にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～｜リアクション

にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～

　　　５

　幸次は猫の爪で、龍樹は鉈で、猫たちはその爪で蔓を切り裂いていった。
　飛び散った蔓がどんどん地面に溜まっていく。
　疲れ、倒れた猫たちを瀬莉が巧に渡し、体力を取り戻した猫はまた蔓を切り裂くために地面に降りた。
　幸次は千年杉の蔓を引き千切りながら、その一部をポケットに突っ込んだ。
　蔓は次々に再生されていくが、それよりも切り裂いていくスピードの方が速い。
　三十分ほど経ったろうか。
「空にゃ！」
　ニャッドが叫んだ。ぽっかり空いた空間に、青空が見える。
「走れ！！」
　幸次の声に、人間と猫たちは一斉に走り出した。

　どこをどう走ったのか分からない。開けた場所に出て、皆、地面に座り込んだ。いつのまにか、ほとんどの黒猫たちとはぐれたようだ。
「大丈夫かな……」
　息を切らせながら、瀬莉は案じた。
「トラロープのとこまでは、見たんだけど」
　足を投げ出し、座り込んだ龍樹が言った。立ち入り禁止区域を抜けるまでは、相当数の黒猫たちが足元にいたはずだった。
「心配にゃい。あいつらにゃら、うまく逃げている」
　ニャッドは肉球の汗を自分の身体で拭い、胸を張った。「俺の部下だからにゃ」
「キャプテン、すぐにでも仲間を集め直しましょう」
　そうだな、と頷くニャッドと共にニャリファドは立ち去ろうとした。
　それを止めたのは瀬莉だ。
「話の途中だったのに、帰っちゃうの？」
　単純な疑問だった。そこから芋づる式に、思いついたことが口から出る。
「あの蔓がにゃんぴーすかどうか、確認するって言ってたのに。逃げてきちゃったけど、ニャリファド君なら持ってきたり――」
「危ない！」
　ニャリファドの鋭い爪が空を切った。ふわり、と瀬莉の髪が何本か宙に舞う。
　瀬莉を抱えて転がった幸次は、立ち上がりながらニャリファドを睨みつけた。
「図星か。持ってきてるんだな？」
「……僅かだがにゃ」
　人間のように服を着ているわけではない。ほんの僅かな量を引き千切り、肉球の間に隠し持っていたらしい。それも今の攻撃で、どこかへ飛んで行った。だが、その一つだけとは思えない。
　幸次はニャリファドから視線を移した。
「ニャッド！　俺と勝負しないか？」
　ニャッドはクイ、と片眉を上げた。
「俺と？」
「一対一の勝負だ。俺が勝ったら残りの蔓は置いていってもらうよ。でも君たちが勝ったら、好きにすればいい」
　これは賭けだった。ニャッド相手だけでも苦戦したのだ、二匹相手に戦うのは危険だった。だが、ニャッドだけなら、何とかなる可能性はある。
　ニャッドはにやりとした。
「いいだろう」
「キャプテン！？」
「海賊たるもの、一対一の勝負を挑まれて逃げるわけにはいかにゃいだろう？」
　ニャッドはすっくと立ち上がると、堂々たる態度で幸次の前に進み出た。入れ違うように下がるニャリファドと前足でハイタッチし、
「任せておくにゃ」
と笑った。

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