【お花見】花の盛りの寝子島で｜リアクション

【お花見】花の盛りの寝子島で

「──倉前、」
　聞き覚えのある声が名前を呼んでくれている。
「こんなところで寝ていたら風邪を、……」
　言いかけた声がちらりと笑った。
「倉前は、今日も魔弾の的になるのかなぁ？」
　途端、ぴしりと額に小さな痛みが走って、倉前七瀬は桜の海に泳ぐ夢から目が覚めた。
「……んぁ？」
　瞼を擦り、何だか痛い額を擦る。目の前には、片手をデコピンのかたちにしたウォルター・Bが呆れたような面白そうな顔をして立っていた。
「……あ、ウォルター先生？　ええと、おはようございます？」
「おはよう、って時間でもないけどねぇ」
　空を見上げる高校教諭の青い瞳を彩るのは、黄昏より深い夜の色。どうやら随分と長くお昼寝をしてしまったらしい。
「奇遇ですねぇ～。先生はなんしとったとですか？」
「倉前こそ」
「え、僕ですか？」
　先生の手が頭や肩に降り積もった桜を払ってくれるのが嬉しくて、七瀬は笑った。
「ぽかぽかしとーし気持ちよかもんで、ついつい眠ってしまっとったみたいです」
　えへへ、とまた笑って見せてから、鞄の傍に置いたまま忘れていたコンビニの袋を示す。中には手つかずのサンドイッチとお茶。

「よかったら、せんせーも僕と一緒にお花見しませんか」
　いいもの持っとるんですよ～、とまだ少し眠たげな瞳で仰げば、先生はそうだねぇと頷いた。
「放っておけばまた眠っちゃいそうだしねぇ」
　先生のためのスペースを隣につくりつつ、七瀬は瞳を細める。
(本は読めたし桜は綺麗だし、)
　なにより大好きな先生に会えた。
(今日はいい日です)
　夜空に見上げた桜はまだまだ満開で、だからきっと、
(明日も、いい日です)

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あとがき

担当マスター：阿瀬春
ファンレターはマスターページから！

お待たせいたしました。
お花見日曜日版、お届けにあがりました！

楽しいお花見も切ないお花見も、色んなお花見を拝見することができて、描くことができて、とても幸せでした……！
ご参加くださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました。
少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。

ありがとうございました！

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