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【お花見】花の盛りの寝子島で
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この島の不可思議な現象にもいい加減慣れてきている。
(が、……)
瞬きひとつした次に水の底に立っていながら、
加瀬 礼二
はひとり、くすりとかたちの良い唇を小さく歪めた。
白い砂に埋められた碧い水底の果てには、石造の町が白く揺らめいている。町を薄紅に彩るものは、桜だろうかそれとも別のナニカだろうか。
(今回のは普通に興味深い)
月の蒼した瞳を上機嫌に細め、迷わぬ足取りで水底の町に向けて歩み始める。ここは水中散歩と洒落こもう。
(この光景は色々活かせそうですよねぇ)
足元の白砂を粉雪じみて舞い上がらせ、大股に進む。思案するのは、家業である高級ホテルやリゾート施設を展開するParadisoグループへ提案する新企画について。
たとえばホテル内に水底を再現した一室を用意してみてはどうだろう。
たとえばテーマパークに遺跡となった水底の町を探検するアトラクションを造成してみてはどうだろう。
(レストランでも、各種リゾート施設でも)
現実で部分的にも再現することが出来れば、好む客層は必ず有るはず。
考えるのは、一年後のこと。自身がアメリカに帰国してからのこと。
日本を含め、アジア方面の一部であれども任されたグループの仕事は軌道に乗っている。
人脈も作った。
求められている成果に色を付けた結果は出している。
となれば、帰国後の道は決まっている。大学に通いながら、更に本格的に仕事に取り掛かる──
もたげた睫毛の先が僅かに重たい気がして、
弥逢 遊琳
は瞬きを繰り返した
「……此処は」
持ち上げた腕には、白襦袢の上に羽織った花海棠柄の着物の袖が揺れている。春めいた着物の袖を指先に払えば、その指にもほんの僅か、水の抵抗を感じた。
全身を包み込むほんのりとした潮の香りに、蜜色の瞳が僅かに翳る。海の気配は、あまり好まない。
視界一面を海の碧が覆い尽くしている。逃れるように仰いだ頭上にも、波のかたちをして海があった。零れた息は銀色の泡になり、水に解けて消えた。
(……あれば良いのに)
小さく思った瞬間、手元に和傘が現れた。そっと開けば、周囲を押し包む碧よりも柔らかな夜空と瞬く星が頭上に広がった。
星空を内に抱く和傘を差し、水底を歩む。不意に己を包み込んだ水底に、悪意は感じられなかった。
(神魂の所為だとして、)
望めば、すぐにでも戻れる筈だった。
(けれど、)
──何処に?
星ヶ丘寮は退寮した。
『彼』の家の合鍵は桃の節句に『彼』の家のポストに入れてきた。
元よりこの島は、高校を卒業するまでと期間を定められて訪れたところ。
本来であれば己は、いつまでもこの島にいてはいけない。家に──末妹が帰りを待ち侘びている弥逢の家に、戻らなくてはならない。
(『弥逢遊琳』として、……)
胸に呟いた途端、息が苦しくなった。
(僕は、何処に)
帰りたいのだろう。
ずっと問い続けて問い続けて、終ぞ解らなくて、その問いには大分昔に匙を投げてしまった。だから今も、己の望みは解らない。だからこそ、この島に来てから、誰かの居場所になろうとした。帰る場所になろうとした。
けれど、気づいてしまった。
それは自分のエゴだと。帰りたい場所を得たいがために誰かの帰る場所になろうとしているだけなのだと。だからもう、諦めた。己に帰る場所などないのだと、信じることにした。
水底を歩く。
帰りたい場所などないと己を見放すがゆえに。
それから、もうひとつ──碧い世界の果てに、見間違えられぬ背中を見つけてしまったがゆえに。
「また会ったね、礼二」
「おや、センパイ」
三月の初めに無言で別れを告げた礼二は、けれど何事もなかったかのように振り返り、軽い口調で笑った。
「奇遇ですねぇ」
「……そうだね」
水底に差した和傘が傾き、蜜色の瞳を隠す。
近づけば逃げてしまいそうな雰囲気を感じ取りながらも、礼二は敢えて遊琳の傍へと近づいた。間近に立つ。気づけば目前となっていた石造りの町を仰ぐ。町を覆い尽くして咲き乱れる桜を見遣る。
「貴方とはもう一緒に桜を見ることはないのかなと思っていたのですが」
怒るでもなく、むしろどこか面白がっているような色をその言葉に感じ取り、遊琳は足元に降り積もる薄紅を見つめる。
──来年もまた見られるといいですね
去年、宵の観覧車の中で礼二はそう言った。その言葉の理由は、遊琳には解らない。解らないけれど、彼のその言葉を叶える気は正直なところ無かった。
彼に優しい時間をあげたいという想いは確かにあったものの、それは己の薇が切れるまでのことと思っていた。そうして、薇は確かに切れたのだ。後に残ったのは弥逢家の人間としての己ばかりで、
(ああ、……でも、)
ならばどうして、いつまでもこの島に居るのだろう。
交わしたとも言えぬ幽かな約束をひとつひとつ手繰り寄せるようなことを繰り返しているのだろう。
「さて、どういった心境の変化でしょう?」
くすり、礼二が笑う。相変わらずの意地悪さで。相変わらずの察しの良さで。
「それともまだお気づきではない?」
からかうように傘の内を覗き込まれ、遊琳は着物の袖で口元を隠して視線を逸らす。
「僕は、……本当は、何も」
望むつもりはなかった。
それなのに、夢を見てしまった。
──僕は、お前の手を
──取って良いに決まってるでしょう
惑う己の手を掴んでその胸元に引き寄せてくれた、礼二の手の力強さを覚えている。あれは夢だと何度己に言い聞かせても、あの夢の全てが幻であるとはどうしても思えなくて、それゆえに、己の中で何かが疼いた。そんな気がした。
(あれは、僕の中の欲の種だ)
冷たい土の底から小さな種が芽吹くように、もう疾うに失くしたはずの願いも蘇るものなのだろうか。それを知りたかった。確かめてみようと、思えた。
「センパイ」
同じ夢の同じ場面を思い浮かべたかの如く、礼二が月の青の瞳を細める。
「俺から手を差し伸べることはありませんが」
きっぱりと言い切ってから、どこまでも淡く笑う。
「それでも貴方から手を伸ばして求めるなら、その手を振り払うことはありませんよ」
遊琳の手を取るその代わり、散り続ける桜のひとひらを掌に納める。
「センパイはどこへ行かれるんですか?」
さりげない口調で問うてから、礼二はわざとらしく小さく首を傾げる。卒業しちゃいましたしねぇ、と言い放つ礼二を、遊琳は小さく睨んだ。笑う。
「意地悪」
「意地悪でしたか?」
遊琳が答えられないことを解っていて問うた。答えられないならそれでも良いと。だって、
(それが『答え』ですもんね)
遊琳の手を取らぬまま、礼二は掌に閉じ込めていた花びらを水中に放つ。ゆらりと指先を離れた薄紅は、見る間に桜吹雪に紛れた。
「……もし、またいつか逢えたら」
願いを口にする遊琳の声は震えていた。
いつか逢えたら。それが意味するところは、今は一緒に同じ時を歩みたいとは言えない、ということ。一度は別れ別れになるということ。
「センパイが戻ってきた時、俺はもうこの島にいないと思うんですけど」
遊琳が精いっぱいに束ねて渡そうとした言葉の花束を拒むかのように、礼二は大股に一歩退る。そうして、それでも、と微笑んだ。
「センパイが帰りたいって思ったら、俺のこと追いかけていいですよ」
逃げも隠れもしないんで、と芝居じみて両腕を広げて見せる礼二に、遊琳は花のように笑んだ。
「礼二。いつか、お花見をしよう」
未来のいつかのその時には、と遊琳は願う。いつかかならず逢ったその時には、
(この手をもう一度伸ばして君の手を取ろうとしても、……)
許されたいと、今は願う。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
65人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年01月23日
参加申し込みの期限
2021年01月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年01月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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