希望＜ネガイ＞が現実＜ホント＞になるところ。それがらっかみ！｜リアクション

希望＜ネガイ＞が現実＜ホント＞になるところ。それがらっかみ！

　いつも通りに目覚めた高瀬誠也はウインドブレーカーに着替えた。
　身体を解すように柔軟体操を始める。終わると腕立て伏せに移行。同じ調子で繰り返し、百を超えた辺りでやめた。速やかに腹筋に切り替える。床に仰向けになって軽く両膝を曲げた。苦も無くこなす。回数は三桁に及んだ。
「行きますか」
　両耳にワイヤレスのイヤホンを嵌める。スマートフォンの画面ではアイドルの曲を選ぶ。
　軽快な出だしに頭が微かに揺れる。曲の勢いに乗って外へ飛び出した。
　シーサイドタウンの人気の少ないところを選んで走る。早い時間帯もあって少し距離を伸ばした。
「珍しいですね」
　ポケットに振動を感じたのか。走りながらスマートフォンを取り出し、メールの内容に目を通す。会社の臨時休業が告げられた。
　誠也はシーサイドタウン駅に着いた。息に乱れはなかった。噴水の縁に腰掛けるとスマートフォンでアイドルの情報収集を始めた。
　剣崎エレナの名前が目に飛び込んできた。世界的なアイドルに成長したエレナが凱旋コンサートをすると記事に書かれていた。日付はエイプリルフールの今日で場所は寝子島。その先を読んだ瞬間、腰が浮いた。
「ここ、ですか」
　周囲を見回す。コンサート会場に因んだ機材は持ち込まれていなかった。
「もう少し調べてみましょう」
　座り直すと画面が目まぐるしく変化した。そこに不穏な一文を見つけた。
『組織に狙われる。銃撃戦が予想』
　信憑性に欠ける。ただ完全に否定もできない。
「物騒ですね」
　表情に一切の怯えは見られない。静かな闘志が目の奥に宿る。
「俺が撃退します。ゲームで培った腕を見せ付けてやりましょう」
　ポケットにさりげなく両手を入れる。一瞬で引き抜き、二丁の拳銃を構えて即座に戻す。ノーモーションの為、誰一人、気付いた者はいなかった。