【終業式】サンタは通知表泥棒？｜リアクション

【終業式】サンタは通知表泥棒？

　そのころ電気が消えた職員室内では、熊先生が慌てていました。
「な、なんだ？　誰だ？　電気をつけろ！」
　通知表を守ろうと、思わず保管場所へ向かった熊先生は。
　ガタガタン！
　何かにつまずいて転んでしまいました。
　そこへ走ってきた瑠奈も止まれずに衝突！
「あ痛っ！」
　よろよろと立ち上がった瑠奈は、見たのです。
　帽子とマスクで顔を隠したサンタ服の人物。
　その人が、ロッカーから通知表らしき束を取り出すのを。
（そんな……さっきまでいなかったはずなのに、どこから？）
　戦う力は持たないけれど、瑠奈はけなげに叫びました。
「かえして……フツウの終業式を迎えるために！」
（そうだ、窓）
　窓のロック錠をガムテープで止めようと、急ぎます。

　すかさず職員室に入り電気のスイッチを入れた夏夜は、通知表を手に窓へ向かう帽子とマスクの人物を発見しました。
（ののこちゃんがいないなら大丈夫）
　夏夜は、ねこシールを取り出し全力で犯人に射出！　ろっこん『重く軽く』を発動させました。
「終業式も阻害するフツウの敵、逃がすものか……！」
「ぐっ！」
　体が目いっぱい重くなった犯人は、それでも通知表を放さずよろよろと窓へ向かい。
「逃がすか！」
　夏夜は思い切り頭を狙って攻撃しました。　
（今学期、夏朝は頑張ったんだ。恐らくほぼ全科目が４以上のはず）
　盗人殲滅したいのを抑え、通知表奪還に全力を尽くします。　
　Ｍｒ．サンタは、窓の鍵を開けようとしましたが瑠奈によって鍵にガムテープが貼られています。
　両手を使うためしかたなく手放した通知表を、瑠奈が奪い取ろうとして。
「あっ！」
　つかみそこなって通知表はばらまかれてしまいました。
「待て！」
　夏夜が通知表に気を取られた隙にＭｒ．サンタは鍵に貼られたガムテープを剥がし。
　迫る熊先生と夏夜の追撃を紙一重でかわして、窓の外へと消えました。
　
　窓の下では、、ねこったーで萌々子の書き込みを見た海が待ち受けていました。
「うわあっ！」
（やった！）　
　海がろっこん『アクセラレイトライン』で打ち出したボーラが、見事Ｍｒ．サンタの足に巻き付き、サンタはそのまま転びました。
　立ち上がろうとするＭｒ．サンタの足のロープを、海は引っ張って足止めしました。
「そこまでだ！」
　熊吉先生が駆け付け、これでもうＭｒ．サンタも年貢の納め時、と思われましたが。
「何っ？　何処へ行った？」
　さっきまでいたはずのＭｒ．サンタは、突然消えてしまいました。
　みんながきょろきょろする中、海だけがボーラに手ごたえを感じていましたが。
（ほどかれた？）
　すぐに手ごたえが消え、ボーラは地面に落ちました。
（……もしかして消えるろっこん？）
　海は周囲を見回しましたが地面は乾いていて足跡も残らず。
　Ｍｒ．サンタの姿は、どこにも見当たりませんでした。

　そのどさくさに、信彦は職員室に入り込んで床に落ちた通知表の束を手にしました。
「どれどれ……あれ？」
「……八十八旗くん、まさか通知表を？」
　犯人を追いかけようとした夏夜が、気づいて戻ってきましたが。
「いや、盗み見する気なんてないよ？　それより、これ！」
　通知表には名前が書かれていませんでした。
　不思議に思いながら開いてみると、中も空白の欄ばかりで何の数字も書かれていません。
　その下にあったのは、通知表ですらないただの白紙でした。
「な。なんだいこれは……？」
「もしかして、ダミー、ってこと？」　

　
　一方萌々子たちに追われた樹が角を曲がった時。
「何の騒ぎだ？」
　前方に桐島先生が現れ、気づいた萌々子が叫びました。
「師よ、腹黒き盗人を捕え給え！」
　樹のろっこんの厨二パワーはまだ残っていたのでした。
「な、何？」
　一瞬戸惑った先生の隙をつき、樹は教室に走りこみました。
　そのまま窓を開けて外に飛び出し、すんでのところで校舎から逃げ出すことができたのでした。
「ククク……さすが寝子高の守護者たちは手ごわいな。だがいずれ再度の戦いに挑むとしよう」
　樹は今だ怪盗エアー冷めやらぬ頭で、楽しそうに笑いながら走るのでした。
　
　
　