決戦絶神！分かれ合わさる運命、絶望、未来｜リアクション

決戦絶神！分かれ合わさる運命、絶望、未来

●星幽塔、最上階で歌う

　鈴島上空に幻のように浮かぶ塔――星幽塔。
　その最上階は漆黒の宇宙空間にぽっかりと浮かぶ白亜の円形広場である。
　その広場の中心に、今、白銀の砲身と星の紋章を持つ巨大な大砲が完成していた。

「これが『祈りのカノン』――」
「歌や音楽にのせてろっこんや星の力を月に送れるんだね」
　ほしびとの猫獣人メイド服のままの「アイオ」（アイオ・キャンドライト）と、寝子島での人間姿で寝子高制服の「あいお」はそっと白銀の砲身に触れた。

　その周りを囲んでいるのはにくきゅう付きねこの手グローブを嵌めた穂現まうたちだ。
「まうと、まうまう……分離効果で分かれてる、ね」
「うん……まうまうも頑張る。まう３とまう４も、ね」
　元のまうが『まう』、分離した子が『まうまう』。『まう』と『まうまう』が＜まうまう只今増殖中＞で呼び出した自分たちが『まう３』と『まう４』。ややこしいが、とにかく四人のまうがいて、全員が気紛れマイペース猫気質。みんな仲良しでまうまう言っているので区別がつかないが、とにかく『まう達』と呼ぶことにしよう。

「私たちも一緒に協力しましょう？」
　声優アイドル雪寄愛唯も瓜二つの自分同士、視線を交わし合う。
「この世界を護るための戦い。きっとそうなんだと思う。よくわかんないけど」
「そうだね。だれかと力を合わせたら、もっと強い祈りになるかもしれない」
　それとも――と愛唯はぐるぐる考える。反発する力だったら、よわくなっちゃうだろうか？　でもでも、きっと力を合わせるのは大事だろうし……。
　けれど考えていても答えはでない。
　正解なんて、やってみないと誰にも分からないのだろう。
　だったら。
「今は自分のできるだけのことをしよう」
「一生懸命頑張るだけだねぇ」

　アイドルグループ「CitrusCat's」で末明せれねとしても活動している夢宮瑠奈は、自分の中にいつか出逢った自分そっくりな里見ゆいさんがいることに戸惑っていた。
「ゆいさん」
「え、と。せれねちゃん？」
「瑠奈でいいよ」
「瑠奈ちゃん……これは夢？」
　夢かもしれないね、と瑠奈は答えた。ゆいさんは島の外の普通の人だから、これは夢で、醒めたら心の奥底に隠されてしまってもいいと思った。
「あのね、夢かもしれないんだけど……ゆいさんにも力になってほしいだ。あたしたちいつもの日々を取り戻すために今戦わなきゃいけないの。それぞれが自分に出来ることで……あたしは、歌で」
　ゆいは同意した。そしてふたりは、ひとりの歌う少女――『ゆな』となる。

「アイオたちも歌いましょう」とアイオが言った。
　アイオは物心ついた時には、星幽塔第一階層にあるマルトンの店に住んでいて、父母の顔は知らなかった。両親の名残は、預けられた時に渡してくれたという星の力の宿ったペンダントだけ。それを強く握りしめる。
「それじゃあ、歌う準備はバッチリですの、あいお？」
「もちろんですわ、アイオ！　バッチコイですわ！」

　ステラ・ラ・トルレがふわり空中へ浮かび上がると、まるで指揮者のように両腕を持ち上げた。
「みんな、準備はいいのー！？　『祈りのカノン』起動するの！」
　ステラが腕を振るうと、低い駆動音がして台座が細かく揺れ、砲身の中に光が蓄えられはじめる。
「歌って！　祈りを込めて！」
　
　♪　にゃあにゃあにゃあ

　まう達が歌う。可愛らしい、猫を称える歌だ。
　四人でユニゾンしたりハモリも気ままに加えながらまう達は歌う。

「「「「♪がんばれにゃんこ、おおかみにまけるな、こえたからかににゃあにゃあにゃあ！」」」」

　アイオとあいおも謳う。
　力強く、出来るだけ長く、思いを込めて。
（アイオはまだ、星幽塔のどこかにいる両親に会っていないのですわ）
（あいおはネコジマ高校の正式な生徒となれるまで諦めませんわ）
（（アイオ／あいおは、歌の楽しさを広めて、誰からも愛される素敵な歌手になるつもりなのに……））

「「まだ夢を叶えていないのに絶神に滅ぼされて終わりなんて、そんなの絶対許しませんわーっ！！！」」

　アイオとあいおは強く祈る。
　
　――どうか月で戦っているみなさんへ、届いて！　お願いします！