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【お花見】花の盛りの寝子島で
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学校での用事は午前中に終わった。
携帯電話に繋げたイヤホンを耳に押し込み、
椎井 莉鳥
は正門まで続く桜並木を歩く。視界いっぱいを埋める薄紅も、学校へ花見に来たらしい人々も、何もかもを景色にして通り過ぎる。
制服のスカートを揺らす春風を掌で払いのけ、伏せた瞳を上げもしないうちに、景色はいつのまにかひどく賑やかになっていた。耳元に電車の音が届いて、知らぬ間に寝子島街道まで辿り着いていることに思い至る。
強い風に巻きあげられ、街道を埋める桜が花びらを青空に舞い上がらせた。街道のあちこちに設けられた屋台から、食べ物の匂いが漂ってくる。
見回してみれば、花咲く街道はいつもよりずっと賑わっている。
(お花見……)
焼き鳥の屋台にたむろして笑いあう人々、仲睦まじげに肩を寄せ合って歩いて行く恋人たち、子どもに手を引かれて笑みかわす大人たち。
誰もがみんな楽し気に見えて、莉鳥はまた瞳を伏せた。
季節は春で、空は鮮やかに晴れているのに、この胸の心は嵐の暗雲にずっと覆い尽くされたまま。
理由は分かっている。
──勘弁してくれよ!
イヤホンからの音楽で塞いだ耳に、正月のあの日に聞いた声がまた響いた。胸に渦巻く暗雲が一層暗くなる。
(……まだ……)
胸を掴む。心の中にしつこく居座る別れた男──
北里 雅樹
のことを心から引き剥がそうとして、また失敗した。
(たかが二度ほど)
別れた男に向けて、自分自身に向けて、罵ってみる。
(身体を許した程度であんな風に燻るわけ?)
伏せた瞼の裏、あの秋の夜に水中から見た満月が蘇った。一緒に水に沈んだ雅樹のどこか切ないような横顔は、今もまだくっきりと思い出せる。それが忌々しくてしょうがなかった。悲しくて悔しかった。あの月夜のナイトプールで出会ってしまったせいで、腐れ縁の微妙な関係にひびが入ったのだ。
(……まだ)
この胸には、雅樹への想いの欠片が残っている。きっと、雅樹にも。
それを自覚してしまったからこそ、自分も雅樹もおかしくなった。拗れに拗れた関係はもう、修復不可能だ。
胸が痛い。終わらせようとして終わらせられなかった想いはひどく胸を蝕む。
(でも)
桜のこの季節が終わらぬうちに、雅樹は京都の大学に進学する。今頃はもう、向こうの住まいに移る準備に忙しくしているだろう。
雅樹がこの島を去れば、
(それで終わりなんだ、)
繰り返し繰り返し、痛む胸に言い聞かせる。会えなくなれば、恋の欠片などすぐに消えてなくなる。そう信じこもうとする。
(終わりなんだ……)
──少なくとも、十年以上。
合格した大学で、数学の理学博士号を取得や海外留学、その後の研究者への道も視野に入れている。従ってそれくらいの年月は必要なはずだった。
(もっとも)
いつもより賑わう寝子島街道をぼんやりと歩きながら、雅樹は見納めになる故郷の桜を眺める。
(帰省するつもりもないけどな)
引っ越しや大学入学の手続きのため、ここしばらくは不仲な父親と顔を合わせる機会を設けなければならなかった。耐え難い苦行も、けれど昨日で終わり。指を折るまでもなく、もうすぐこの島を離れる。
顔を合わせる度に剣呑な雰囲気になってしまう父親から物理的な距離を置くことが出来る。それから、それ以上に──
(忘れ物は、ないよな)
脳裏を過りそうになった別れた女の横顔を、最後に見たうずくまって泣きじゃくる姿を、強引な思考の転換で打ち消す。
(現地で色々安く買えたのは助かった)
島から持っていくものはそう多くはない。その多くないものを頭になぞる。そうでもしなければ、
──雅樹に、私の何がわかるのよ!
幼馴染で、彼女だったこともあった莉鳥の、最後に聞いた悲鳴のような声が耳に蘇ってしまう。
互いの身体を許し合った。
恋人としての関係が終わっても、しばらくは腐れ縁の関係が続いていた。
(もう終わったんだ)
春風に髪が乱れるのも構わず、頭を横に振る。
(終わったんだ)
正月に偶然顔を合わせてしまったことが引鉄になって、腐れ縁の関係さえも最悪の形で崩れ果てた。関係修復の最後の機会になったかもしれない卒業式のときも、顔を合わせられなかった。
(もう、……)
忘れるしか手はない。
暗澹たる気分をどうにかしたいのに、花見客と屋台で賑わう街道を煩く感じて仕方がなかった。桜並木を外れ、人気の少ない裏路地に足を踏み入れる。
途端、誰かが争うような声が聞こえた。
(厄介事か)
巻き込まれることを嫌い、思わず舌打ちする。踵を返そうとして、
「……やめて」
小さな小さな、悲鳴を聞いた。
数人の男たちに囲まれ、聞くに堪えない卑猥な言葉で痛めつけられているひとりきりの女の姿が見えた。華奢な身体を強張らせ、恐怖に竦みあがった蒼白な顔が見えた。
「ぶつかっといて詫びもナシ?」
男のひとりが女の腕を掴む。
見るからに柄の悪い男たちに有無も言わさず裏路地に引きずり込まれた女子高生の行く末は容易に想像がついた。
「っ……」
女の──莉鳥の顔が歪んでいる。
(ふざけるな!)
瞬間、頭に血が上る音を雅樹は確かに聞いた。
咄嗟にポケットからスマートフォンを取り出す。わざと足音を高く響かせつつ、
「警察ですか!」
莉鳥を囲む男たちに聞こえよがしに叫ぶ。
「女の人が──」
男たちが驚いた顔で振り返った。僅かに出来た男たちの囲みに身体を捻じ込ませ、男の手から莉鳥の腕を奪い返す。男たちが怯んだ隙を突き、
「逃げるぞ、早く!」
莉鳥の手を引いて走る。男たちの罵声に背を殴られながら、追いかけてくる気配を感じながら、ひたすらに走る。寝子島街道に飛び出し、人込みの中を駆ける。
繋いだ莉鳥の手が強張ったままひどく冷たかった。
それでも繋いだ手は確かで、後ろに聞こえる足音も確かだった。思わず、強く強く冷たい手を握り締める。決して離しはしないと掴み続ける。
行く先も定めず逃げるために走って走って、辿り着いた果てにあったのは、シーサイドタウンの端の大観覧車の前。
全力で駆けずり回ったふたりは、言葉もなくただ荒い息を繰り返す。
汗の滲んだ額を手で拭い、雅樹は周囲を見回した。追手の姿は見えないものの、警戒は緩められない。莉鳥の手を引き、観覧車乗り場の裏手に身を潜める。
疲弊しきった身体を壁に押し付ける。激しく脈打つ心臓を抑え、呼吸を整えるばかりの雅樹の手を、莉鳥が強く握り返した。
「……助けてくれて、ありがとう」
囁いた声に応じたのは、雅樹の両腕だった。拒む間もなく抱きしめられて、けれど莉鳥も元恋人の背中にきつく両腕でしがみつく。
熱を帯びた雅樹の頬が耳に触れて、頬よりも熱い涙が触れた。雅樹が泣いていることに気づくも、莉鳥に言葉を掛ける余裕はない。
見知らぬ男たちに取り囲まれたときの恐怖にまだ指先が震えている。
手を引いて助け出してくれた雅樹の指の熱が手首や手に残っている。
心臓がうるさいほどに鳴るのは、力の限りに駆けたせいか、それとも。
(雅樹)
頬をあたたかく濡らす涙はあの場を逃れた安堵のためか、それとも。
胸の内を測り切れないまま、それでも今はいいと莉鳥は雅樹を抱きしめる。もう二度と会わないはずだったふたりは互いに互いを抱きしめながら、最後かもしれない時を過ごす。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
65人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年01月23日
参加申し込みの期限
2021年01月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年01月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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