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2月、春に向けて
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さくら、たちばな、ももの花。~ひなまつり in ねこじま~
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硝子の天井の向こうに白く輝く月が見えた。
足元を照らし出すランプの光の環の中で、陶器製の小さな雛人形がおっとりと笑っている。
「可愛いね」
雛人形で飾られたカウンターや温室内に琥珀色の瞳を巡らせてほのぼのと笑う
結城 日和
の柔らかそうな亜麻色の髪にランプの光が跳ねている。
「……ああ」
色鮮やかな熱帯の植物よりも、優しい色合いのひな祭りの景色よりも、テーブルを挟んで向き合った少女の笑顔にまなざしを奪われてしまいそうになりながら、
神嶋 征一郎
は運ばれてきたハーブティーに口をつけた。
「誘ってくれてありがとう」
「……いや」
同じようにティーカップに唇をつけてから改めて微笑む日和に、征一郎は海色の瞳を僅かに伏せる。
(こうしてすぐに会えるのも、最後になるのか)
「もう少ししたら私も神嶋くんも卒業なんだね……」
思考を読んだかのような日和の言葉に、征一郎は伏せた瞳をもたげる。
「寝子島に来てからの三年間……ううん、一昨年のネコフェス以降は時間が過ぎるのがあっという間だったな」
日和はくすりと笑う。過ぎ去った日々を懐かしみ寂しがるわけではなく、
「音楽やそれを通して神嶋くんに出会えたこと。全部充実してて毎日がキラキラしてた」
過ぎた時間への後悔など微塵もなく、ただただ楽しかったと日和は笑みを深くする。そこには、積み重ねてきた日々に対する充実があった。思い出を糧に未来へ進んでゆこうとする強いまなざしがあった。
「自分も、寝子島で多くの出逢いがあった」
日和のまなざしに誘われ、征一郎も思い出す。
「此処へ来ていなければ……得られなかったものもある」
この島へ来たことは本意ではなかった。それでも、この島に来てから己のヴァイオリンの音は変化した。仲間、と呼べる絆を結ぶことも出来た。
「神魂の影響に巻き込まれる事も多々あったが……」
「色々あったよね」
くすくすと笑う日和に対し、征一郎は難しい表情をする。ろくでもない思いをすることもあったものの、
「……今思えば、」
(良い思い出なのかもしれねぇ)
言葉にすることはなんだか悔しい気もして、口元を手で隠す。知らず唇に浮かびそうになる感情が笑みなのか苦々しいものなのか、それはまだ己にも分からなかった。
小さく息を吐き、ハーブティを口に含む。
心に引っかかっていたことがある。
「結城の父との関係はあれからどうだ」
日和は、父親との音楽への価値観の違いに胸を痛めていた。それは今も変わっていないのか。もしもそうであるならば──
征一郎の心配げなまなざしに、日和は鮮やかに笑んで答える。
「私の話に少しだけ耳を傾けてくれるようになったし、」
父とのことはまだ解決したわけではないけれど、
「私は絶対諦める気なんてないから」
背筋を伸ばし真っすぐなまなざしを煌めかせる少女に、前向きであろうとする少女に、征一郎は僅かに目元を和らがせた。
「本当に変わったな」
「そうかな、だったら嬉しいな」
くすぐったげに笑う日和と、真っすぐに視線を合わせる。
「……少し散策してぇ。付き合え、結城」
立ち上がる征一郎の春コートの隙間、結んだ深海色のネクタイと留められた銀の魚のネクタイピンが見えた。
カフェと温室を繋ぐ黄色い煉瓦の路を並んで辿る。蓮池に架けられた石橋を渡り、ランプが示すままに熱帯の森へと向かう。
夜の温室を歩くのは征一郎と日和のふたりだけ。
足元のランプの光と硝子天井の向こうに輝く月の光に照らし出された花や樹を楽し気に眺める日和の横顔を見下ろし、征一郎は深く呼吸する。
胸を過るのは、今までふたりで重ねてきた記憶の色々。思い出すひとつひとつを噛み締めれば、最後に浮かんだのは白い満月。
空を見上げる。濃い緑の葉群の向こうに透けて、今日も月が見えた。
足を止める。
「……神嶋くん?」
「お前との約束を今、果たす」
月の光を浴びる日和と向かい合う。
「約束?」
己を仰いで微笑むその瞳を、月よりも太陽よりも美しいと思った。その美しいものに恥じぬよう、己の真心を残らず捧げねばならぬと信じた。
「自分……僕は、結城の事が好きだ」
このときのために、幾度となく言葉を組み立ててきた。練習してきた。想いを伝える言葉を磨いて磨いて、磨きぬいて現れたのは、素の自分だった。
「お前の存在に何度もすくわれた」
一度はその想いに応えられなかったのに傍にいてくれたのは、願いを叶えてくれたのは、紛れもなく彼女だった。
「……こんな感情は初めてだった」
何度も練習してきたはずなのに、呼気が乱れた。胸が詰まった。
心を差し出すのはこんなにも苦しい。けれどそれ以上に、彼女への愛しさがなにより勝った。
「僕には君が必要だ」
両手いっぱいに抱えた花束よりも欲しかったその言葉に、日和の瞳はいつかの満月の夜の夢のように潤みかけた。滲んだ涙を瞬きで弾き出し、日和は春陽よりも柔らかな笑みを返して見せる。
「……結城」
夢と同じに泣き出すかと思っていた日和の笑顔に征一郎は瞬くばかり。
「ふふ、『今度』はちゃんと笑顔で返さなきゃって」
「覚えて……!」
輝くような笑みで告げられた言葉に、きっとあの夢の中での告白は忘れているだろうと思っていた征一郎の耳がみるみる真っ赤に染まる。
立ち尽くす征一郎に、日和は一歩近寄る。捧げられた真心を真心で受け止め、
「ありがとう」
精一杯に微笑む。
「……私も神嶋くんが好き」
愛しています、と囁く端から頬に血が昇った。
顔を赤くして、それでも微笑み続ける日和に、征一郎は破顔一笑する。
「その顔の方がてめぇには似合ってるぜ」
笑顔を見合わせる。礼を言う、と呟き、そっと視線を逸らす。なによりも愛しいはずなのに、今はどうしても顔が見られなかった。
「神嶋くんはドイツに行っちゃうから遠距離恋愛かぁ……」
隣で日和が悪戯っぽく笑っている。
「そうなるな」
「でも、いっぱい電話するし」
弾むような軽い足取りで道の先に進んだかと思えば、くるりと踵を返してこちらを覗き込んでくる。
「余裕ができたら会いにも行く!」
「ああ、したければしろ」
「うん、する! あ、手を出して!」
「手?」
言われるままに差し出した手を、小さな両手が丁寧に包み込む。かと思えば、ふわり、柔らかな唇が手の甲に触れた。
「約束。」
小さく囁きかけられた言葉に、征一郎は目を瞠る。
(……仮面してたのに)
やはり、という思いは確かにあった。
(気付いてたのか)
驚く征一郎の手を離し、日和は弾む足取りで後退る。
「ふふ、今まで何度も緊張したんだからね! 仕返しだよ♪」
くるりと背中を向けた途端、
「なら自分も」
離したばかりの手を掴まれ引き寄せられた。
「……していいか」
「え? キス?」
頬に触れる指先の熱に一瞬惑う。手の甲へのそれではないと気付いて、けれど拒むはずもなかった。
返事より先、唇と唇が重ね合わされる。
「愛してる」
息の触れる間近で何より望んだ言葉を貰い、日和は微笑むしかできなくなる。力の抜けた両手で征一郎の胸にすがりつくしかできなくなる。
「遠く離れても、大事にしたいと思えたのは君だから」
耳元に聞こえる声が夢のようで、決して夢ではない。
「僕に教えてくれたのは、結城だよ」
「……やっぱり神嶋くんには勝てないなぁ」
胸の中から仰いだ彼は、どこまでも素直な笑顔をしていた。
手を繋ぐ。夜の温室をふたりで歩いてゆく。
「結城の卒業後は?」
「私はしばらくは日本の大学でお勉強」
繋いだ指先が温かくて、すぐ隣を歩く女の子の笑顔が眩しくて、だからか、空気がきらきらと虹色に煌めいて見えた。生まれつき備わる共感覚の不思議な視界の中、見える色とふわふわとする心に、初めてに近い感覚に戸惑うと同時、
「まだまだ私には日本で学ぶことはたくさんあるだろうから」
未来を見据えてキラキラと夢を語る彼女が誇らしかった。
「でも必要だなって思ったら世界にだって飛び出すつもり♪」
ふわりと揺れる亜麻色の髪の下、柔らかそうな耳に揺れるアネモネのイヤリングを目の端に捉え、征一郎は瞳を和ませる。
「少し早いが」
春コートのポケットから取り出すのは彼女の誕生日にと用意していたプレゼント。小箱から取り出した金糸鳥の翼にアクアマリンをあしらった華奢なネックレスを、その手で彼女の細い首に着ける。
「心は、傍に」
誰よりも愛しいひとに、誓う。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
寝子島でのひなまつりの一幕、お届けにあがりました。
イベントや行事をひとつひとつなぞって行けるのも、ひとつひとつをお祭りにしてめいっぱい楽しんで遊べるのも、寝子島のいいところですねえ。
みなさまの色んなひなまつり、とても楽しく書かせていただきました! 『楽しい』や『切ない』や、その他もたくさんの感情を書かせてくださいましてありがとうございました。
あなたをあなたらしく描けておりましたらいいのですが……。
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
お読みくださいまして、ご参加くださいまして、ありがとうございました。
またお会いできましたら嬉しいです。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
1000人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年10月22日
参加申し込みの期限
2020年10月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年10月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
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