にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～｜リアクション

にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～

　　　４

　四人がいっせいに振り返ると、そこに黒猫たちがいた。ニャッドとニャリファドが先頭だ。
「いつのまに……」
「気にするにゃ、人間。我ら猫は、気配を消すのが得意にゃ」
　ニャッドがふん、と誇らしげに鼻を鳴らす。
「どうしてここが？」
と、幸次。
　ニャリファドがにやりとし、
「我らが何もせず、お前たちに任せきりだと思ったかにゃ？　島中に手下を放ち、お前たちの動きを見張ってたにゃ」
と胸を張った。
　いやそれ、結局こっち任せだよね、とは思ったが、何とか飲み込む。
「やっぱり人間は信じられないにゃ」
　引っ掛かっていたのはこれか、と幸次は思った。
　黒猫たちは、自分が貰った餌をニャッドとニャリファドに届けていたのだろう。その際に見聞きした話を報告したであろうことは、想像に難くない。
　もう少し注意すべきだったな、と少し後悔する。それでも、
「これがにゃんぴーすに関係するか分からないからだよ。確認してからと思ったんだけど」
と、フォローを入れてみる。
　じろり、とニャリファドは幸次を睨んだ。信じてくれそうにない。
「だったら、確認はこちらでやるにゃ。お前たちは帰るにゃ」
「待って！」
　瀬莉が慌てて割って入る。
「この蔓は、とっても危険なの！　だから、刈り取らないといけないの！　このまま続けさせてよ！」
「そんなことを言って、俺たちを騙す気だにゃ？」
「違うっ」
「やれ」
　ニャッドの命令で、黒猫が三匹、瀬莉に襲い掛かる。
「きゃあ！」
　瀬莉は咄嗟に両手で頭を庇った。幸次は爪を伸ばし、猫たちを追い払う。
　落ちた鉈を龍樹が拾い、大きく振り回した。
「近づくな！――猫にこんなことしたくないんだ、だから！」
　猫を傷つけるわけにはいかない。皆、同じことを思っていた。特にただの猫である、部下たちには。故に防戦一方となり、四人は千年杉へじりじりと追いつめられていった。
「あれっ？」
　素っ頓狂な声を上げたのは、巧だ。彼が指差した先では、黒猫が何匹か蹲っていた。
「寝てる？」
　龍樹が首を傾げた。
「――違う！　あの子たち、蔓にやられてる！！」
　自分たちが襲われているのも忘れ、瀬莉は駆け寄った。黒猫たちに巻き付いた蔓を力尽くで引き剥がす。
　それほど時間が経ってないからだろう、黒猫たちは眠っているだけで命に別状なさそうだ。静かに上下する胸を見て、瀬莉は安堵した。
「――そうか」
　千年杉以外の植物や動物は皆、生命エネルギーを吸い取られてしまった。それ故に、蔓は活動を停止し、外へ外へと命を求めてその手を伸ばしている。だが今、格好の獲物が現れた。
「何でおれたちは大丈夫なんだ？」
「体の小さい奴、弱いものからやられるんじゃないかな」
　普通の黒猫たち、その次はニャッドとニャリファドだろう。その後は、人間だ。瀬莉か龍樹か、はたまた巧か。
「分かった！？　あたしたち、今は戦ってる場合じゃないんだってば！　これを何とかして逃げ出さないと、――ああなっちゃうの！」
　瀬莉は逡巡し、死んだ動物たちを指差した。
「しかし――」
　なおも躊躇うニャリファドだったが、
「分かったにゃ」
と即決したのはニャッドだ。
「キャプテン！？」
「命あっての物種にゃ。――動けるものは蔓を切り裂くにゃ！　動けない奴は――」
　ちらり、と巧を見上げ、
「こいつに乗るにゃ！」
「僕！？」
　巧は猫乗せ台と化した。