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- 00月00日生 00歳
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シネマカフェ『クランク・イン』 第二幕
【リアリティヒーロー】
「ふふっ」
今年は三折部 朝衣にとって、幸せな夏となりました。
彼氏ができて、デートを重ねて。今夏の厳しい暑さもそのまま熱情と転じて朝衣を心地良く翻弄し、いまだ彼女は、その熱に浮かされたままなのです。
「この夏はいろいろあったわね。ね、遥人」
隣を歩む住沢 遥人もうなずきます。腕を組み寄り添い歩くふたりはもはや、長年のつれあいのようです。いささか物事に飽きやすい朝衣ですけれど、この恋が冷める気配はありません。
ただ、寝子ヶ浜ビーチスターズコンテストで大胆な水着姿を披露して後のひと月あまりは、ふたりともすれ違いの日々を過ごしてきました。互いに忙しい身で会うこともできず、せいぜいがＳＮＳでやりとりをするくらい。
だから今日のデートは、胸いっぱいです。足取りは弾むように軽く、朝衣は恋人の横顔を十代の少女めいて見つめました……といってもまあ、朝衣はまだ二十歳になったばかりですけれど。
「あら、こんなお店あったのね。シネマカフェだって」
たまたまに目に付いた看板。映画喫茶だなんて、気になる響き。ふたりのデートにはぴったりかもしれません。
朝衣は悪戯っぽく、茶目っけたっぷりに。
「入ってみる？」
これから上映される映画が『ゴーストクリーナーズ』の一作目だと店員さんに告げられた時、恋人の目が輝いたのを、朝衣は見逃しませんでした。
「好きなの？」
彼はシリーズのファンなのだそうです。近年公開されたリブート版もばっちり押さえているのだとか。
いっぽう朝衣はと言いますと、ゴーストクリーナーズを見たことはありません。というのも、あまりホラーが得意でない彼女は、この作品を純粋なホラー映画だと思っていたのです。
「あ、コメディなの？ それなら大丈夫そうね」
個室へ案内され、ゆったりソファに並んで腰かけます。注文したホットコーヒーとポップコーンが届いたら、さっそく上映開始です。
朝衣は彼の肩に頭を預け、甘い催促。彼は小さなキスをひとつ寄せてから、彼女の口へポップコーンを運んでくれました。
「あ。彼女がヒロイン？ 美人ね」
物語の普遍的テーマに則って、ゴーストクリーナーズにも男女の恋愛は描かれています。
主人公は鼻持ちならない男、ゴーストクリーナーズ社の設立者であるペーター・ハンツマン。ヒロインはそこへオカルトの悩みを持ち込む依頼者エレナ・フリットです。
「う～ん。ちょっとイヤなヤツよね、この主人公は」
エレナは、歪んだ研究者らしく歯に衣着せないペーターのセクハラまがいな言動に苛立ちを隠せません。けれど彼女のアパートにはポルターガイストが巻き起こり、日常生活もままならない有様。頼る者はペーターだけです。
「吊り橋効果ってやつ？」
遥人は笑います。
男女の機微とは不思議なもの。たとえイヤ～なヤツであっても、のっぴきならないピンチを救ってくれるタダひとりの男となれば、案外イイ感じに見えてくるモンなのです。
まー映画だから、といってしまえばそれまでですけれども。
ペーターが街中のゴーストを仲間たちとともに大掃除している間、エレナにはとんでもない事態が巻き起こります。
「わ……」
霊たちを従える冥界の神が彼女の身体を乗っ取り、地獄へ繋がる扉を開いてしまうのです。
咆哮する地獄の番犬のＣＧは、現代のそれと比べるといささかチープではありますけれど、朝衣は小さく声を上げて遥人へしがみつきます。
そして、クライマックス。
「あっ、これは見たことあるわ！」
街へ現れてビルを薙ぎ倒してゆく、巨大なマシュマロニャン！
けれどゴーストクリーナーたちは、押しも押されもせぬその道のプロ。最後は見事巨悪を退け、ペーターはエレナへ愛と勝利の口づけを寄せるのでした……。
朝衣はほうっ、と息を吐いて、遥人を見上げます。
「なるほどね。イヤなヤツでもこんなふうに颯爽と救い出されちゃったら、イチコロかもね」
画面の中の彼女と同様に、朝衣の細めた瞳にも、恋するオトメの揺れる輝きが宿っています。
キスをねだれば、すぐにも朝衣の唇はやわらかく塞がれました。
遥人はイヤなヤツでも、軽口を叩きながら街を救うヒーローでもないけれど。
「あたしには、あなたが一番……」
物語が大団円を迎え、エンドロールが軽やかに流れ始めても、ふたつの影は溶け合ったまま。
「ふふっ」
今年は三折部 朝衣にとって、幸せな夏となりました。
彼氏ができて、デートを重ねて。今夏の厳しい暑さもそのまま熱情と転じて朝衣を心地良く翻弄し、いまだ彼女は、その熱に浮かされたままなのです。
「この夏はいろいろあったわね。ね、遥人」
隣を歩む住沢 遥人もうなずきます。腕を組み寄り添い歩くふたりはもはや、長年のつれあいのようです。いささか物事に飽きやすい朝衣ですけれど、この恋が冷める気配はありません。
ただ、寝子ヶ浜ビーチスターズコンテストで大胆な水着姿を披露して後のひと月あまりは、ふたりともすれ違いの日々を過ごしてきました。互いに忙しい身で会うこともできず、せいぜいがＳＮＳでやりとりをするくらい。
だから今日のデートは、胸いっぱいです。足取りは弾むように軽く、朝衣は恋人の横顔を十代の少女めいて見つめました……といってもまあ、朝衣はまだ二十歳になったばかりですけれど。
「あら、こんなお店あったのね。シネマカフェだって」
たまたまに目に付いた看板。映画喫茶だなんて、気になる響き。ふたりのデートにはぴったりかもしれません。
朝衣は悪戯っぽく、茶目っけたっぷりに。
「入ってみる？」
これから上映される映画が『ゴーストクリーナーズ』の一作目だと店員さんに告げられた時、恋人の目が輝いたのを、朝衣は見逃しませんでした。
「好きなの？」
彼はシリーズのファンなのだそうです。近年公開されたリブート版もばっちり押さえているのだとか。
いっぽう朝衣はと言いますと、ゴーストクリーナーズを見たことはありません。というのも、あまりホラーが得意でない彼女は、この作品を純粋なホラー映画だと思っていたのです。
「あ、コメディなの？ それなら大丈夫そうね」
個室へ案内され、ゆったりソファに並んで腰かけます。注文したホットコーヒーとポップコーンが届いたら、さっそく上映開始です。
朝衣は彼の肩に頭を預け、甘い催促。彼は小さなキスをひとつ寄せてから、彼女の口へポップコーンを運んでくれました。
「あ。彼女がヒロイン？ 美人ね」
物語の普遍的テーマに則って、ゴーストクリーナーズにも男女の恋愛は描かれています。
主人公は鼻持ちならない男、ゴーストクリーナーズ社の設立者であるペーター・ハンツマン。ヒロインはそこへオカルトの悩みを持ち込む依頼者エレナ・フリットです。
「う～ん。ちょっとイヤなヤツよね、この主人公は」
エレナは、歪んだ研究者らしく歯に衣着せないペーターのセクハラまがいな言動に苛立ちを隠せません。けれど彼女のアパートにはポルターガイストが巻き起こり、日常生活もままならない有様。頼る者はペーターだけです。
「吊り橋効果ってやつ？」
遥人は笑います。
男女の機微とは不思議なもの。たとえイヤ～なヤツであっても、のっぴきならないピンチを救ってくれるタダひとりの男となれば、案外イイ感じに見えてくるモンなのです。
まー映画だから、といってしまえばそれまでですけれども。
ペーターが街中のゴーストを仲間たちとともに大掃除している間、エレナにはとんでもない事態が巻き起こります。
「わ……」
霊たちを従える冥界の神が彼女の身体を乗っ取り、地獄へ繋がる扉を開いてしまうのです。
咆哮する地獄の番犬のＣＧは、現代のそれと比べるといささかチープではありますけれど、朝衣は小さく声を上げて遥人へしがみつきます。
そして、クライマックス。
「あっ、これは見たことあるわ！」
街へ現れてビルを薙ぎ倒してゆく、巨大なマシュマロニャン！
けれどゴーストクリーナーたちは、押しも押されもせぬその道のプロ。最後は見事巨悪を退け、ペーターはエレナへ愛と勝利の口づけを寄せるのでした……。
朝衣はほうっ、と息を吐いて、遥人を見上げます。
「なるほどね。イヤなヤツでもこんなふうに颯爽と救い出されちゃったら、イチコロかもね」
画面の中の彼女と同様に、朝衣の細めた瞳にも、恋するオトメの揺れる輝きが宿っています。
キスをねだれば、すぐにも朝衣の唇はやわらかく塞がれました。
遥人はイヤなヤツでも、軽口を叩きながら街を救うヒーローでもないけれど。
「あたしには、あなたが一番……」
物語が大団円を迎え、エンドロールが軽やかに流れ始めても、ふたつの影は溶け合ったまま。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2019年08月28日
- 参加申し込みの期限
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- 2019年09月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2019年09月04日 11時00分
