思い出の一枚｜リアクション

思い出の一枚

☆夏のプールサイド

　期末試験が終わり、終業式目前のある日、水上桜は水泳部部室の大掃除をしていた。
　最近生徒会の役員になり忙しくて部活に出られない日も多いのだが、だからこそ大掃除くらいはしっかりやらなくてはと思う。
「ふう、綺麗になったね」
　掃除も終わったころ、顧問の相原まゆ先生が封筒を手にやってきた。
「おつかれさまー。写真持ってきたわよ」
　封筒の中はデジカメからプリントされた、部活動の様子を写した写真が出てきた。
「わあ！」
「見せて見せて！」
　みんなが集まってきた。
　集合写真や、ツーショットや数人で写ったものやら、あるいは一人で写ったものまでいろいろある。
　桜も自分が写ったものを探す。
　何枚かあって、先生と一緒に写ったものとか、他の女子とふざけ合った時に写ったものとかある。
「懐かしいねー、この時は色白だったなー」
　その時の思い出話などに花を咲かせていると、自分が写った一枚の写真があるのに気付いた。
　それは自分一人で写ったもの──プールから上がって、帽子やゴーグルを外し、髪をかき上げている様子を写したもので、どこか一息ついているような自然な表情になっている。
　
　

　屋外プールであることや、日差しの当たり具合から多分今年の夏休み後半の時の練習の時に写されたものだろう。
　夏休み前半は、４月から転勤でニューヨークにいる家族に会いに行っていたのだ。
　この次行くときはお土産買ってこなきゃかな、などと思っていると。
「ねえ、この写真」
　同じ学年の子が手に取って言った。
「桜の表情と言い、髪をかき上げる仕草と言いエロい！」
　とか言ってはやし立てる。
「えっ？　全然エロくない！」
　と桜は否定するが。まゆ先生も。
「桜ちゃん、エロかわいくて素敵よ」
　などと言い出して、恥ずかしくなった。
「先生まで！」
　なんとか話題を変えよう。桜は反撃とばかりにその子が一人で写っている似たような写真を見つけた。
「こっちの方が目が半分閉じてるから私のよりエロいよ！」
　とか突っ込み返す。
「えー、目は関係ないでしょ？　桜のほうがエローい！」
「まあまあ、それなら両方エロいってことで」
「エロいっていう人がエロなんです！」
「最初に言ったのあんたでしょ？！」
「……あー、エロかわいいっていうのはエロいとはちょっと違うからね？」
　おかげで部室はかなり姦しい状態になったのだった。
「なになに、誰がエロいって？」
　騒ぎを聞きつけた男子部員までやってきた。
「なんでもない！」
「男子エロい！」
　そこだけは意見が合って、桜たちは仲直りした。

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