【終業式】サンタは通知表泥棒？｜リアクション

【終業式】サンタは通知表泥棒？

　その時職員室から桐島義弘先生が出てきました。
「向こうの教室に明かりがついてるので、見てきます」
「一人で大丈夫ですか？」
「ええ、吉田先生は職員室をお願いします」
　その様子を見て夏夜は提案しました。
「あの、それなら、入り口は僕が代理で見張り代わります」
「そうか、それならわしは職員室にいるから何かあったら呼ぶんだぞ」
「はい」
　入口に立ち、職員室内への警戒も怠らない夏夜です。

　桐島先生が去って間もなく、瑠奈が急いで戻ってきました。
　夏夜が入り口に立っているのを見て、反対側からこっそり近づいて侵入しようとします。
（見つかっちゃうかな。どうしよう、事情を話してみようかな？）
　瑠奈が迷ったとき、性懲りもなく信彦が夏夜に声をかけました。
「夏朝ちゃん、やっぱり通知表を確認したほうがいいよ。怪盗ならいつの間にか潜入してるかもしれないし」
「……盗難紛失絶対阻止だ！　先生以外は職員室に入れられない」　
　夏夜が信彦に向き直り言い放った隙に、瑠奈は反対側の職員室の扉をそっと開けて、するりと中へ……
　……その時、後ろの角からサンタ服を着た人物がそっと顔を出したのでした。
　パチン！
　サンタ服の人物が指を鳴らしたのに、誰も気づきませんでした。

　職員室に入って戸を閉めようとした瑠奈は、誰かがすぐ隣にいる気配を感じました。
（えっ？）
　次の瞬間、職員室の電気が消えて。
　ガタガタン！
「あいたっ！」

（はっ！　職員室から物音が！）
　萌々子は段ボールを放り出して、職員室のほうを見ました。
　さらにすばやくねこったーに文字を打ち込みます。
『来ました　#怪盗捕獲班』　
　これ以降はスマホを使う暇もなさそう、とスマホをしまって、職員室に向かおうとすると。

　一方、英二とののこは怪しい人物に気づいていました。
「英二くん、あの人……」
「うん、慎重に様子を窺って職員室に侵入しそうなら声をあげよう」
　それは私服姿で開いていた昇降口から侵入した樹でした。
　入り口で校内見取り図をチェックし、職員室へ向かった時、物音と段ボールから飛び出したただならぬ様子の萌々子に遭遇したのです。
（怪盗サンタか？　今だ！）
　樹が名乗りを上げました。
「我は『幻惑の堕天使』！　MRサンタへ宣戦布告する者なり！」
「ええっ？」
　思いがけない伏兵に戸惑う萌々子。
「サンタじゃないの？」
　ののこも目を丸くしました。
（くくく……これほどの大場面での名乗り、我が邪気眼がうずいてしかたないな！　クハハハハ！）
　次の瞬間、樹は左目を押さえて、沈まれ、と囁いて。
　そして一目散に逃げ出しました。
（一時撤退をして、あらためて潜入にあたるとしよう！）
（え……今なんて名乗ったんだろ？　ゲンワク？　堕天使？）
　よくわからなかった英二は、とりあえず捕まえてもらえそうな名前を叫ぶことにしました。
「Ｍｒ．サンタだ！」
　萌々子は、人影を走って追いかけます。
　その後にののこが続きました。
「あっ、野々さん、気を付けて」
　英二も慌てて追いかけます。

「まてーっ！　待ちなさい！」
　叫びながら萌々子は、心の奥から、不思議な感動とわくわくが溢れてくるのを感じていました。
（待てと言われて止まることも無いとは思いますが。あぁ……これがよくアニメやマンガで見る怪盗との追いかけっこ……！）
「……正義の鉄槌から逃げられると思うのか？愚か者め！」
　そして、樹のろっこん『邪気眼の共鳴』の発動の影響で謎の厨二な台詞を発してしまうのでした。

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