にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～｜リアクション

にゃんぴーす！２～宝を手に入れよ！～

　　　３

「てやあああ！」
　鞘を腰に装着し、瀬莉は鉈を振り回した。そのたびに、蔓がパッ、パッと飛び散っていく。
　瀬莉が持ってきたのは、刃が長方形の「腰鉈」だ。薪を割ったり、枝や藪を払うのに適している。もちろん、彼女の私物ではなく、親の持ち物だ。
「すっげー！　すっげー！　おれもやりたい！　やらせて！」
「ちょっと！　危ないってば！！」
　はしゃぐ龍樹に鉈の使い方を教え、瀬莉は振り返った。
「正体不明の蔓だって言うから警戒したけど、どうってことなくてホッとした」
「まあ確かに、成長が速いだけで助かったね」
「でもないみたい」
　瀬莉の言葉に巧と幸次はきょとんとし、彼女の指の先――自分たちの背後を振り返って、唖然とした。
　たった今、四人が通ってきた道が既になくなっていた。
　薙ぎ払うことで作った通り道を、新しい蔓が塞いでいたのだ。
「こりゃまずい」
と幸次は呟いた。先に進む龍樹とはぐれたら最後、身動きが取れなくなりそうだ。
　三人は足早に龍樹を追った。
　しばらくして、違和感に幸次は眉を顰めた。ねえ、と瀬莉が声をかける。
「何だか、色がおかしくない？」
「ホントだ」
　巧もきょとんとして周囲を見回した。「……枯れてるのかな？」
「……これは確かにまずいねぇ」
　蔓の絡まった木や草の色が変化していた。触れれば、かさりと音を立てて崩れてしまう。
　そういえばねこったーには、この蔓が草木を枯らすとあった。それゆえに、千年杉から引き剥がすのだと。
　唯一幸いなのは、枯れた草木に絡んだ蔓は、それ以上成長しないことのようだ。蔓を薙ぎ払っても、再生することはなくなった。
　そうして、四人はようやく千年杉に辿り着いたが、そこで見たのは思わず目を背けたくなるような光景だった。
　枯れた木々、蔓に絡めとられ、動かぬ鳥や兎。悲鳴を飲み込み、瀬莉は蔓を引き剥がした。しかし動物たちは冷たくなったまま、動かない。
「酷い……」
「生命力を奪っている、のか」
　呟いた幸次は、ごくりと喉を鳴らした。これは、思っていた以上に危険な植物ではないのか。
　その中にあって、千年杉だけはまだ堂々とその姿を保っている。だが、枝の端からははらはらと枯れた葉が落ちてきて、この大樹の生命が尽きるのも時間の問題かと思われた。
「どうすんの？」
と、龍樹が尋ねた。「高いところが問題なんだろ？　おれが登る？」
「いや、それは危険じゃないかな」
　幸次はかぶりを振った。
「そもそも、この蔓がにゃんぴーすと関係あるかどうか調べに来たんだから、ちょっとサンプル採って帰ればいいんじゃない？」
と提案したのは巧だ。
「これを放っていくの？」
　瀬莉は反対した。まだ生きている動物がいるかもしれない。このまま帰るわけにはいかないと思った。
「僕らに出来ると思う？　この量だよ？」
「だけどっ！」
　ぱんっ、と幸次が手を叩いて、言い争いになりかけた二人を止めた。
「こうしよう。東門君の言うように、これは俺たちの手に余る話だと思う」
　うんうん、と巧が頷く。でもっ、と瀬莉が言いかけたところに、
「といって、佐藤さんの言うように放っておくのもまずいよね。サンプルを採取して、可能な限り蔓を取っておくのはどう？　時間稼ぎにはなると思うよ」
「さんせーいっ」
　龍樹が大きく手を上げた。巧とて、この状況を放っていいとは思わない。渋々とだが、この案に乗ることにした。瀬莉も、それしかないかと承知する。
　幸次が【猫チェンジ】した爪で、瀬莉と龍樹が交代で鉈を振るい、千年杉の周囲から蔓を剥ぎ取っていく。巧は特に出来ることもないので、見張りだ。
　地面に落ちる蔓を見ながら、どこかで見たことがあるな、と巧はぼんやり思った。それが何であるか、思い出せないのだけれど。
　それにしても眠い。何でこんなに眠いんだろう、と思ったその時だ。
「案内、ご苦労にゃ」
　聞き覚えのある声がした。

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