【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜｜リアクション

【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜

【Ａ】寝子島神社（表）
　空が赤く燃える頃、寝子島神社には多くの露店が立ち並ぶ。はためく幟には『お三夜まつり』と書かれていた。
「ガスボンベを持ってきてくれ」
「わかりました」
　中年男性の指示で青年がきびきびと動く。取り付けた猫の尻尾は陽気に弾んだ。
　斜向かいの露店では若い女性が大型コンロを持ち込み、設置した台に載せた。被っていた帽子には丸い耳が付いている。
「忙しいでちゅー」
　首に掛けたタオルで顔を拭う。各々が猫や鼠の仮装をしていた。
　奥まったところの露店では猫が開店準備に追われていた。
　その中にゼロ・シーアールシーの姿があった。ウェーブした銀色の髪を割って猫耳が生えていた。ふわふわした白いドレスのスカートの中から尻尾を垂らし、生きているかのように揺らす。
「にゃあ、なのですー」
　感情に乏しい声で台の上に丸くて小さい紙の皿を並べていく。一皿に一個、カラフルな団子を置いた。自発的に震える物まで含まれていた。
「いい感じなのですー」
　無表情で猫耳を動かす。尻尾は大きく左右に揺れる。団子と同様に謎の原理が働いていた。

このページにイラストを設定する