【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜｜リアクション

【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜

　今日の売り上げを見て岡野丸美は目尻を下げる。
「何を食べようかなぁ」
　うきうきした様子で露店を離れた。歩きながら方々に顔を向ける。
「リンゴ飴もいいよね～」
　場所を記憶するように見詰めてから別の露店に目をやる。どんぐり飴や綿飴に笑みを浮かべ、鯛焼きと鈴カステラには生唾を呑んだ。
　それらの露店をグルグルと回る。
「全部は多すぎるし、迷っちゃうなぁ」
　そこにゼロが現れた。ふらりと露店に寄って鯛焼きを注文した。
「ゼロちゃんも来てたんだね」
「露店で荒稼ぎをしていたのですー」
　振り向いたゼロは乏しい表情のまま、人差し指と親指で輪を作った。
「私もさっきまで露店をやっていたんだよ」
「そうなのです？　ゼロは鯛焼きを買ったので、丸美さんもどうぞなのですー」
「あのね。他にも食べたい物があって、決められないんだよねぇ」
　丸美は欲しいものを次々と口にした。それを聞いてゼロは大きく頷いた。
「二人で別の物を買って分ければ全て食べられるのですー」
「それ、いいね！　うん、そうしよう！」
「食べ物を買ったあとは二人で猫さんの宴会に参加するのですー」
「でも、私が行ってもいいのかな」
　丸美は頭に取り付けた丸い耳を気にした。
「どちらも猫さんなので大丈夫なのです」
「ネズミさんなんだけど。ほら、髭もあるよね？」
「猫さんにも髭はあるのですー」
「そう、だねぇ」
　丸美はぎこちない笑みを返した。
　二人は顔見知りもあってすぐに打ち解けた。食料と飲み物を買い込み、いそいそと耳福池へと向かうのだった。