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- 00月00日生 00歳
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【お花見】花の盛りの寝子島で
夫から預かった食べ物や酒瓶を抱え、船着き場から郭へと続く石段を登ろうとしかけた理沙の手に、そっと小さなてのひらが触れた。
幻のようなお城の入口で、幻のように儚い存在感で、けれど確かにそこに立つ小さな少年の姿を見とめ、理沙は青い瞳を優しく細める。
「冬夜君……」
神魂の影響を受けた場所や不思議な空間を探検していることの多い、この世に生まれることが出来なかった夏朝と夏夜の弟。
お弁当の包みを持つとふわふわ笑う冬夜に輝くほどの笑みを向け、理沙は息子とふたりでゆっくりゆっくり石段を登り始めた。
「会えて嬉しいわ、冬夜君」
篝火に照らし出された郭では、たんぽぽの綿毛のようにふわふわと漂ったり地面を駆けまわったりする小さな子猫たちを茫然と見つめ、城の人々があちらこちらに立ち尽くしている。
花見の準備がされてはいるものの、その余裕もなさそうな人々を見回して理沙は瞳を伏せた。八夜城が寝子島に現れるのは一年に一度と聞いている。
(今日を逃せば……)
息子とふたりで運んできた重箱や酒類は、郭の一角に敷かれた筵の上にそっと置かせてもらう。魚のから揚げに干し柿、焼餅に焼きおにぎり、樽入りの酒。城の人々が今日のために用意したのだろうお花見のご馳走が無駄になってしまうのは悲しい。
(あの子猫ちゃんたちがお城の人達……って事はないわよね)
料理や重箱や、夫から預かった飲み物などを守るように、筵の前に立つ。おいでとばかりに両手を広げれば、待ってましたとふわふわの子猫が胸に飛び込んで来た。
「冬夜君、一緒に子猫ちゃん達なでなでしましょう？」
てのひらに収まってしまうほど小さな子猫を優しく撫でる。しゃがみこんで冬夜に促してみると、冬夜はくるんとした瞳をきらきらと輝かせた。
ふたりのてのひらに撫でられた子猫は、嬉しそうな声でみぃと鳴いた。かと思えば、その姿はひらり、一瞬のうちに桜の花びらとなる。
顔を見合わせる母子の前を、瑠樹は元気いっぱいに駆け抜けて行く。ふわふわ漂う子猫を両手を伸ばして受け止め、優しくふんわり抱きしめる。
(可愛いねぇ、ふかふかだねぇ……)
両手の中で心地よさそうに丸くなる白い子猫は、ほんものの子猫と同じに温かい。我も我もと寄って来る子猫たちを片っ端から両手でなでなで、両手で足りずに頬を摺り寄せてもふもふ、そうすれば、子猫たちは次々に桜の花びらへとその姿を変えた。
ひらりと舞い上がる花びらを追って、何匹かの子猫が地面を駆ける。
(遊びたいのかもねぇ)
子猫たちがやりたいようにやらせてあげようと決めて、瑠樹は子猫のあとを追う。
「まてーまてー！」
歓声を上げる少年の姿に、子猫たちは大興奮。追いかけてくる瑠樹に逆にくるりと向き直り、ポップコーンが弾けるに似て瑠樹へと飛びつく。
「わあっ」
何匹もの子猫に飛び掛かられ、瑠樹はその場に尻もちをついた。子猫の群れに押し倒されながらも、両腕いっぱいに抱きしめてくすくす笑う。ふわふわと頬や腕に触れる綿毛じみた毛がとてもくすぐったかった。
ひとしきり子猫たちを花びらへと帰したあと、瑠樹は身体中花びら塗れのままに元はお城があった場所へと足を向ける。香箱を組んで静かに眠る、お城の大きさもある白猫を仰ぐ。ずっとずっと高いところに、透明髭の揺れる顎が見えた。
めいっぱい手を伸ばしても、届くのは胸元に折りたたまれた前脚の端っこ。それでも瑠樹は手が届くところだけでもと丁寧に撫でる。
「白にゃんこ……」
耳を澄ませば、すうすうと静かな寝息が聞こえてきて、瑠樹は笑う。
「可愛いねぇ、和むなぁ」
もちろん、いつも一緒のラピちゃんもラズちゃんも可愛い。
背中のリュックサックの中から大好きなぬいぐるみたちを取り出し、両腕に抱きしめながら大きな白猫にも抱き着く。
「白にゃんこに、とーっても和んでほしいねぇ！」
発動させるのは、周囲を和ませるろっこんの進化能力。いつもは周囲に向かうその力を、今は目の前の白猫にだけ集中させる。
「皆も、白にゃんこも、楽しめたらいいなぁ」
たとえ、この白猫の正体が如何なるものであったとしても。みんなで一緒にお花見が出来ればきっと楽しいに違いないから。
ごろごろごろ、聞こえてきた喉の音がまるで笑っているように聞こえて、瑠樹も笑った。
恐ろしいはずの巨大白猫に全身で抱き着く少年の姿に、城の住人たちが恐る恐るながら倣う。近づいて来てはそうっと白猫を撫でたりふわふわ漂う子猫に手を伸ばしたりし始める城の人々に、瑠樹はまた笑った。嬉しくなって、ラピちゃんラズちゃんを抱きしめる。
「白にゃんこもふわふわ子猫も、ラピちゃんラズちゃんも、みーんな可愛いねぇ」
うっかり発動したろっこんが周囲の人々をも和ませたのは言うまでもない。
幻のようなお城の入口で、幻のように儚い存在感で、けれど確かにそこに立つ小さな少年の姿を見とめ、理沙は青い瞳を優しく細める。
「冬夜君……」
神魂の影響を受けた場所や不思議な空間を探検していることの多い、この世に生まれることが出来なかった夏朝と夏夜の弟。
お弁当の包みを持つとふわふわ笑う冬夜に輝くほどの笑みを向け、理沙は息子とふたりでゆっくりゆっくり石段を登り始めた。
「会えて嬉しいわ、冬夜君」
篝火に照らし出された郭では、たんぽぽの綿毛のようにふわふわと漂ったり地面を駆けまわったりする小さな子猫たちを茫然と見つめ、城の人々があちらこちらに立ち尽くしている。
花見の準備がされてはいるものの、その余裕もなさそうな人々を見回して理沙は瞳を伏せた。八夜城が寝子島に現れるのは一年に一度と聞いている。
(今日を逃せば……)
息子とふたりで運んできた重箱や酒類は、郭の一角に敷かれた筵の上にそっと置かせてもらう。魚のから揚げに干し柿、焼餅に焼きおにぎり、樽入りの酒。城の人々が今日のために用意したのだろうお花見のご馳走が無駄になってしまうのは悲しい。
(あの子猫ちゃんたちがお城の人達……って事はないわよね)
料理や重箱や、夫から預かった飲み物などを守るように、筵の前に立つ。おいでとばかりに両手を広げれば、待ってましたとふわふわの子猫が胸に飛び込んで来た。
てのひらに収まってしまうほど小さな子猫を優しく撫でる。しゃがみこんで冬夜に促してみると、冬夜はくるんとした瞳をきらきらと輝かせた。
ふたりのてのひらに撫でられた子猫は、嬉しそうな声でみぃと鳴いた。かと思えば、その姿はひらり、一瞬のうちに桜の花びらとなる。
顔を見合わせる母子の前を、瑠樹は元気いっぱいに駆け抜けて行く。ふわふわ漂う子猫を両手を伸ばして受け止め、優しくふんわり抱きしめる。
(可愛いねぇ、ふかふかだねぇ……)
両手の中で心地よさそうに丸くなる白い子猫は、ほんものの子猫と同じに温かい。我も我もと寄って来る子猫たちを片っ端から両手でなでなで、両手で足りずに頬を摺り寄せてもふもふ、そうすれば、子猫たちは次々に桜の花びらへとその姿を変えた。
ひらりと舞い上がる花びらを追って、何匹かの子猫が地面を駆ける。
(遊びたいのかもねぇ)
子猫たちがやりたいようにやらせてあげようと決めて、瑠樹は子猫のあとを追う。
「まてーまてー！」
歓声を上げる少年の姿に、子猫たちは大興奮。追いかけてくる瑠樹に逆にくるりと向き直り、ポップコーンが弾けるに似て瑠樹へと飛びつく。
「わあっ」
何匹もの子猫に飛び掛かられ、瑠樹はその場に尻もちをついた。子猫の群れに押し倒されながらも、両腕いっぱいに抱きしめてくすくす笑う。ふわふわと頬や腕に触れる綿毛じみた毛がとてもくすぐったかった。
ひとしきり子猫たちを花びらへと帰したあと、瑠樹は身体中花びら塗れのままに元はお城があった場所へと足を向ける。香箱を組んで静かに眠る、お城の大きさもある白猫を仰ぐ。ずっとずっと高いところに、透明髭の揺れる顎が見えた。
めいっぱい手を伸ばしても、届くのは胸元に折りたたまれた前脚の端っこ。それでも瑠樹は手が届くところだけでもと丁寧に撫でる。
「白にゃんこ……」
耳を澄ませば、すうすうと静かな寝息が聞こえてきて、瑠樹は笑う。
「可愛いねぇ、和むなぁ」
もちろん、いつも一緒のラピちゃんもラズちゃんも可愛い。
背中のリュックサックの中から大好きなぬいぐるみたちを取り出し、両腕に抱きしめながら大きな白猫にも抱き着く。
「白にゃんこに、とーっても和んでほしいねぇ！」
発動させるのは、周囲を和ませるろっこんの進化能力。いつもは周囲に向かうその力を、今は目の前の白猫にだけ集中させる。
「皆も、白にゃんこも、楽しめたらいいなぁ」
たとえ、この白猫の正体が如何なるものであったとしても。みんなで一緒にお花見が出来ればきっと楽しいに違いないから。
ごろごろごろ、聞こえてきた喉の音がまるで笑っているように聞こえて、瑠樹も笑った。
恐ろしいはずの巨大白猫に全身で抱き着く少年の姿に、城の住人たちが恐る恐るながら倣う。近づいて来てはそうっと白猫を撫でたりふわふわ漂う子猫に手を伸ばしたりし始める城の人々に、瑠樹はまた笑った。嬉しくなって、ラピちゃんラズちゃんを抱きしめる。
「白にゃんこもふわふわ子猫も、ラピちゃんラズちゃんも、みーんな可愛いねぇ」
うっかり発動したろっこんが周囲の人々をも和ませたのは言うまでもない。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年01月23日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年01月30日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年01月30日 11時00分
