漂流　～宇宙にて～｜リアクション

漂流　～宇宙にて～

【汝が名は？】

「ここに来た時に頭に響いたメッセージからは、天地の創造を連想したわ。神が大地を生み出し、自然を作り、知識を持つ人間を作り、人間は罪を犯す」
　こまちは博美に自分の考えを話しつつ、モニターを撫でる。
「神話の創造神の名前でも片っ端から入力してみた？」
「思いつく限りはやってみたぜ」
　といって、メモ書きした神様の名前を見せる。
「だいぶ、書いてあるな」
　ラッセルが感心したように言う。
「……あら、じゃあ、これはどうかしら？」
　そういってこまちは一つの名前を刻む。
『野々ののこ』……×
『落神』……×
「あとは……『地球』……これもだめね」
　こまちお手上げと言わんばかりに、言う。
「そうか、では俺の番だな」
　そう言って進み出たのは修だった。
「分かるのかよ？」
「あぁ、割と確信を持っている」
　轟の言葉に修は頷いた。
「”初”である名と”知”である名を己に持つ者、火を”盗みし者”、その火により人に発展の”転機”を齎し文明とを贈った者」
　その言葉に、思い当たるものはハッと気づいた。
「汝が名は……『プロメテウス』」
　そう言って、名を刻んだ。

　＊認証中です＊
　…
　……
　…………
　＊認証に成功しました＊

「やったぞ！」
　そう言ったのは誰であったか。

　ブシュゥゥゥゥ！　
　空気の排気する音とともに、ピピピピピッと電源が立ち上がっていく。
　ウィィィィンと機械の駆動音とともに様々な機器が目覚め、その顔をのぞかせた。
　そして、中央の台座が引っ込むと、引っ込んだ穴から別のものがせり上がってきた。
「……モアイ像？」
　せり上がってきたものはどこかモアイ像を連想させるものだった。
　博美が手を伸ばして触ってみると、ブンッという音とともに博美の手が吸い込まれる。
「精巧なCGにも見えるな」
　その様子を見た轟が言う。
「すごい、船が揺れたよー！」
「桜庭さん、もう大丈夫なのですか？」
　医務室の方から出てきた円をこまちは心配するも、円は大丈夫だと腕をぐるぐる動かした。
「外を見てみるといい」
「すごい事になっているぞ！」
　月詠と刀の言葉に、慌てて修はホログラムにむきなおる。
「外の様子は映せるのか？」
「Yes」
　モアイ像らしきものの目が赤く光ると、鈍い声が響き、上から黒板並みの大型ディスプレイが下がってくる。
　そして、ぶつっという音とともに、外部の様子が移される。
「大変なのだ！　だんだん、地球に近づいているのだー」
　そのとき、真央が水月を連れて、入ってきた。
「分かっている！」
　修が焦ったように声を上げる。
「とりあえず、何か動いた方が良いだろう」
　ラッセルの言葉に、はっと考えるように黙り込む。
「……プロメテウスさん、宇宙船はこのままだとどうなりますか？」
「推定、地球標準時間の15分20秒後に地球圏に突入し、消滅します」
　こまちが質問し、帰ってきたその言葉に、さらに真剣な空気が増す。
「宇宙船を止める方法はねーのか！」
　ラッセルが質問をする。
「禁則事項マニュアル第一四項第二規定によりその情報は開示できません」
「そ、そんな。くっ、何か良いアイディアは無いのか！　……そうだ、中央電子頭脳室！」
　博美の言葉に、月詠が質問する。
「プロメテウス、中央電子頭脳室への扉を開けれるか？」
「可能です」
「では、開けてくれ」
「Yes」
　その音とともに、中央電子頭脳室の扉が開く。
「予定は変更だな。全員で行こう」
　修はそう言うと、中央電子頭脳室へと行く。
　全員がそれに続いた。

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