【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！｜リアクション

【生徒会選挙】歴代生徒会長からの挑戦状～リゾルブ・ワールド！

●寝子島地球探検ツアー・その１

　様子を見に来た五郎八は、木陰で見つからないように立ち止まった。
　講堂から小中学生が群れをなして出てくるのを、従弟の如月庚が立ち止まって見ていた。
　彼が立ち止まっていたのは、子どもたちの中に、バスガイドよろしく旗を振る三つ編みの少女の姿を見つけたからだ。
「……屋敷野？」
　相棒と言ってもいい屋敷野梢は振り返って子どもたちに話しかけており、どこか先生じみた雰囲気だ。
　庚が白と黒を基調としたスカジャンの背を丸め怪訝な顔をしていると、最後に講堂から出てきたサキリ・デイジーカッターに声をかけられた。
「やあ如月。どうしたの？」
「いや、……何やってんだ、と思ってな」
「これだよ」
　サキリはスマートフォンに、あるサイトを開いて見せた。
「……『寝子島地球探検ツアー』？」
「自然や環境関係で働いてる方によるお話と、寝子島の自然視察ツアーなんだ」
「んで、そのガキ共は？」
「参加者だよもちろん」
「……あー、リゾルブなんたらとかいう……ねこったーで見たな。……そういや屋敷野のやつ、生徒会長に立候補してんだっけか……」
　サキリは、にこ、と頷いてみせる。
「チラシ、見てみる？」
　海と稲穂と蝶の写真を大きく扱ったチラシはサキリが作ったもの。小中学校に配布し、掲示板に貼ったり島外も含めて駅などに置かせてもらったりと告知にも力をいれた。同内容のサイトも作って手軽に申し込めるようにしたり、ねこったーでも企画を伝えて広めたりしていたので、庚の目にも何気に入っていたのだ。
「午前中は講堂を借りて専門家による座学をしてもらったんだ」
　サキリの言葉を受けて庚はチラシを裏返す。そこには講師として、錚々たるメンバーの写真とプロフィールが載っていた。木天蓼大学の講師や動物園・水族館の職員、農家や漁師さんなど一次産業に携わっている方、最後にはリッカルド町長の写真もある。
「天気がいいから外でお昼ご飯を食べて、午後は島内を散策するんだよ」
「金掛かってそうだな……」
「助成金を取ったから大丈夫」
　サキリは得意げに片目を瞑る。初めからけっこうな資金が必要だと踏んでいたサキリは、事前にしっかり計画書を作って校長に提出して相談し、校長の認印も貰った上で、『学生主導による社会勉強の一環であり地域社会にも貢献できる企画』という内容で市に申請、助成金を受けられることになったのだ。
「ほぅ……抜かりねぇな」
「出来るだけツアーの参加費を安く抑えたいと思ってね」
　サキリの尽力のおかげで、今回のツアーの参加費は一人300円。兄弟がいてもお財布に優しい金額である。
「そんなわけで、僕はこのあとこの子たちを引率なんだけど……」
「……そうか、頑張れよ」
　じゃ、と片手を上げて立ち去ろうとする庚の首根っこを、ぐいと掴む手があった。
　振り返らなくても分かる。梢である。
「……どこに行くんです、如月君」
「あぁ？」
「もちろん、手伝ってくれますよね？」
　にこ。と梢。
　にこ。とサキリ。
　庚は観念して諸手を上げる。
「自然に関するあれこれってか……お前らしいわ。しょーがねぇ、付き合うぜ……で、どこに行くって？」