思い出の一枚｜リアクション

思い出の一枚

☆ゆるキャラと水族館で

　エリオット・Ｅ・シートンは、寝子島マリンスタジアムに勤務している。
　童顔だが３３歳、アシカとトドのトレーナー兼飼育係をしている中堅の職員だ。
　動物好きで、動物にも好かれやすい彼にとってこの仕事は天職と言えた。
　シーサイドタウンの自室で、エリオットはアルバムの写真を眺めていた。
　動物好きの彼のアルバムは、動物園や水族館の動物たちで溢れている。
　その中の変わり種の一枚が、トドの北斗と共にゆるキャラと一緒に写った写真だ。
　ちなみに公式にライブ配信もされたらしい。

「この前のクリスマスのときのですね。サンマさんを始めとしたゆるキャラを集めたイベントでしたね。水族館に勤めるぼくが言うのも何ですけど、この寝子島って、海産物が好きなんでしょうかね？？」
　観光大使がサンマにマンボウというのは、ちょっと変わっているかもしれない。
（まぁ、水族館だからこそ、海産物系でちょうどよかったんですけど）
　本物とつい比較してしまうエリオットとしては、サンマやマンボウとはかけ離れている造形に突っ込みたくなってしまったりする。

　エリオットがクリスマスの夜間営業のために企画した、サンマさんとマンボウくんを始めとした魚系ゆるキャラたちが集合したショー。
　突発イベントということで、色々とぶっつけ本番になってしまったが。
「色々とハプニング起きていたし、マンボウくんはよく気絶するしで、あたふたしていましたね」
　だが失敗もアドリブで笑いに変えてくれるサンマさんやマンボウくんはさすがだった。
　生き物のショーは練習しても失敗はままあるし、そこがまた可愛いと、お客さんも笑って許してくれるからこそ安心してできたぶっつけ本番ではある。
「お客さんたちが喜んでくれて良かったです」
　水族館は遊園地と違ってどんどん新しいアトラクションができたりはしないし、新種の生き物もそうそう入ってはこない。
　だからこそ飽きられないよう工夫が必要になる、とも言えるが、水族館に来てくれるお客さんたちが求めるのは必ずしも目新しいものではないのではと思う。
　のんびりと水中の生き物を眺めるのが癒しになるのは、何も動物好きの自分に限ったことではないはずだ。

「まぁ、何もかも、過ぎたことですよね。次の企画を考えないと」
　写真の整理を終えて、エリオットはアルバムを閉じた。
　新しい年を迎え、今年はどんな出会いがあるのだろうか。
　思い出を懐かしむにはまだ早いエリオットだった。

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