ボイスコンテンツ搭載！　大きな声を出そう！｜リアクション

ボイスコンテンツ搭載！　大きな声を出そう！

４

　旧市街は混乱のただ中にあった。
　声が凝固するという現象に見舞われた。
　さらにそれに乗じ、無法を働こうとする連中がいた。

　サンルーフを取り払った安手の外車に乗って、大声を張り上げる無法者4人。

　後部座席に立ち上がり、胴間声を張り上げる巨漢、場末。
　その傍らで何やらゲラゲラ笑いつつ、声のブロックを放りなげる優男、有戸。
　運転席でふてくされた顔をしているのは紅一点、手那。
　そして助手席でマイク片手に奇怪な歌を唸り上げるのは、大柄なミスターレディ、祖麩羅野。

　いずれも名高い四人衆、日頃の憂さ晴らしとばかり声のブロックで、あたりのものをぶち壊して遊んでいるのだった。
　コメディエアーの影響下で破壊された建物は、いずれ修復するとしても、町並みが片端から破壊され、近所が迷惑を被っている状況はいかんともしがたい。

「ったく、最近つまんないことばっかりなのよね･･････。少しばっかり、憂さ晴らしにつきあってもらいたいところよね･･････」

　筋肉質の肉体にド派手な化粧を施した祖麩羅野が、いらだたしげに舌打ちをする。
　そのブロックを放りなげようとすると。

「どーもいい年した人たちが、不毛な時間の使い方をしてるみたいだねぇ･･････」

　外車の前に立ち塞がる小柄な影が一つ。
　不敵に笑うその姿こそ、人呼んでデタラメガール、晴海飛鳥。
「何よ、アンタ」
　不審な目を向けるチンピラ4人組。
「実は一つ実験したいことがあるんだけど･･････」

　

「謎のオブジェクトが、町を徘徊？」
　奇怪な噂を耳にして、家を飛び出した飛鳥。
　オカルトや怪奇をこよなく愛し、なにやら変事があればすぐさま駆けつける。
　苦手なものは退屈、と豪語する、賑やかで強気な彼女。
　走る彼女の傍らを、なにかがひゅんとかすめて飛ぶ。
「うわっ！」
　慌てて躱した飛鳥が見たものは。
「･･････文字ブロック？」
　スカイフィッシュのような怪異を期待していた彼女は、ちょっと拍子抜ける。
　
　その文字ブロックは、彼女のなじみ深いものだ

　彼女のろっこん「ソリッドボイス」は、声をブロック状に固めることができる。
　ちょうど今回の寝子島を見舞った現象と酷似している。
「いやー焦った焦った！　っていうか、僕のろっこんが暴走したのかと思ったよ！」
　掲示板で詳しく状況を確認し、胸をなで下ろして照れ笑いをする飛鳥。

　寝子島で起こる奇妙な現象と、ろっこんがシンクロすることは、まれに起こる。
　いかなる理由でそれらが引き起こされるのは、未だに謎めいた部分は多い。
　だが、ろっこんがその能力者の性格や潜在能力を反映したものが多いということは、データはないものの、感覚的に言えるかもしれない。
　自分のろっこんが暴走してしまうと、なんだか後ろめたい気持ちがするのは、それだけ自分の力に誇りを抱いているということだ。
「･･････って思ったら、すでに騒がしいなあ･･････」
　旧市街において、なにか剣呑な事態が発生しているらしい。
　遠目にも、異変が伝わってくる。
　向かわない訳にはいかない。
　
「バカみたい」手那が笑う。「アンタ一人で、あたし達に立ち向かえるわけないでしょ？」

「一人じゃないんだな」
　そこに駆けつける、修。