【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜｜リアクション

【お三夜】猫と鼠と人と悪魔、四つの世界が交わる夜

寝子島神社（表）
　境内の賑わいに陰りが見え始める。多くの人々が満足げな顔で石段を下りていく。
　社の前には切り分けられた世界で奮闘した者達が集まっていた。熱い目を注ぐ先にお三夜さま、黒猫がいた。左右には忠実な狛猫が白猫の姿で控えている。
「今回も本当に助けられたにゃ。皆の働きに感謝するにゃ」
「お三夜さまが無事で本当に何よりでした」

　シオ・レイゼルオークは涙ぐみながら見詰めている。寄り添っていたハルキ・イエハナが静かに肩を抱いた。
　目を伏せていた恵御納夏朝が顔を上げた。
「僕は別人格の夏夜なんだけど、今回の襲撃の理由を聞いてもいいかな。たぶん、皆も知りたいと思っているので」
「俺も今後の為に知っておきたい。悪魔を捕まえて尋問する暇がなかったからね」
　八神修は自身の肩を揉み解しながら言った。
　黒猫は社に入る前に振り返った。
「私は名ばかりの神ではないにゃ。悪魔の力を抑える役目を果たしているにゃ。気付いた者もいるみたいにゃ。そう、絶神の封印が不安定なせいで悪魔の力が強まっているにゃ」
「その状態で……不謹慎なのですが、お三夜さまが討たれると、寝子島で悪魔が今以上の力を持つようになると」
　修は言葉を選びながら返す。
「その通りにゃ。これからも悪魔達は攻勢を強めると思うにゃ。こちらとしても負ける訳にはいかないにゃ。皆もゆっくりと身体を休めて欲しいにゃ」
　黒猫は社の中に入っていく。開かれた扉は再び固く閉じられた。
　夜空に大輪の花が咲く。
　響タルトは笑顔で言った。
「たまや～にゃん♪」
「今回は本当に疲れたねぇ」
　獣人化が解けた万条幸次は大の字に寝転がって打ちあがる花火を眺めた。
　ゴロゴロと荷車を引くような音が近づいてくる。深縹露草が屋台を引っ張ってきた。
「皆さんはあれだけの戦いをしてきたのです。お腹も減ったでしょう。私の屋台で良かったら食べていってください」
　白い割烹着姿となった露草は熱した鉄板で魚介類を炒め始めた。野菜と麺を加え、混ぜ合わせたところに特製のソースをふんだんに掛ける。立ち上る煙に白真白が引き寄せられた。
「空腹の時にこの匂いは反則よね」
「僕も貰おうかな」
　サキリ・デイジーカッターは穏やかな顔で言った。
「オレもお腹がぺこぺこだよぉ」
　曖浜瑠樹は曖浜鴻の手を引っ張って屋台に詰め寄る。
　ミーツェ・Ｍ・フェリスは軽く手を挙げた。
「猫舌なのでぬるい感じでお願いするのなー」
「難しい注文ですね」
　露草は笑いながら調理を続けた。

　世界は守られた。
　その平和はいつまで続くのか。
　運命の歯車は今も密やかに回り続けている。

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あとがき

担当マスター：黒羽カラス
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人と猫、新たに鼠も加わって賑やかに。一方では知力と武力で奮闘して、一夜を駆け抜けたお三夜祭りでした。
お祭りの最後を告げる打ち上げ花火。皆さんはどのような心境で迎えたのでしょうか。

今回はお祭りを表と裏に分割して、それぞれの特徴を活かした内容で描写しました。
表は裏の事情など全く知らず、純粋にお祭りを楽しんでいただきました。
変わり種の露店の数々に面食らい、時に珍味に舌鼓を打つ。個人の露店にも驚くようなものがあって、
立ち寄った人々に様々な感情を促します。その度合いが強くて絶叫する場面もありましたが（滝汗）。

表と対照的な裏は不穏な世界です。悪魔鼠が黒猫のお三夜さまを執拗に追い掛けます。
加勢する人々にとっても脅威で、負けられない戦いを強いられました。もれいびは強力なろっこんを駆使して、
力の限りに戦います。人やほしびと達は世界の急変に戸惑い、手探りの状態で状況を理解しました。
ですが、悪魔鼠との戦力差は歴然としています。埋める為に知力を振り絞りました。仕掛けられた罠は秀逸で、
味方を大いに助ける結果となりました。最後は総力戦。持てる力の全てを敵に叩き付けることに。

やがて表と裏は一つとなり、最後に残された謎がお三夜さまの口から明かされます。
真の脅威は悪魔鼠ではなくて……本編のリアクションでお楽しみください。

以下は余談となりますが、リアクションを書いていて迷う要素がありました。
アクションに書かれていないアドリブ、ではなくて悪魔鼠の一匹が私にとっても悪魔でした！

マスターガイドに書いた巨大ねずみってどれくらいの大きさなのかな。

そう、問題となったのは大きさでした。踏まれるだけで絶命の危険性を匂わせています。
ヒグマくらいはある？　もう少し大きくてホッキョクグマ？　インパクトに欠けると思い、
小さな山くらいになりました！　私の想像力で、すくすくと育ちました。
執筆しながら、大きすぎだろ、と自分にツッコミを入れるほどに……。

という勝手な悲喜こもごもを経てリアクションが完成しました。
私情がたっぷりのあとがきにここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
皆さんのアクション、とても素敵でした。一致団結して事に当たる素晴らしさを堪能しました。

また、次のシナリオで会えることを切に願って――。

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