【球技大会】クラス対抗、冬の陣！｜リアクション

【球技大会】クラス対抗、冬の陣！

◆勝負よ！

　練習は、校内でだけ行われるわけではない。
　寝子島旧市街で代々剣道道場を営む伊藤家の庭では、ツインテールで八重歯の少女が素振りをしている。
　もちろん剣道の素振りではなく、ソフトボールの素振りだ。
　彼女はこの家の居候で伊豆大島の本家の娘、伊藤美緒。寝子高１年生である。
　一心にバットを振っていると、縁側の方から声がかかった。

「美緒ちゃんもソフトボールに出場するの？」

　ひとつ年上の穏やかそうな顔をした少女は、この家の一人娘で親戚の伊藤佳奈である。

「そうよ。て、も、って事は佳那もソフトボール？」
「そうだよ」

　それを聞いた途端、美緒の胸にめらめらと対抗心の炎が燃え上がった。
　佳奈に対しては常に対抗心が燃え上がりやすいのだが、勝負事とあっては猶更だ。

「なら美緒と勝負よ！　どっちが打率と打点を稼げるか！」

　ふんす！
　鼻息荒く、縁側に立つ佳奈へ向けてビシリと人差し指を突き付ける。

（決まった……！）

　宣戦布告した自分に酔いしれる美緒。しかし佳奈はのらりくらりと、

「え～、面倒だなぁ。楽しくやればいいと思うけど」

　などと言って断ってくる。

「情けないわ！　伊東一刀斎の流れを汲む剣士として、挑まれた勝負は受けなさいよ！」

　美緒は語気強く食い下がる。
　というのも、伊豆大島では敵無しの腕前だった自分が、未だ勝てないのがこの佳奈なのだ。

「仕方ないなぁ」

　結局佳奈が折れた。わりとこのパターンである。美緒は満足そうに鼻を鳴らす。

「これでますます気合いが入ってきたわね！」
「そう、かなあ？　まあ、クラスのために頑張るよ～」