ホラーハウスに行こうよ！｜リアクション

ホラーハウスに行こうよ！

　【まだまだ続くよどこまでも】

　遠くから、またもやホラーハウスらしい悲鳴が聞こえる。
　先程の場所から逃げてきた深民実々と樋野秀吉は、その遠く行く手に遮られているものを見た。
　床には這い蹲るように腰を抜かした、男女の姿。

　曲がり角の向こう側から声が聞こえる……

　「悪い子はぁ、いないかぁ……？」　
　「ひぃっ！」
　思わず二人から声が上がる。
　曲がり角から、首と胴体が分離され血糊でぐっしょりと濡れた、一見人間と見間違うほどのリアルな人形が投げ捨てられるように転がった。

　ぺたり……ぺたり……

　と、角の向こうから何かに濡れ塗れたような足音が聞こえる。モニターと思わしき人物の何人かは、それだけで腰を抜かしてしまっているようだ。
　如何せんリアルすぎる。これは救助班が必要になるかもしれない。心の中でそう思いながらも、二人は勇気を出して曲がり角を折れてその光景を目の当たりにした。

　そこにいたのは、僅かについた血糊が余計に恐怖心を煽る白い着物に、般若のお面。そして、その手には滴り落ちんばかりにべっとりと血糊のついた斧が……
　「悪い子はぁ……食べちゃうぞぉぉぉぉぉぉ！！」
　「…うわ…っ！……うわ！！」
　「うひゃあーーーっ！！」
　後半の台詞は、まるで地獄の底から響くようなおどろおどろしさに満ちており。
　久しく絶叫などしていない秀吉は、叫び方を必死に思い出そうとし、みみはもう遠慮無く全力で叫んだ。

　「うふふ、いい声ねぇ♪」
　うっとりと陶酔した様子で呟く般若の面の女性、常闇虚はその悲鳴に己のろっこんが発動するのをひしひしと感じて、喜びを露にした。
　
　虚のろっこん発動！
　【発動条件】恐怖や嫉妬等のマイナス感情を向けられる
　【能力】自分の運気を格段に上昇させる。マイナス感情が強いほど強化度合いが増す

　既に叫ぶことしか出来ないでいる、秀吉とみみに虚が近づいてくる。
　すると、同時にヒビ一つ入っていなかったはずの窓が豪快に割れたり、何とか体勢を立て直し逃げようとしていたモニターの中年男性が二人にダイブするように飛び込んできて、更にもつれ合いになったりと。
　逃亡したい二人にとっては声も出ない程の、アンラッキー。
　しかし、逃がしたくない相手にとってはこの上なく良い演出かつラッキーな出来事だ。

　「それじゃ、次の人にも脅かして行こうかしらねぇ～♪」

　ひとしきり悲鳴を聞いて満足したのか、般若の虚はその場を軽やかに後にした。
　沢山の人形や小道具を小脇に抱えて……

　「斧が……、斧が…あれ、小道具じゃなくて本物だったような気が……！」
　「気付いたら負けだよ！　あれはおもちゃだよっ。そうに決まってる！！」

　二人で励ましあうように、虚のいない中を立ち上がり、再度の曲がり角を曲がる事数歩。
　正面に見えたカフェへ開かれた扉の光に、二人は手に手を取り合って喜び感動を称えあった。もちろん、その後恥ずかしくなって慌てて手を離したのは秘密である。
　長い道のりだった。外への光はまるで自分たちを温かく迎え入れてくれているかのようで。
　気がついたらよろよろの足取りで、光の方へ一歩踏み出したその時。

　『ギャーーーーッ！！』

　背後の同色に塗られたドアから出てくる、大量のゾンビの群れ！　群れ！　群れ！
　秀吉とみみの二人は、完全に半べそをかきながら、ゴールへの扉をくぐったのであった。

　【　深民　実々・樋野　秀吉　ホラーハウスから脱出成功！！　】

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