燃えるような黄昏時はしっとりとした夜に取り込まれてゆく。
旧市街にある参道商店街は昼間以上の賑わいを見せていた。人々は情緒ある風情を楽しみ、懐かしい味に舌鼓を打った。
寄り道は程々にして先を急ぐ者も多い。大きな流れの先には寝子島神社が厳かに佇む。周辺では猫や鼠の仮装をした人々が多く見られた。
「お祭りなのだ! このビッグイベントは見逃せないのだ!」
左手の道から走りこんできたのは
後木 真央であった。三毛猫の仮装は他者を圧倒する熱の入れようで全身に及ぶ。胸に取り付けた大きな鈴をチリンと鳴らして立ち止まる。
「真央ちゃん、お三夜祭りに堂々の登場なのだ!」
見た目の愛らしさと迫力に惹かれた人々が次々に拍手を送る。真央は頬を緩めて、どうもなのだ♪ と声を掛けて回った。
その間にも人々は祭りの中心地を目指す。参道の両脇にある石灯篭には明かりが灯され、幽玄な世界を醸し出していた。対比するかのように多くの露店が立ち並び、威勢の良い声が飛び交う。
「今日はお祭りの日なのですにゃ」
ミーツェ・M・フェリスは金色の瞳をキョロキョロさせる。露店から漂う香ばしい匂いに小さな鼻をひくひくさせた。
「良い匂いですにゃー。堪らないのですにゃー」
「猫の真似かな。似合ってるよ」
女の子と手を繋いだ男性がミーツェに微笑んだ。
「こ、これは真似とかではなくて、その、素に近いですにゃ、ですな」
「パパ、あれ買って!」
女の子に引っ張られ、男性は軽い会釈で人波に呑まれていった。
「……気にしなくてもいいみたいですにゃー」
猫の仮装がちらほらと目に留まる。ミーツェは明るい表情で雑踏に突っ込んでいった。
参道から少し外れたところでは
黒兎 都が単独で歩いていた。黒いパーカーのフードには三角の突起があり、黒猫を想像させる。
「やはり、お三夜祭りはぬこ祭りだの」
境内には多くの猫達が集まっている。警戒心に乏しく、石畳の上を思い思いの格好で寝転がっていた。
「……チャンスだの」
季節を物ともせず、都はパーカーを一気に脱いだ。
「にゃーん」
全身で黒猫を表現した。顔を洗う真似をして猫に逃げられないように近づく。猫に嫌われる体質を痛感しているせいなのか。赤い目は潤み、懇願するような状態となった。
奥まった社に人気はなかった。喧騒はどこか遠く、霊気にも似た雰囲気に包まれている。
軋むような音がやけに大きく聞こえる。社の扉が開き、
お三夜 大明神と付き従う者達が姿を現した。
その瞬間を待ち侘びていたかのように獰猛な鼠達が殺到した。物陰に潜んでいた
テオが間に割って入る。
――懲りない悪魔達だぜ。
半ば呆れたような顔で前脚を振った。『かみさまクリエイション』のろっこんが発動して世界は切り分けられた。新たな寝子島にかなりの者が巻き込まれ、創造した本人は元の世界に取り残されてしまった。
――あとは頼んだぜ。
真新しい世界に取り込まれた者達に全てを託し、テオは大きな欠伸をしてその場で丸くなった。
「……やるしかないか」
託された者達は表情を引き締めて行動を開始した。
去年はカラスに追い回された。今回は鼠と化して一斉に襲い掛かる。悪魔は人間に脇目も振らず、お三夜さまを執拗に付け狙う。
その真の意味とは。祭りと共に
運命の歯車は回り始める。
ガイドに登場していただいた「後木真央さん、ミーツェ・M・フェリスさん、黒兎都さん」、
ありがとうございました。本シナリオにご参加していただけるのであれば、
ガイドの内容に縛られず、自由にアクションを綴ってください。
お三夜まつりの夜は「猫の世界」と「人の世界」が交わりあうという噂をご存知ですか。
今回はさらに「鼠の世界」も交わっているようで、仲良くケンカしながらお祭りを楽しみましょう。
しかし、その鼠の中にはどうやら「悪魔」も潜んでいるようで困ったものです。
再び消えた『お三夜さま』は、はたしてどこへ? そして、悪魔は何故お三夜さまを狙うのか!
猫と鼠、人と悪魔。寝子島の光と闇、お祭りとバトル。大切な一夜を迎えます。
アクションでできること
以下のABのどちらかひとつを選んで、「キャラクターの行動」欄の冒頭に【A】【B】と記入してください。
【A】寝子島神社で、不思議な縁日を楽しむ
【B】祭りのウラで、フツウを守る
【A】寝子島神社で、不思議な縁日を楽しむ
神社の参道は人間の露店と猫の露店、ねずみの露天が混じり合ってます。
耳福池周辺では猫の宴会、神社の裏山ではねずみの宴会も開かれているようです。
Aコースの方は、お三夜さまのことは知らないものとして、心配せずにお祭りをお楽しみください。
(あえて知ってることにしてもいいですが、行動はAの範囲でお願いします)
【A-1】人間として普通の露店を出す
リンゴ飴、わたあめ、焼きそばなど、普通のお祭りで出ていそうな露店。
猫やねずみのお客さんが来ることもあります。
【A-2】猫やねずみとして不思議な露店を出す
猫やねずみに仮装して、本物の猫やねずみと一緒に楽しむことができます。
仮装の程度はご自由に。猫耳だけでも、ねずみの鼻をつけるだけでも、仲間になれますよ。
一夜明けるとガラクタになってしまうような、一風変わった品物が並びます。
お好きな品物を考えてお店に並べてみましょう。
<例>
・水風船の形をした色とりどりの提灯「風船提灯」
・一瞬だけ運命が見えるという触れ込みの「運命万華鏡」
・水の中で遊べる「水中花火」
・素早く走るネズミが的の「ネズミ射的」
・猫の置物に首輪がつくと成功の「ねこ首輪投げ」
・高速で回転する皿からチーズを釣る「高速チーズ釣り」など
【A-3】人間の客としてお祭りを楽しむ
不思議な猫やねずみの品物を買ったり、それぞれのお店に入り浸って手伝ったり、
人間や猫、ねずみのお友だちと楽しんだり。
【A-4】猫やねずみの客としてお祭りを楽しむ
人間の品物を買ったり、人間や猫、ねずみのお友だちと楽しんだり。
【A-5】猫の宴会、ねずみの宴会に混ざる
猫たちが耳福池のほとりで、ねずみが神社の裏山で宴会を楽しんでいます。
そのほか耳福池に小舟を浮かべてデートしたり、裏山の木に登って月見をしたり。
縁日で買った食べ物や玩具で楽しんだり、みんな思い思いに楽しんでいます。
そのほか、思いついたことがありましたらご自由にどうぞ。
お店を出される方は、コメントページをご活用いただくと、みんなで楽しみやすいです。
【B】祭りのウラで、フツウを守る
ねずみの姿をした悪魔に追いかけられて、お三夜さまは猫の姿のままで逃げ回っているようです。
悪魔を倒して、お三夜さまが帰ってこられるようにしましょう。
狛猫たちによると、
「お祭りの終わりを告げる花火が上がるまでにお三夜さまがお社に戻らなければ
猫とねずみと人間の世界の融合が解けずに、世界がおかしくなってしまう」そうです。
Bコースの方は、この情報を狛猫たちや友人から聞いたりして知っています。
(知らないけれど巻き込まれて~という流れもアリです。その場合はアクションに明記を)
ねずみは噛む力が凄まじいので、お三夜さまが捕まるとかなりのダメージを負うでしょう。
もちろん彼らを邪魔することになるPCさんたちも攻撃対象となってしまいます。お覚悟を。
以下の悪魔ねずみ5匹がお三夜さまを狙っています。
透明ねずみ
透明で見えませんが、歩けば足音がしますし、触ることもできます。
また、鏡などには姿がはっきりと写ります。
いつの間にか背後に迫っているかもしれません……。
巨大ねずみ
人間より大きく、力が強い。踏まれたら猫も人もオシマイ。
ただ、動きが鈍く、頭も鈍い。
仲間の悪魔が指示を出してくれないと、無意味な行動をしていることも。
俊足ねずみ
超スピードで駆け回る。どんな猫やねずみよりも速い。
既にお三夜さまのお尻をガブッとして怪我を負わせている(猫パンチではじかれたが)。
他のねずみと比べて噛みつきの威力に劣るが体は小さく、捕まえるのは困難。
飛翔ねずみ
ねずみの姿だが悪魔としての翼も残している為、自由に飛ぶことができる。
木の上から、建物の天井から、空から、縦横無尽にお三夜さまの背後を狙っていく。
上から何かを落としたり、いろいろな攻撃をしてきそうです。
幻覚ねずみ
尻尾が悪魔のまま矢印になっていて、刺してきます。
刺されると幻覚を見せられてしまいます。
猛ダッシュで壁に激突したり、高いところから落ちたり、大変危険です。
登場NPC
お三夜さま・・・・寝子島神社のご祭神。黒くて赤い目をした猫。神様なので普通の猫よりは強い……はず。
狛猫たち・・・・・寝子島神社を守護する猫。心配性の「一之助」と、しっかり者の「二右衛門」。
下記NPCもお祭りを楽しんでいます。
テオ・・・・・・・世界を切り分けたが、うっかり基本世界【A】に留まる。みんなの活躍を信じて待ってます。
ののこ・・・・・・猫のコスプレでお祭りを楽しんでます。【A】
○○○・・・・・・不自然にならない程度で、ご自由にどうぞ。
縁日を見て回ったり、宴会を楽しんだり、フツウを守ったり、
猫とねずみ、人間と悪魔の世界が交わった不思議な夜をお楽しみください。