＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング｜リアクション

＜基本給＋歩合＞寝子島デジタルマッピング

夕・グルグル寝子島支部

「……んー？」
　見慣れた我が家の地下の画像を見ながら、真辺伸幸は首をひねった。
「どうした？」
　逆巻天野も画面を覗き込みながら尋ねる。
「こんなところに、ヒビなんてあったかなーって」
　地下帝国入ってすぐの壁にできた斜めに斬り込んだヒビを指した。
「どうだったかな」
　天野には、そんなことよりも、地下帝国が社員に目撃される前にデータを消去してしまおうと焦っていた。猫鳴館の寮生が掘り当てた名所を、グルグル社員に横取りされては堪ったものではない。
「九夜山の地下にこんなところがあるとは驚きですよ！　広い洞窟を登ってみるのも面白そうですよ！」
　事務室には仲間が増えていた。アウトレットで時計台に登って、謹慎を食らった北玄だ。

　そしてさらに、新しい仲間が入室してくる。
「おう」
　何でもない風を装って、桜井ラッセルは、空いているイスに腰を下ろす。
「さくくんドンマイー」
　事務室の３人は事情を知っていた。真っ逆さまに九夜山の崖を落ちていく画像は、しっかりPCの中に保管されている。カメラは回収不可能、成り行きを知った社員の顔が青くなったのも見届けていた。
「ま、気にせず作業作業」
　ラッセルはカメラ紛失によって歩合がチャラになってしまったが、事務作業で少しでも稼ぎを取り戻そうと気を取り直している。
　４人になったグルグル寝子島支部事務室。彼らの作業もいよいよ佳境へと入っていく。
「おっ。みんな色んな画像を撮影してんだなあ」
　ラッセルの目に飛び込んだ画像は、見晴らしのいい場所だった。