this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
さくら、たちばな、ももの花。~ひなまつり in ねこじま~
<< もどる
1
…
11
12
13
14
15
…
19
つぎへ >>
「誕生日、本当におめでとう」
終わり掛けの電話でそう繰り返す。電話口の向こう、実家の末妹は何度目かのありがとうを繰り返した。電話の初めに告げたときと変わらぬ嬉しそうな笑い声が耳朶に触れる。
待っているから、と末妹が声を弾ませている。
「うん、じゃあね」
弥逢 遊琳
は穏やかな声で返す。いつまでも同じ言葉の応酬になってしまいそうな電話を終える。
出した手紙とプレゼントのお礼、だと言っていたけれど、それはきっと口実だ。
(雛人形……)
桃の節句に生まれたこともあってか、末妹は雛人形が大好きだった。
その末妹と姉妹のために、実家に居た頃は己が雛人形を出していた。その兄が今年はいないから、だから電話を掛けてきた。
「……」
末妹の名を口の中に呟いた途端、胸の内に痛みにも似た塊が生じた。
彼女の好きなものは、幼少より兄と雛人形だけ。
平素、実家から届く手紙に記されている差出人の名は全て彼女ばかりで、殊に最近は兄の帰郷する日の近しいことが嬉しいと、待ち遠しいと、そればかりをずっと書いていた。
電話口に聞いた末妹の声が蘇る。
(僕は)
兄として妹を守らなくてはならない。
今まで幾度となく自身に言い聞かせてきた言葉を胸に繰り返した途端、胸のわだかまりが重い溜息になって零れ落ちた。
(逃げてきた、僕にとっては)
彼女は、否応なく迫る『猶予期限』の象徴でもある。
零れた溜息に気づいて、蜜色の瞳を伏せる。頬に触れる黒髪を耳に掛けて視線をもたげれば、一階に続く階段に活けた桃の花の香が僅かに感じられた。
春の匂いを胸に満たす。固定電話の脇に置いた長封筒に指を触れさせる。丸めて折り、テープで留めていても、中に収めた一つの鍵と小さな紙の確かな存在が指先へ伝わって来る。
「……椿が落ちる頃もとうに過ぎたな」
小さく、呟いてみる。
(何だかんだでこんな所まで)
でも、と封筒を手に取る。
(もうやらなくちゃ)
春は、決断と別れの季節だ。
今年の己にとっては、特に。
(これから僕がどうするにせよ、これは返さないといけない)
俯いてしまいそうな視線を上げる。もうほとんど私物のない星ヶ丘寮の二階部分を見回す。四月以降の入寮希望者用に公開している一階部分を彩っているのも、二階への進入をやんわり断るために置いた桃の花の花瓶だけだ。
退去日の迫る星ヶ丘寮を出る。寮のあちらこちらのエントランスに飾られた雪洞と桃の花を愛でられぬまま、春陽の眩しさを感じられぬまま、幾度となく辿った道を辿る。
道々に、花のように着飾った少女たちとすれ違う。誰も彼もが楽し気に微笑み合っている。軽やかな言葉を交わし合っている。
春を、幸せを言祝ぐ彼女たちとすれ違うごと、うなだれそうになる頭をもたげた。背筋を凛と伸ばした。きつく引き結んでしまいそうになる唇を能う限りに綻ばせた。
ハレの日を楽しむ人々に、一抹なりとも影を落としたくない。矜持にも似たその思いだけを心の柱に据えて、春を行く。
自宅としていた星ヶ丘寮よりも見慣れたマンションが歩みの先に見え始める。確かめずとも、足が行き先を覚えている。そのことがとても愛おしくて、淋しかった。
来慣れたマンションの、801号室のドアの前に立つ。
(この時間なら)
留守気味の家主が万が一在宅していても、夢の中だ。
家には入らない。彼の顔を見てしまうわけにはいかない。
「……ずっと守ってくれてありがとう」
そっと呟いた途端、蒼い月のような彼のまなざしが脳裏を過った。
退屈を嫌う彼には、己の選択は期待外れかもしれない。
「優しく手を引いていてくれたからこそ、手を引こうって思ってた」
ドアの向こうに居るともしれない彼に向け、己自身に言い聞かせるが如く囁く。
震えそうな唇に浮かぶのは哀しい笑顔か、それともいっそ泣き顔か。
せめて声だけは淡々と、彼に告げる。今年の桜のことは約束しないけれど、
「仕方ないからずっと覚えてるよ、君の事」
長封筒を掴んだ指先が震えている。
それが春風の冷たさのせいなのかも分からぬまま、震える指先を反対の手で握り締める。
(僕が心から望んだことはきっと、君と優しい時間を共にすることだった)
けれどそれは、どうしても伝えられない。
(少なくとも今は、まだ)
だから、
「ごめんね」
封筒をポストに押し込む。
封筒の中に収めた、この家に入るための鍵が硬い音を立てて鳴った。
(僕は)
てのひらの中、銀色のキーチャームを握りこんで踵を返す。
それはあの緑の幻路で彼が選び取ったもの。あの日の己の望みだったもの。
(……僕の、最後の選択は……)
<< もどる
1
…
11
12
13
14
15
…
19
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
さくら、たちばな、ももの花。~ひなまつり in ねこじま~
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年10月22日
参加申し込みの期限
2020年10月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年10月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!