ボイスコンテンツ搭載！　大きな声を出そう！｜リアクション

ボイスコンテンツ搭載！　大きな声を出そう！

8

　その様子を見て飛び出すのは、虚栄心。

　（何が起こっているのか、よくわからないけど･･････。
　チンピラが暴れているから、やっつけてやるわ）
　少女は笑う。
　なんと言っても、彼女の手にした力は絶対無敵。
　ろっこん「人間惨禍」。
　耳元で「お前はただの人間だ」とささやく事で、相手の筋力を奪う。
　人並み以上に肉体に恵まれ、脚光を浴びることを当然とし、力で弱者をねじ伏せてきた連中の、頼みの綱である力を奪う。
　相手の拠って立つ力というものがいかにはかなく、いかに本当は無力な、虫けらの存在であるかを、徹底して知らしめる。
　すばらしすぎる能力。
　すべての人間は、無力に嘆きつつ、心という姫君に額ずくほかはなくなるのだ。
　今回もその力を思う存分発揮する。
　だが･･････。
（あの、有戸とかいう、優男にしよう）
　ターゲットを密かに決める。
　彼をターゲットにした理由は一つ。
「飛び道具を持っていないから」
　どこまでも優位を保つため、計算を怠らない。
　小心で、狡猾。
　
　十分に距離をとって、有戸の背後に向けて絶叫。

「お前は、ただの、人間だーっ！」

「ああん？」

　いらだたしげに振り返る有戸。
　足下にバラバラと、紙きれのような言葉が舞い落ちる。
心はきょとんとする。

（って･･････文字が言葉になった？
　しかも人間惨禍が効いてないみたい･･････）

己の世界にとらわれがちな心。
今回も変事があたりに起こっていると感づいてはいたが、その原因や対策までは考えていなかった。
紙のような言葉を目にして、彼女自身の顔色も紙のように蒼白になる。

「なんだ、一体･･････」
　いらだたしげに頭をかく有戸。
　気を取り直した心、
「じゃあ近づいて小声で･･････」
　そろりそろりと背後に近寄る。
　一度は失敗したが、自分のろっこんにたいする信頼は絶大。
「お前はただの人げ･･････ぐふっ！」
　近づきすぎた。
　容赦ない有戸の拳をくらう。
「お、お前はただの人げ･･････がはぁ！」
　あふれてくる紙のような言葉に埋もれながら、ひたすら殴られる心。
「さっきから何だテメェは！　俺が普通のヤツかどうかなんて、おめえにわかるわけねえだろ！
　おれは、普通の人生なんてごめんだ！　今にビッグなことをやってやるんだよ！」
　有戸の逆鱗に触れてしまったらしい。
　容赦なく殴られながら、心は意識が虚空へと飛ぶのを感じた。