【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

　初瀬川理緒と佐和崎紗月は手を繋いでパレードに参加した。堂々と歩いて二人で卒業する。前々から決めていたことなので躊躇う素振りも見せなかった。
　二人は今日、寝子島高校を卒業する。青い空に無数の花弁が舞う。造花であっても、それは華やかに目に映り、心を揺り動かすような感動を与えた。
　紗月は涙を流した。幼い子供のように声を上げて泣いた。
　隣にいた理緒は笑って言った。
「ちょっと紗月。朝の態度と違い過ぎるよ。新しい道に踏み出すことは嬉しいんじゃなかったの？」
「……だ、だって、がまん……無理よ」
　涙が止められない。手で拭っても間に合わない。目が壊れたかのように止めどなく涙が溢れた。
「そんなに泣かないでよ。今日は晴れ舞台で、高校生活の、最後の日、なんだから」
　笑っていた理緒の目から涙が零れた。二人は手を繋ぎ、共に泣いた。在校生から送られる温かい声に包まれ、理緒は震えた。
「ありがとう、寝子高大好きだー！」
　心の震えが止まらず、理緒は大空に向かって叫んだ。

　感極まる卒業生を他所に森篠琳子は淡々と歩いた。時に在校生に手を挙げて答える。冷静に現実を受け止めた。
　学び舎に目を向けることはない。何かに思いを寄せる素振りも見せなかった。
「今日で終わりね」
　一言で別れを告げた。