った女子高生は、余計なお世話かもですが、と遠慮がちに言ってから、鞄から取り出したカモミールティーの試供品を差し出す。
「あれまあ、ありがとうねぇ」
姪っ子と歳の変わらなさそうな女の子の優しさに思わず顔中で笑み、ついでに頭をごしごし撫でてしまいそうになる手をぐっと我慢して、満月はいただきますと頭を下げた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオS(400)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年03月23日
参加申し込みの期限
2021年03月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年03月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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