【体育祭2nd】アニマル☆スター、熱く翔る！｜リアクション

【体育祭2nd】アニマル☆スター、熱く翔る！

　寝子島高校の近くの公園にシートが広げられた。打ち上げの参加者は多い為、パッチワークのように繋げる。
　白虎のパーカーを着た嘉渡洲稀跡は友達に誘われて公園に訪れた。
「寝子島高校の体育祭……楽しかったわ」
「そのテンションで打ち上げっていいよね」
「打ち上げ？」
　稀跡は公園内に目を向ける。徐々に頭が傾いていく。
「……花火は、ないみたいね？」
「そっちの打ち上げじゃないよ」
　隣にいた友達は笑って肩を叩いてきた。ああ、と稀跡は納得の声を漏らす。
「花火ではなくて……宴会の意味の方なのね」
「そう、そう」
　笑顔で頷く友達に稀跡は微かな笑みを返した。
　その場を仕切っていた野菜原ユウは仁王立ちとなった。
「にししっ、いい感じじゃん。あとは打ち上げ用の買い物なんだが、きみ、一緒にどうよ？」
「私でよければ」
　いきなり話を振られた稀跡はぺこりと頭を下げる。隣にいた友達は、また、と言って別の作業に参加した。
「じゃあ、俺達が帰るまで、あとはよろしくってことで」
　ユウが先に歩き出す。稀跡は後ろから静かに付いていく。
　公園を出るとユウは口の端に笑みを浮かべた状態で指を折り始めた。
「まず、ジュースはいるよな。ポテチも欲しいし、ガムや飴があってもいいんじゃね？　運動のあとだからチョコレートはいるだろ。つーか、学校から貰った金で足りるのか？」
　ユウは歩きながら財布を取り出し、中を確認する。その間、全く前を見ていなかった。
「……余所見は危ないと思うよ」
　稀跡の声は聞こえていないのか。ユウは小銭を数えている。
　横道から森篠琳子が現れた。直進してくるユウに気付いて後ろに下がった。その動きに吸い寄せられるようにふらふらと近づき、ユウだけが派手に転んだ。
「あああ、マジかよー！　俺の金がああああっ！」
　小銭が路上に散らばる。運の悪いことに深い亀裂の中や格子状の溝蓋の中に吸い込まれてしまった。
「俺の五百円玉があああぁ～」
「……学校のお金よね」
　側にいた稀跡はぽつりと口にした。ユウは溝蓋を持ち上げようとしたが、びくともしない。四つん這いとなって項垂れた。
「私は避けようとしたよね？」
　酷く落ち込むユウを見て、琳子はやんわりと話し掛ける。
　稀跡はしっかりと頷いた。
「余所見していた野菜原さんが悪いわ」
「そんなぁ～。みんなの打ち上げのお金なんだから、連帯責任ってヤツじゃんかぁ～」
　ユウは涙声で稀跡に迫る。
「私も打ち上げを楽しみにしてたから……これをあげる」
「おお、四角いけど、これって金の塊じゃん！」
「愚者の黄金の呼び名がある黄鉄鉱よ」
　取り出した立方体を見せた状態で言った。
　ユウは不機嫌な顔付きで押し返す。
「金じゃないなら意味ないじゃん。できればお金を」
「ないわよ」
　言葉は素っ気ない。二人の視線は必然的に琳子へと向かう。
「え、私なの！？　少しはあるけど、どうしてよ」
「お願い、この通り！　あとで学校と掛け合って返すんで！」
　ユウは手を合わせた姿で頭を下げる。
「本当に返してよね」
　疑いの目でユウを見ながら買い物にも付き合うことになった。

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