【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

　舞台では在校生によるパフォーマンスが目や耳を楽しませた。勢いが付き過ぎて失敗することもあった。その都度、温かい声援が起こり、大いなる手助けとなった。中断する者はいない。最後まで遣り通す。最後の拍手には誰もが誇らしげな表情を見せた。
　音海なぎさはマリンブルーの瞳で舞台を見ていた。優しげでいて儚げな表情は揺れる心を表しているようだった。
　――ボクはずっと迷っている。これまでも、きっとこれからも迷い続けていくのだろう。
　わかっている。まっすぐな道なんてないってことは。
　何度も自分に言い聞かせて、止まりそうになる足を動かした。先の見えない曲がりくねった道を歩いてきたんだよ。
　舞台で劇が始まった。ファンタジー色が強い。手作りの甲冑を着て腰には剣を下げていた。強大な敵に立ち向かい、仲間と力を合わせて困難を乗り越える。そのような展開を劇的に演じた。
　なぎさはオレンジブラウンの前髪に、そっと指を入れて掻き上げた。
　――みんなのために、ボクは何かを残せたのだろうか。助けて貰ってばかりで、何も返していない、そんな気になるのは、どうしてなのかな。
　静かに瞼を閉じる。
　――素敵なパフォーマンスを見たよ。それだけではなくて、悲しそうなものもあったね。努力して盛り上げようとしてくれた後輩には感謝しかない。
　パフォーマンスの形はそれぞれだけど、想いは一つだよね。ボクにはちゃんと伝わったよ。受け止めることはできるけれど、返すことはとても難しい。
　そんなボクは明日、卒業式を迎える。どうなるんだろう。どうにかして在校生のみんなに想いを届けられるといいんだけど。
　思考を中断して目を開けた。しっかりと舞台を見る。憂いのある顔に強い気持ちが見え隠れした。