麗らかな日差しの下、野良猫たちが日向ぼっこをしています。
万条 幸次は窓からその様子を眺めてから、視線を二人の客へと戻しました。
「多分、大丈夫」
「じゃあ、分かったことの報告会ね」
と
佐藤 瀬莉が言うと、
白石 龍樹がハイハイと手を上げました。
「やっぱり、にゃんぴーすを知ってる人はいないみたい」
にゃんぴーす――それは、猫を支配できる謎の宝です。どういう形状で、どのように使うのか、一切分かりません。この寝子島のどこか――高いところらしい――にあるということだけが、唯一の情報です。
この話をもたらしたのは、黒猫海賊団です。文字通り、黒猫ばかりの海賊団で、船長のニャッドと副船長のニャリファドは人の言葉を解し、二足歩行で歩くことも出来ます。
彼らはその宝を使って、世界中の猫を自分たち黒猫の支配下に置こうとしています。
幸次たち三人は、ニャッドたちに協力するふりをして、にゃんぴーすを探しているのです。
しかしながら街の図書館や学校の図書室、果ては老人たちに聞き込みをしたものの、龍樹が言うように分かったことはありません。
「やっぱり駄目かあ」
幸次は、がしがしと頭を掻きました。「昨日もまだ何もないのか、って散々、突かれてさぁ」
幸次はニャッドたちと三日に一度会い、報告することになっています。次は二日後です。
「この際、何でもいいから何かないかなあ?」
「寝子島、いろんなことありすぎじゃん」
龍樹が言うように、寝子島では不思議なことがいくらでも起きます。どれがにゃんぴーすに繋がる出来事なのか、判断が付きません。
「全然関係ないかもしれないけど」
と、瀬莉が前置きし、ねこったーを見せました。
「九夜山の千年杉、あれが今、枯れそうになってるって話があるんだけど」
「千年杉が?」
と、幸次。
ねこったーによれば、千年杉に妙な蔓が絡まっているというのです。この蔓は日ごとに勢いを増し、周囲の草木を枯らしています。このままでは千年杉も枯れてしまうため、取り敢えず引き剥がすことになったそうです。
「そんな蔓の話、聞いたことないなあ」
千年杉は長く寝子島に存在します。そんなものがあったなら、記録に残っているはずです。
「怪しいなあ!」
龍樹が唸ります。
「黒猫たち、高いところを目指してたでしょ? だから、もしかしたらって」
寝子島で高いところといえば、まず九夜山です。
「その蔓を引き剥がすのって、いつ?」
「明日って書いてある」
と、瀬莉はねこったーを見ながら答えました。皆、興味がないのかこの件に反応している人は少ないようです。
「……他に手掛かりもないし、行ってみるかなぁ」
「ニャッドたちには?」
内緒、と幸次は答えました。「見に行って違うものだったら報告する意味ないし、もし、にゃんぴーすに関係あるんだったら」
そこでいったん言葉を切り、うーん、と幸次は言葉を濁します。
「……関係あったら?」
龍樹が重ねて尋ねました。
「……余計、言うわけにはいかなくない?」
かくて、千年杉に絡まる蔓を見に行くことになったのですが……。
「――そんなことだろうと」
幸次のアパートの窓の下、呟いたのはニャリファドです。
しかし、黒猫が自分たちの話を聞いていたことを、幸次たちは知りません。ただ一匹、「花遊(かゆう)」が外に向けてしきりに鳴くので窓を開けてみましたが、その時にはもう、ニャリファドの姿はありませんでした。
万条 幸次さん、佐藤 瀬莉さん、白石 龍樹さん、ガイドへの登場ありがとうございます。
概要
さて、お待たせしました。「にゃんぴーす!」の続きの物語となります。
今回は「千年杉に絡まる蔓」が物語の中心です。
この蔓がにゃんぴーすに関係あるのかどうか、ガイドの時点では分かりません。
しかし、黒猫海賊団は関係あるだろうと思っています。
PCの皆さんは、蔓についてねこったーや口コミ等で情報を得ていますので、
にゃんぴーすに関係があるとしても、全く関係ない出来事としても、関わることが出来ます。
また、偶然その場に居合わせることもあるかもしれません。
ガイドでは「この蔓は日ごとに勢いを増し、周囲の草木を枯らしています。」とありますが、
この蔓、千年杉の半径一キロにまで範囲を伸ばしており、実は近づくのが容易ではありません。
見ている間にもどんどん、蔓は伸び、あちこちの木や動物に絡まります。
千年杉に近づくには、この蔓と黒猫たちの障害があると考えてください。
・黒猫海賊団と競争し、「にゃんぴーす」を探す
・「にゃんぴーす」を見つけて、黒猫海賊団に渡す
・九夜山を登っていたら、騒動に巻き込まれてしまった
・はぐれた黒猫を案内してあげる。黒猫と遊んであげる
など、自由な立場でお楽しみください。
もちろん、前回は参加していない初めての方も大歓迎です。
登場NPCなど
黒猫海賊団:キャプテン・ニャッドと副船長のニャリファド率いる黒猫ばかりの海賊団です。
黒猫と言っても、ニャリファドのように白い毛が混ざっている猫もいます。
ニャッドとニャリファドは二足歩行も出来、人語も解しますが、部下の黒猫たちはごく普通の猫です。
ニャッドとニャリファドの命令で、千年杉に向かっています。
◆キャプテン・ニャッド:黒猫海賊団の船長。全身真っ黒で、右目がありません。なぜか二足歩行が出来、人の言葉を話します。千年杉に向かっています。
◆ニャリファド:副船長。黒猫ですが、胸の一房だけが白いです。二足歩行をし、人の言葉を話します。千年杉に向かっています。
泉のNPC、東門 巧を出すことも可能です。