ロンリー＊ドーリー＊グローリー｜リアクション

ロンリー＊ドーリー＊グローリー

　梅雨だということを忘れてしまうほど、よく晴れた朝だった。
「おはよー！」
　桜庭円は飼い猫をギュッと抱きしめ、朝の挨拶を交わす。
　ひょんなことから飼い始めた子猫のにゃーくん。
　一人暮らしの桜庭を小さいながらも立派に支える家族である。
　一通りたわむれた後、桜庭は何気なくテレビの電源をつけた。
　チャンネルは前回つけた時のまま。
　そこではちょうど病院から少女が消えたというニュースが報じられていた。　

　猫鳴館にて、シグレ・ナイトウォーカー、後木真央も桜庭と同じニュースを見ていた。
　後木はいろんな人にニュースのことを聞いて回っている。
「どうして女の子がいなくなったのだ？　女の子は病気なのだ？」
　そんな後木をよそに、シグレは一人物思いにふける。
（病弱で、入退院を繰り返してて人一倍好奇心旺盛な奴だったな）
　英国に住む親友と、ニュースの少女を重ねるシグレ。
（子供の頃、大人に内緒で病院から連れ出して大目玉食らったことがあったな。あの頃は少しでもあいつの願いを叶えたかったんだよな……遠くに行っちまわないように）
　シグレは娯楽室に向かい、ボロボロのＰＣを立ち上げた。
　起動するまでの間は新聞に目を通す。
　少女について調べるために。

　桜花寮の食堂は朝食を食べている寝子高生で賑わっていた。
「なんか、女の子がいなくなったんだってね？」
「感染症とかだったらどうしよう！」
「なんか、誘拐らしいよ」
「えーじゃあ犯人がこの辺にいるわけ？」
　重病を患った一人の少女が、病院から消えたという事件。
　全員がというわけではないが、あちらこちらで声をひそめるようにしてその件について話していた。
　小山内海もそのニュースを見て、気にしている一人だった。
（また変な事件が起きてるなぁ。見かけたら連絡とかしないと）
　ご飯を口に運びながらぼんやりと少女について考える。無事であればいいな。
　桜花寮に住む桜井ラッセル、風雲児轟、霧谷朧も噂話に耳を傾けている。
（子どもがいなくなった、ね）
　その中でも霧谷は特に事件を気にかけていた。
（ちょっと、調べてみようかな）
　食事もそこそこに、一度自室に戻っていく。
　様々なニュース・新聞を見比べ、わかったことを書き出してみる。
　
・病名は伏せられていたが、少女は複数の合併症を患っている。
・激しく動かす、強いストレスにさらされると病状が悪化する可能性が高い。
・少女自身はさほど動けないはずなので第三者の関与がほのめかされている。
・感染症ではないという但し書き。
・いなくなった時間は午前五時。機械が抜かれた時間なので正確である。

　そこまで書いて、一度手を止めた。
（第三者の関与……）
　面倒事が苦手な霧谷だったが、この事件はなぜか放っておけないようだ。
　現在の時刻は午前八時半。
　始業まであと五分ということにも気がつかないほど、彼はこの事件に没頭していた。

　暗道忍はバイト先でそのニュースを目にし、御剣刀、篠崎響也、双葉仄も自室でニュースを見ていた。

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