吸血の島｜リアクション

吸血の島

「フゥ……」
「どうした？　珍しいな、ため息なんて」

　御剣刀がため息を吐くと、それを見てとった仲間がそう声をかけてくる。
　刀と他に二人。この三人は変りはてた寝子島で、多くの吸血鬼を屠ってきたチームだ。
　そう。当たり前にあった学生時代の生活。それはもう遠い昔のようであった。

「いや……。やっぱり人間は昼行性だなと思ってな。陽の光浴びないと元気でない」
「あー。連中のせいでハンターは基本夜に活動するからなぁ」

　寝子島を跋扈している吸血鬼達。彼らは日光を浴びると灰になる性質があるため、日中は姿を現さずに夜活動している。それ故に吸血鬼を狩るハンターもまた夜に活動する事になってしまうのだ。
　仲間の返事を聞いて、苦笑してから手に持っている刀の刃を見る刀。これも、以前は刃引きであったのだが、今は真剣となっている。当然だ。刀がしている活動はけしてお遊びというわけではないのだから。

「そろそろ行くか」
「おう」
「あいよ」

　刀が言うと仲間二人がそれに同調する。
　生存者の保護と生存者の中で合流を拒む人の安全の確保、そして吸血鬼の討伐。ハンターである刀達の仕事は多い。

（嫌な夜だ……。こんな夜は、恐らく何かが起きるな）

「ふっ！」

　吹き出すような一瞬の呼吸。それに合わせるような瞬間の斬撃。それで一体の吸血鬼の首を落とした。
　生存者達を護送している時に、まるで知っていたかのように吸血鬼達に襲われてしまった刀達。しかし、それでも慌てる事はなく冷静に対処していく。

「吸血鬼の相手は俺達がやる！　今の内に皆の避難を！」

　刀のチームメイトがそう別のハンターへと指示を出す。
　今いるハンターの中だと戦力が一番高いのは刀達のチームなので、その指示は間違っていない。
　それならばと刀は少しだけ本気を出す事にした。吸血鬼の注目を引くために敢えて派手にやるのだ。

「加速」

　言葉にする必要はないのだが、これもまた気を引く演出の一つだ。
　その言葉と同時に刀が加速する。風を置き去りにするかのように吸血鬼の間合いの外から一瞬で詰め寄り、そして首を狩る。
　身体能力が高い吸血鬼さえも超える程の速さは、吸血鬼達の目にも脅威に映ったようで明らかに先程までと目の色が違う。

　吸血鬼の一人が刀を指さして何事か言えば、取り囲むように吸血鬼達が動き始める。
　しかし、今見たものを彼らは忘れてしまっているのだろうか？　彼らさえも追う事が難しい速さを持っているのだ。取り囲み終わるまで刀が待っているわけがない。
　一体の吸血鬼の首を斬ってから包囲網の脱出。そして、そのまま加速に乗ったままもう一人の首も狩る。
　
　普段はここまで連続して加速を使用する事はないのだが、今回は派手にやるつもりであるが故に行っていた。

「くっ……。退け、退けぇっ！」

　そんな刀を見て、彼らでは敵わないと見たのか吸血鬼達が撤退していく。
　その後ろ姿を見ながら、刀はただ思う。いつまで、この戦いは続くのだろうかと。

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あとがき

担当マスター：昂祈
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昂祈です。
吸血の島のリアクションをお届けいたします。

鬼という言葉がありますが、この言葉の英語バージョンはデーモンだったり、オーガだったりと揺れたりします。
日本人からすると、デーモンは悪魔でオーガの方がまだ鬼に近いかなぁという印象ですね。

ただ、本来（？）の伝承のオーガは角とかはないらしいので、やはり日本の鬼とは少し違う……？

さて、今回はここまでという事で。
それでは、この度のシナリオにご参加頂きありがとうございました！

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