【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

　朝鳥さゆるは横になっていた身体を起こす。ぼんやりした目で周囲を見て、ああ、と思い出したように声を漏らす。
　殺風景な部屋ではなく、家具や愛らしいインテリアが置かれていた。人の営みが感じられる。
　殺伐とした過去が嘘のようだった。
「でも、あれは……」
　さゆるは軽く頭を振った。過去を消すことはできない。
　葉利沢倫理子の別人格に犯された。逃げ出すと報復という形で粗暴な者達に襲われた。発砲事件の被害者となり、一週間の入院を余儀なくされた。今は一時的な避難場所に身を置いている。
「じゅんは」
　目で探すと一枚の書置きが目に付いた。
『買い出しに行ってくる』
　安堵の息を吐いた。明るい窓に目を向ける。その眩しさを受けて逆に心が暗く沈んでいく。
「あたしは、あの女を」
　両手を強く握った。手は細い首の感触を忘れていなかった。

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