吸血の島｜リアクション

吸血の島

「ふーむ。それじゃ、これじゃちょっと切れ味が足りないって事？」
「そうだな。軽くて取り回しが良いのは良いんだがな。それと少し強度も足りないかもしれない」

　白真白はハンターの一人とやり取りをしている。
　真白自身もハンターではあるのだが、普通のハンターと違うのは直接吸血鬼と相対する戦闘要員ではなく、彼らが使う装備の開発している裏方なのだ。
　今も真白が作った刀を実戦にして使用してきたハンターと、その使用感について話をしているところだった。

「強度が？」
「あぁ。今回は持ったが、もう少し激しい戦いでは途中で折れてしまう可能性が高いと思う」
「それはまずいわね……」
「もう少し重量があっても構わないんだが、どうにかならないか？」
「それがねぇ。今の寝子島で取れるこの鉱石。どうにも妙な特性を持ってて中々調整が難しいのよね」
「そうなのか？」

　変質してしまった寝子島では、何故か以前には存在しなかった特殊な鉱石が採れるようになっている。
　それを使って武器を作ってみたところ、他の武器に比べて吸血鬼に効く事からその鉱石で武器が作られるようになったのは良いのだが、その鉱石は中々に特殊であったのだ。

「緻密な手作業が必要だし、トライアンドエラーをするのも一苦労なのよ。まぁでも、どうにかしなきゃいけないのだけど」
「悪いが、よろしく頼む」
「ええ、了解」

　そして、様々なハンターからの要望に応える為に開発に勤しんで夜。
　夜にはこの時にしかできない事がある。それは自らの手による実地試験である。

　他のハンターによるデータも勿論重要なデータなのは間違いないのだが、真白としては時には自分で確かめてみないと分からない事もあると考えていた。
　理論的には効くってわかってても何か見落としていることがあるかもしれないのだ。

「それにたまには実戦を経験しておかないと、いざと言うときに動けないしねー」

　そうしていると、早速一匹の吸血鬼を見つけたようだ。相手は夜になったら寝子島を徘徊する言葉を話す事もできない最下級の吸血鬼だ。

「さぁ、データの糧となって貰うよ！」
「ぐぎゃ！？」

　まずは試しにと吸血鬼へと攻撃した武器は、まるで地獄の鬼が持っているかのような棘のついた棍棒である。

「うん、振ってみた感じ私でも十分いけるわね。ただ、威力はもう少し欲しいかしら？　瀕死ではあるけど、一撃で倒せてないし」

　そう呟くと瀕死に吸血鬼にとどめを刺して、次の獲物を探していく。

「む……。あれは、ちょっと格が高そうね。それなら、まずは――」

　そういって取り出したのはモーニングスターである。
　どうやら吸血鬼の方はまだ真白に気付いていない。真白は気付かれないように気配を消して近づき、攻撃範囲に入ったところで勢いよくモーニングスターを叩きつけた。

「何っ！？」
「まだまだぁっ！」

　直前に攻撃に気付いた吸血鬼は防御するものの吹き飛ばされてしまい、その上に更なる追撃を喰らってしまう。

「そして、ここでこれ！」

　そして、吸血鬼の足が止まったところで鎖の拘束具にて動きを封じる。

「さぁて、これでもう抵抗でき……るみたいだね」
「貴様ぁっ！？」

　鎖の拘束具を無理やりに破った吸血鬼はすっかり怒り心頭のようだ。

「ちょっと強度が足りなかったかな、要改良だね」
「何をふざけた事を……ッ！？」
「と言っても、拘束具は一つじゃないんだけどね」
「こんなもの、また破って……何故だ！？　何故、破る事ができない！？」

　吸血鬼は知らない。真白には対象物を硬化する事ができるろっこんがあると言う事を。

「さぁ、これから日が昇るまでは実験の時間だ！　たっぷりデータを取らせてもらうよー！」

　相手が吸血鬼とあっては遠慮する必要はない。ここからが本当の実験であった。