思い出の一枚｜リアクション

思い出の一枚

☆寝子高龍に子猫珠

　恵御納夏朝の中には、もう一人の人格が眠っている。
「やぁ……『夏夜』だよ」
　ぱっと目には違いがわからないけれど、クールで気紛れで現実主義な夏夜。
　夏朝の転寝中に、夏夜が表に出てしまった。
「掃除の途中だったみたいだね。仕上げは僕がやろうか」
　ここは桜花寮の自室。
　ハンディモップが側にあり、本棚から少し本が出されていた。
　本を引っ張り出し埃を払う。
「ん、これは……」
　アルバムと、束になった写真を多数発見した。
「写真……か」
　今まで、アルバムや写真を見ているときに夏夜が外に出てこれたことはなかった気がする。
　なんとなく気になって、写真を眺めた。
　それは、不思議な写真だった。

「……懐かしいな、寝子高龍に子猫珠達か」
　寝子高龍は、寝子高の大地に古くから住まうという、大きくてふわふわで可愛い猫みたいな龍だ。
　子猫みたいな『子猫珠（こにゃんこボール）』を８つ位集めると現れて願いを叶えてくれる。
　子猫珠達を集めたことで願いを叶えて貰え、夏夜は夏朝と一緒に遊ぶことができたのだ。
「それにしても……この写真、誰が撮ったのかな」
　これも神魂の影響、か？　と独り言ちる。
「夏朝と一緒に遊んでる時の写真は……ないね。撮っておけばよかった」
　一つの体に宿る別人格・夏夜と夏朝が一時的にでも分離・具現化して一緒に遊ぶこと、それが二人の願いだった。

「……分離・共存、か」
（『夏朝と僕（夏夜）が心身共に分離して並んで普通の日々を過ごす』夏朝と僕、心からの願い……）
　今は相手が起きているときは眠ってしまうため、相手の行動は記憶にない。
「交換日記経由で僕から夏朝に願いを叶える期限を出した事がある。
高校卒業……期限までに叶えられるかは……いや、絶対に叶えてみせる」
（神魂絡みは数枚あるけど、それでも……夏朝と僕が一緒に映る『普通の光景の写真』はまだないんだから）
　どうすればいいのかは、まだわからないけれど。

「それに……あの時出したもう１つの課題。将来の進路……」
　夏朝も何か掴んでるかもしれない、と夏夜は思った。
（交換日記経由で聞こう）
　手元の写真だけでなく、夏夜はノートパソコンやデジカメの中にある色々な写真を見る。
「そして、僕自身も……」
　デジカメを眺めながら、夏夜は呟いた。
「……『写真』、か」

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