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今宵の月も
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受験勉強の息抜き、というのが
北里 雅樹
のナイトプールを訪れた理由。
(A判定)
この前の模試の結果から導き出された古都に学舎を構える大学の合格判定を思い浮かべ、雅樹は元より柔和な黒い瞳を淡く細めた。夏は暑く冬は寒く、隣どころかその隣の部屋や廊下の物音も筒抜けな猫鳴館の勉強には不向きな劣悪な環境を思えば、
(かなりのものだ)
自画自賛しつつ、根を詰めるのは趣味ではない雅樹は己の水着姿を見下ろす。観葉植物に彩られた温室プールを見渡す。
(こまめに息抜きするのが俺の流儀)
なんて、とひとり小さく肩をすくめてみせる。
カップルだらけのプールサイドをのんびり歩く。向こうの屋台で何か買い求めようか。それともその辺りのビーチチェアに転がって水着で月見と洒落込もうか。
円型プールに白く浮かんで揺れる満月を何気なく眺めやって、雅樹は思わず足を止めた。
青い水に白銀の月が大きく揺らぐ。月の光を弾き、透明な雫を跳ね上げ、黒髪の少女の肢体が水を纏って水中から現れる。結んだ唇をどんな感情にも彩らせず、黒い睫毛を濡らす雫を細い掌に拭いながらプールサイドへと泳いでくる迷彩柄の水着に、スレンダーな肢体と白い頬に、雅樹はとっさに言葉を失う。
少女が──幼馴染で元彼女で腐れ縁な
椎井 莉鳥
が、プールサイドに手をついて上がってくる。
心はきっと、とうに離れ離れになっている。
来年進学のために寝子島を離れてしまえば、距離だって遠く離れる。そうなれば、こうして偶然に出くわす可能性もゼロとなる。完全な、完璧な別れが数か月後に待ち受けている。
「椎井」
来年には完全に別れる元彼女の名を、思わず口にしてしまった。
名を呼んでから悔いる。余計なことをしてしまったかもしれない。だってもし莉鳥がひとりで楽しみたかったのなら、
(俺は邪魔だ)
プールサイドに立った莉鳥が、水の滴る黒髪をかき上げながらこちらを見遣る。栗色の瞳を二度三度と瞬かせて後、
「なんなの?」
彼女から返ってきたのは、素っ気なくはあるが拒絶してはいない様子の言葉。その言葉に、雅樹は胸のどこかでホッとする。
「なんだろうな」
「……福引で招待券が当たったの」
近付いてくる雅樹から視線を逸らし、莉鳥は呟く。ちょうど暇だったから、と続けながら、どうしてこんなに言い訳じみているのだろうと思った。
プールサイドのデッキチェアに置いていたビニールバッグを見遣る。一しきり泳いだら冷えた身体を横たえて月を眺めながら音楽でも聴くつもりだったけれど、今はやめておこう。
とりとめもなく噛み合いもしない、いつもの如くな会話を交わしながら、莉鳥は水着の胸に触れる。
(なぜだろう)
隣に立つ雅樹を盗み見る。心のどこかが、何故だかひどく安堵している。
少し前のネコフェスの日、人込みに垣間見た雅樹の姿に、こちらを見たはずなのに声を掛けて来なかった彼の姿に覚えた、どう表現していいのかも分からなかった心の痛みは今は感じない。
雅樹と目があった。視線が絡むより先に顔を背ける。プールへ入り直そうと水に爪先をつけたとき、
「いかがですか」
にこやかなウェイターに二人用のフロートベッドを勧められた。
「ああ、いや、……」
見るからにカップル用のそれを雅樹が言葉を濁して断る間もなく、ウェイターは月の揺れる水面に浮かべる。さあどうぞどうぞと善意のサービスに押し切られ、雅樹と莉鳥は並んで温かい水に入った。しばらくフロートベッドの両端で水に浮かんで後、どちらからともなくベッドに並んで横たわる。
(なぜこんなところにいるんだろう)
すぐ隣、体温さえ感じられる距離に居る雅樹に、──幼馴染で元カレで、腐れ縁な男の人の存在に、莉鳥は途方に暮れた。
呆然とした心持ちで言葉も無く硝子越しの月を見る。ゆらゆらと水面に漂うフロートベッドから見る中秋の名月は、己の身と一緒にふわふわとゆらゆらと空に浮かんでたゆたっている。
心を白々と照らして晒してしまいそうな月の眩しさから視線を逸らす。ナイトプールの青い水面にもまた、空の月の片割れのような月明りが揺れていた。
どちらからともなく話しかけようとしては互いに黙り込む。見つからぬ言葉ばかりがぶつかっては砕け散る。夜を瞳に映し、莉鳥は薄い胸ばかりを上下させる。
隣に横たわる雅樹と話すべき言葉が見つけられない。それを確認するたび、月に叢雲が群がるが如く心のどこかが暗く沈んでゆく。
(……椎井)
ほんのすぐ近く、手を触れるか触れないかの距離に横たわる莉鳥に、雅樹は小さく息を吐いた。
隣に、月明りと微かなランプの光に照らし出され、しっとりと濡れた水着姿の彼女がいる。幼馴染で元カノで腐れ縁な、彼女。
妙な気分だった。
互いに話す言葉を見つけられぬまま、硝子越しの月を見つめる。
(こんなに綺麗な月の夜、なのに)
もう一度、胸から息を吐き出す。
あの夜も、──莉鳥が十六の誕生日を迎えたあの日の夜も、月が綺麗だった。
親がいないから、と迎え入れられた彼女の部屋で体を重ねた。二回めだった。
瞼をもたげたのは、月の光のせいではなかった。
傍らに聞こえていたはずの莉鳥の息遣いが遠くなっている。瞬きを繰り返しながら首を曲げると、ベッドの上に身を起こした彼女の姿があった。
窓に冬の月が見えていた。
冷たく冴えた月明りに彼女の裸身が照らし出されていた。
とても綺麗だと思った。
月光に縁取られた彼女に見惚れ、言葉を失っていると、月を見つめていた彼女が不意に顔を俯けた。月の光を宿した瞳が琥珀色に輝いて見えたのは、もしかすると彼女の眼に涙が満ちていたからなのかもしれない。
とっさに起き上がる。名を口にするよりも先、抱きつかれた。柔らかな胸のあまりの冷たさに、小さな獣のように震える細い体に、驚くよりも先に愛おしさを感じた。
だから何も問わず、乞われるままにキスをした。
一晩中、そっと抱きしめ続けた。
月の光に瞬く。
傍らの彼女を横目に見遣る。月明りに照らし出される彼女は相変わらずとても綺麗で、けれどあのときと違って、触れることは許されない。あの頃とは関係が違う。あの頃は彼氏彼女で、今は──たとえあの頃と同じように傍らに横たわっていたとしても今のふたりの関係は、『元カレ』と『元カノ』。
決して彼女には伸ばせぬ手を緩い拳にして揺れるベッドに起き上がったとき、莉鳥が両腕を伸ばしてきた。しがみついてくる彼女の瞳に涙が滲んでいるように見えたのは、月の光のまぼろしか。
あの冬の夜のように裸の胸に濡れて冷たい胸を押し付けられ、雅樹は言葉を失くす。
「雅樹」
抱きしめることすら出来ずに身を固める己の胸の中、莉鳥が震える。小さく囁きかけて来る。
「……キスしてもいい?」
「椎井……」
思っても居なかった『元カノ』からの願いに、彼女の名を呼ぶしかできなかった。
もしかしたら彼女もあの夜のことを思い出したのかな、と場違いなほどにのんびりと思う。
黙り込んでしまう雅樹の冷たい胸に、莉鳥は頬を押し付ける。キスが駄目なら、と雅樹の背に回す両手に力をこめる。
「……私を抱きしめて」
あの冬の夜のように雅樹に乞う。
雅樹の腕が動いた瞬間、ふたりの身体がぐらりと傾いだ。誰かの立てた波にフロートベッドが傾く。驚きの声を上げる間もなく、ふたりは水に落ちた。
あたたかな水に沈みながら、雅樹は莉鳥の華奢な身体を抱き寄せる。たくさんの銀の月じみた空気の珠を周囲に躍らせながら、莉鳥の息を繋ぐように唇を重ねる。ほんの僅かの間のキスの後、体が水面に浮かばぬ先に、莉鳥はもう一度、今度は雅樹の息を奪うようなキスをする。
水底に足がつく。水中でキスをしながら視線を交わし、ふたりは立ち上がる。抱き合う格好で水面から顔を出す。
「椎井……」
「ごめんなさい」
髪も頬も水の滴にまみれさせて呟く『元カレ』を見つめられずに、莉鳥は顔を伏せる。それでも、雅樹の背に回した両手はまだ離すことが出来なかった。
「……自分でもわからない」
キスの感触が残る唇で呟く。濡れた髪から雫を落として首を横に振れば、水面に揺れる白い月が見えた。
「……きっと、月のせいよね……」
何かに怯えるように息を吐く彼女を、雅樹はきつく抱きしめる。そうして再び、ふたりは水に沈んで行く──
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2019年07月13日
参加申し込みの期限
2019年07月20日 11時00分
アクション投稿の期限
2019年07月20日 11時00分
参加キャラクター一覧
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