にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～｜リアクション

にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～

　　　２

　幸次と巧が登山道入り口に着くと、瀬莉と龍樹は既に待っていた。
「おっそいぞー」
　ぶんぶんと手を振りながら口を尖らせた龍樹だったが、巧を見るや、
「あっ、東門の兄ちゃんじゃん！　久しぶり～！！」
と駆け寄った。
「まあまあ、積もる挨拶もあるだろうけど、まずはロープウェイに乗らない？」
　幸次の提案で、四人はさっさとロープウェイに乗り込んだ。巧への説明は、ここに来るまでにすませてある。
「兄ちゃん、カプセルギアやってる？」
「うん。何とか揃えた。これからちょこちょこ改造していくつもりだけど、時間なくてさあ……」
　溜息をつく巧に、何で？　と瀬莉が尋ねた。
「勉強？」
「それもあるけど、ここんとこ、うちの庭に黒猫が来るんだ」
　幸次たちはぎょっとして、顔を見合わせた。
「うん、多分、あのニャッドたちの仲間だと思う……あいつら喋んないし、立ったりしないけど」
　島中を荒らし回っていた黒猫海賊団だが、幸次との約束で、一応は大人しくなった。が、彼らも生きていかなくてはならない。
　幸いにして、ここ寝子島は元来野良猫も多く、多少増えたところで問題はない。
　とはいえ、さすがに百匹は多かった。彼らも分散しているらしいが、あちらこちらで黒猫の集団が餌を貰いに来るようになった、という噂を幸次も聞いていた。
　その一つが、巧の下宿であったらしい。
「ニャッドとニャリファドは来るの？」
と瀬莉が尋ねた。巧はかぶりを振る。
「僕んとこには」
「……どうも、部下たちが運んでるらしいんだよねぇ」
　三日に一度、幸次は調査報告をするため、ニャッドたちに会っていた。場所は墓地であったが、ニャッドたちがそこに寝泊まりしているかは分からない。
　ただ、その時の会話から食事には困っていないこと、黒猫たちがニャッドとニャリファドに忠節を尽くしていることがよく分かった。
　あれ、と幸次はそこで黙り込んだ。
　自分で言った言葉に、引っ掛かるものを感じる。「何」に引っ掛かったかは分からない。だが、どうにも気になることがある幸次だった。

　ロープウェイは砂掛谷でいったん途切れ、乗り換えになる。
　多くの客はそのまま頂上へ向かうが、ここで降りて千年杉に向かう者も少なくない。
　だが今、彼らの目の前にあるのは、立ち入り禁止の看板と黄色と黒のトラロープだった。
　千年杉に行くつもりだった観光客のほとんどが、頂上か温泉へ行き先を変更している。当然、幸次たちもその選択を迫られた。
「俺たち、ハイキングに来たんで、歩いて頂上に向かいます」
　幸次はにっこり笑って係員に告げた。そういう客がいないわけでもない。係員はすんなりと信じてくれた。四人を兄弟とでも思ったのだろう。
　一行は、ほんの少し歩くと、そのまますぐに反転し、千年杉に向かった。――いや、向かおうとした。
　トラロープの内側に一歩足を踏み入れた途端、どこもかしこも同じような蔓が絡まっているのが目に入った。
　木も、岩も、地面も、緑色の蔓でびっしりと覆われている。
「うえっ……」
　龍樹は舌を出して、気持ち悪そうな声を上げた。巧は青ざめている。
「見て！」
　瀬莉が指差した先の蔓が、ゆっくりと動いていた。「……成長してる」
　幸次は、そっとその蔓を触ってみた。
「……襲ってくる様子はないね。意思を持ってるわけじゃなさそうだ」
「それじゃ、これはただの蔓ってこと？」
「俺は専門家じゃないから何とも言えないけど、ただの成長がめちゃくちゃ速い蔓なんじゃないかと」
「それじゃ」
と、瀬莉はまた言った。「やることは一つだよね」
　そうして瀬莉がリュックから取り出したのは、「鉈」だった。

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