【体育祭2nd】アニマル☆スター、熱く翔る！｜リアクション

【体育祭2nd】アニマル☆スター、熱く翔る！

　大量の菓子と弁当、それに飲み物を手にした三人が公園に到着した。
　すでに場所は確保されて紙の皿やコップが人数分、用意されていた。
　ユウは紙コップに飲み物を注いで回る。全員の手に渡ったところで乾杯の音頭を取った。
「今回の体育祭はみんなの協力もあって大成功な感じなんで、お疲れさまーって心から思ってカンパーイ！」
　全員が紙コップを掲げて乾杯を復唱した。
「俺のオゴリだ！　じゃんじゃん飲み食いしてくれよな！」
「私のお金だということを忘れないでね」
　琳子は光を失った眼でユウへと詰め寄る。仰け反るような姿で、もちろん、と強張った笑みで返した。
　佐藤英二は紙コップに注がれた烏龍茶を飲んだ。美味そうに喉を鳴らし、大きく息を吐いた。
「冷たさが身体に染み渡るよ。野々さん、今日はお疲れさま」
「英二くんもね。今日は楽しかったなぁ。あと、白猫組は負けちゃったね」
　野々ののこは紙コップのオレンジジュースを一気に飲み干した。目の前の飴を摘まんで口の中に放り込んだ。
「どちらの組も頑張ってヘトヘトになったけど、遣り遂げた感じで最後は皆が笑顔になれたよね」
「うん、本当に楽しかったからね。この打ち上げの雰囲気も、なんか好きかも」
「……うん。そうだね。僕も好きかな」
　英二は好きの言葉に少し力を込めた。ほんのりと色付く頬は夕陽によって隠された。
　弁当が次々と空になる。巫部紫苑はバニーガールの姿で黙々と食べ続けた。競っていた何人かは出っ張った腹を隠さず、仰向けに倒れていた。
「もう、無理……」
　八神修は目の端で見て微笑んだ。確保した弁当を紙皿に取り分けて周囲に配った。そのあと、自分の皿に手を付けた。とろみの付いた肉団子を味わい、冷たい緑茶を飲んだ。
　その隣で七夜あおいが幸せそうな顔で肉まんを頬張っていた。小動物のような愛らしさに修は釣られて目を細めた。
「全て終わったんだ。少し寂しい気分になるね」
「でも、楽しみが増えたよ」
　あおいは青く澄んだ目を修に向ける。
「どんなことが？」
「来年の体育祭は、もっと楽しくなるんじゃないかなーって」
「言われてみれば、そうかもね。来年はあおいと同じ組になれたら良いな」
「私が騎手で修君が騎馬になって一緒にグラウンドを駆け回りたいね」
　あおいはにっこりと笑う。修は笑みを返して、楽しそうだ、と茜色の空に向かって言った。
　少し離れたところに北里雅樹が座っていた。目の前にある唐揚げを次々に口へと運ぶ。艶やかな唇で紙コップに注いだジンジャーエールを飲んだ。
　一息つくと目があった。途端に食べる勢いが落ちた。
　正面に座っていた椎井莉鳥はサンドイッチを手にして齧る。無言で口を動かし、時に雅樹を睨むようにして見た。
「椎井、あの……」
　言葉が続かない。会話を拒絶するように莉鳥は真横を向いていた。怒ったような感じでサンドイッチを平らげる。
　雅樹は視線を下げて唐揚げを食べ続けた。
　瞬間、莉鳥の目が動く。雅樹の艶やかな唇を複雑な表情で見詰めた。
　――ナイトプールで、どうしてキスしたのだろう。
　互いにもう、終わったはずなのに……。
　莉鳥は手を伸ばす。摘まんだ唐揚げを口に押し込み、奥歯で噛み砕いた。
　何とはなしに夕焼け空に目を移す。空の端、突風で消えてしまいそうな月を見た。
　――あの時の満月とは違うのに、心がざわつく。
　少しの間、莉鳥は瞼を閉じた。

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